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2015/05/02

鈴本演芸場5月上席夜の部初日(2015/5/1)

<  番組  >
柳家我太楼
林家正楽
(ここから途中入場)
桃月庵白酒『つる』
柳家さん喬『初天神』
ホンキートンク『漫才』
柳家燕弥『黄金の大黒』
柳亭市馬『かぼちゃ屋』
仲入り 
林家あずみ『三味線漫談』
蜃気楼龍玉『強情灸』
鏡味仙三郎社中『太神楽』
柳家権太楼『らくだ(通し)』

落語協会のHPは4月1日からリニューアルに入り、一部を除いて情報の大半がクローズされた状況が続いている。1ヶ月経った5月1日になってようやく次の告知が行われた。          
【新2015年05月01日【リニューアル状況】本日の寄席について
リニューアル作業中のため、一時的な形ではありますが「本日の寄席」を公開いたしました。】
つまり「本日の寄席」のみ再開したが、それも一時的なものだというのだから、呆れるしかない。
ここ数年HPを充実させてきた落語芸術協会とは対照的だ。
いま老舗といわれる「00落語会」「00名人会」の出演者の大半は落協所属で、芸協の人が出るとネタにされるほどだ。それだけ落協の人材が豊富である証左だろうが、その人気にアグラをかいているとしたらいずれしっぺ返しが来るだろう。

鈴本の5月上席夜の部は恒例の「権太楼十夜」でその初日に。開演30分過ぎて入場したのだが客席がガラガラだった。最終的にはそこそこ入ったがGW初日としては寂しい入りだ。昼夜を観た人が近くにいたが、昼の部の方が入りが良かったと言ってた。前売り状況を見ても2-6日の間でも結構売れ残っている。特別興行としては顔づけが今ひとつだったのが影響したのか。
気付いた事をいくつか。

白酒『つる』、今日の客席は前のめりだと言ってたが、前売りは前方から売れるので前方の席だけ満席になっている。白酒の十八番で、この噺でこれだけ受けるのは白酒しかおるまい。物知り顔の隠居の造形がいい。
燕弥『黄金の大黒』、真打に成り立てだが、若手らしく真っ直ぐな高座に好感が持てた。
市馬『かぼちゃ屋』、市馬を始めて観たのはもう20年ほど前になるか、当時はバリバリの若手だった。本格派で語りはしっかりしているし芸に品があって、期待できると思っていた。しかし、その期待は今は萎んでしまった。特に最近は生気に欠ける様に見える。私見だが、高座で歌謡曲を唄うようになってから進歩が止まってしまったように思える。未だ50代半ばなので、もう一度ギアを入れ直して欲しい。
あずみ『三味線漫談』、未だお嬢さん芸の域を出ていない。音曲の発声が出来てないので「唐傘の」なぞは無残なものだった。三味線漫談は後継者がいないので長い目で見てあげる必要はあるが。
龍玉『強情灸』、二人の江戸っ子の形が良い。

権太楼『らくだ』、これを聴きに今日足を運んだ。落語の登場人物というのは通常は士農工商の身分に属しているのだが、この噺に出て来る主要な人物はそれより下の最下層に属する人たちだ。最底辺に暮らす人々の辛さ悲しさと反面の優しさ、生きるエネルギーをどう活写するかがこのネタのキモである。
一文無しなのに弟分の弔いをあげようとするラクダの兄い、彼の脅しに屈して月番へは香典の、大家へは酒と煮物の催促に行かされ、断れれたらラクダを背負ってかんかんのうを唄わされる屑屋。因業大家の造形も良く出来ていた。
最初は嫌々ながらだったのが、次第に気分が乗ってくる。そうした屑屋の微妙な心理変化を権太楼は巧みに描いた。
特に山場の屑屋が吞むにつけ酔うにつけ段々とラクダに虐められた記憶が蘇り(ラクダだけではなく世間の蔑みに対する怒りも加わっていたのだろう)、怒りを爆発させる場面が良かった。ラクダと刺し違いしようとする所まで追い込まれ、母親や子ども顔が浮かび思い留まるしか無かったと悔し泣きする屑屋の姿は胸を打つ。心中を吐き出した屑屋はもう怖いもの無し、形勢逆転してラクダの兄いをこき使い出す。
後半の二人がラクダの遺骸を担いで焼き場に向かうが、途中で転んで遺骸を落としてしまう。引き返して遺骸を拾うが、間違えて願人坊主を押し込んでしまう。樽の中で坊主が何か言うのだが、屑屋はウルサイと頭を叩く。ここからサゲまではテンポ良く運び、予定時間通りに終了。
終演の際に権太楼は短くフーッと溜め息を吐いていた。それだけ熱演だったのだ。
権太楼の『らくだ』は正に期待通り、来た甲斐があったというもの。

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コメント

これは聴きたかった「らくだ」。
市馬にはできっこない「らくだ」。

佐平次様
ある意味、権太楼だったら『らくだ』はこう演じるだろうと推定した、その通りの『らくだ』になっていました。聴き応えありの1席でした。

燕弥は右太楼時代に「崇徳院」を聴きました。
風貌も口調もよくて体育会系の三三、みたいに感じました。

さて、権太楼の「らくだ」ですが、あの声と奔放な芸風に合っていると思います。
(尤も、さん喬によれば、権太楼の芸は緻密の極みだそうですが)

福様
権太楼は奔放どころか緻密に練り上げた演出だと思います。例えば屑屋とラクダの兄いの立場が逆転してしまう場面で、屑屋がラクダの虐めに堪えかねて刺し違いを覚悟したと語らせています。この話しを聞いて兄いはビビるんです。そこで立場が逆転する。極めて論理的なストーリーになっていました。

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