「和食」が無形文化遺産に登録された理由(わけ)
月刊誌「図書」2015年1月号に「美味しいの、なんでやろ?」というタイトルで、日本料理の村田吉弘氏と地球科学の巽好幸氏の対談が載っている。この中で村田氏が「和食」をユネスコの無形文化遺産登録に尽力したとある。
私は日本料理が特に美味いから、世界的に流行ってるからという理由で文化遺産になったと思っていたが、村田氏によるとそれは全然違うのだそうだ。
我々は山紫水明に国に住んでいて北海度から沖縄まで飲めるような軟水が豊富にある。その水に浸かった稲が米になり、その米を水で炊いてご飯にする。米と水と大豆と、そこに昔からの発酵菌で醤油や味噌をつくる。四海流が流れていて世界一魚種が豊富な国で、魚獲って、野菜食べて、米食べて、それを発酵調味料で調理していたら、外国から買うもんなんかないと村田氏は主張する。うちらはうちらの国だけでやって行こうと思ったらちゃんとできるのだ。
処が米の消費量は落ちる一方、肉の消費量は20年間で5倍になった。食料自給率は39%まで落ちてしまった。
このままでは和食は滅んでしまう。そうした危機感から無形文化財に登録して保護せねばならない。これが登録した理由だと村田氏は語っている。
日本料理の特色は「旨み」が中心となっている。
この結果、懐石料理は65品目で1000キロカロリーしかない。フランス料理のフルコースでは23品目で2500キロカロリー、イタリア料理のフルコースでは19品目で2500キロカロリーだ。
旨みを中心に置くことにより、多品目の食材を使いながら低カロリーに抑えることができる。
和食の基本は「軟水」にあることを日本人は忘れている。硬水では旨みは出ない。だから海外での和食イベントでは必ずボルヴィックを使う。
ほうれん草を日本の水で湯がくとグリーンになるが、フランスの水ではグリーンにならない。
逆に日本でイタリア料理を作るときは、水に石灰を加えて硬水にしなくてはならない。
日本国内で関東と関西とでは水質が違う。関東の水で昆布の出汁(だし)を取ると昆布が膜をこしらえてしまい上手くいかない。そのため関東では出汁が鰹節中心になったという。
対談では日本料理の精神性にも触れている。
料理を食べる前に手を合わせるというのはどこの国でも一緒だが、例えばキリスト教徒の場合なら神に手を合わせる。しかし日本人は違う。我々は食べ物と食べられる物、料理を作った人に手を合わせる。このものの持っている命を自分の命として「頂きます」という。
食事の最後に「ご馳走さま」という民族も世界で日本人だけだと。
このままでは日本料理は絶滅危惧種になりかねない、という危機感は理解できた。
だからTPP交渉なんてトンデモナイのだ。
安倍さん、分かるかな?
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作り手、食材、味わいて、いずれも絶滅寸前ですね。
まがい物は残るのでしょうが。
投稿: 佐平次 | 2015/03/03 10:35
佐平次様
作り手、食材、味わい手の全てが失われつつあるというのは事実でしょう。和食をを伝えるためには先ず自然環境を守ることが最大の課題だと思います。
投稿: ほめ・く | 2015/03/03 15:36