« メキシコの現状に見る「日本農業の未来」 | トップページ | チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(2015/5/28) »

2015/05/29

「ワンマン」と「バカヤロー解散」

いま「ワンマン」を辞書で引けばこうある。
ワンマン【one-man】
①〔日本語の独自用法で〕独断で組織などを動かす人。「 -首相」「 -社長」
②他の語の上に付いて,「ひとりの」の意を表す。
(大辞林 第三版の解説)
私が子どもの頃に「ワンマン」といえばイコール吉田茂元首相のことだった。内閣総理大臣として1946年5月22日〜1947年5月24日、および1948年10月15日〜1954年12月10日まで在任した。終戦後からサンフランシスコ講和条約と日米安保条約(旧安保)に至る時期に首相を務めたわけで、文字通り「戦後レジーム」を体現した人物といえる。その風貌と性格から「ワンマン」の綽名で呼ばれていた。
自邸が大磯にあって、そこから国会に通う際に開かずの踏切といわれる戸塚駅前の大踏切を通らねばならなかった。そこでこれを避けるバイパス道路を作らせたので、世間ではこれを「ワンマン道路」と呼んでいた。
「ワンマンバス」が運行し始めたころに、「吉田さんがバス会社を始めたのか?」と勘違いした人がいたといわれたくらい、当時は吉田「ワンマン」が人口に膾炙していたわけだ。

吉田茂といえばもう一つ忘れられないのが「バカヤロー解散」だ。
1953年2月28日の衆議院予算委員会で、吉田茂首相と社会党右派の西村栄一議員との質疑応答中、吉田が西村に対して「バカヤロー」と暴言を吐いたことがきっかけとなって衆議院が解散されたため、こう呼ばれる。
当時の議事録を見ると、別にバカヤローと怒鳴ったわけではない。西村がネチネチとした質問を繰り返したので苛立ち「バカヤロウ」と呟いたものらしい。
その時のヤリトリの一部だが、
吉田「ばかやろう……」(自席に戻る際ボソッと呟くように吐き捨てる)
西村「何がバカヤローだ! バカヤローとは何事だ!! これを取り消さない限りは、私はお聞きしない。(中略)取り消しなさい。私はきょうは静かに言説を聞いている。何を私の言うことに興奮する必要がある」
吉田「……私の言葉は不穏当でありましたから、はっきり取り消します」
西村「年七十過ぎて、一国の総理大臣たるものが取り消された上からは、私は追究しません。(以下略)」
と、ここでは謝罪を認め収まったかに見えた。
しかし後日これが蒸し返されて内閣不信任決議案が提出され、与党の一部から賛成者が出たため不信任案が可決。これを受けて吉田は衆議院を解散し、衆議院議員総選挙が行われることになった。
政治家は言葉で生きていく職業である。
不用意な一言もそれが首相が発したとなれば、宰相のクビが飛ぶこともあるのだ。

安倍晋三首相は5月28日、安全保障関連法案審議が行われている衆院平和安全法制特別委員会で、質問していた民主党の辻元清美議員に、自席から「早く質問しろよ」とヤジを飛ばした。審議は紛糾し、民主党が抗議したため、首相が陳謝した。前日には野党からのヤジをたしなめたというのにこのザマだ。
安倍晋三首相は23日の衆院予算委員会で、民主党議員に「日教組(日本教職員組合)は補助金をもらっている」とヤジを飛ばした「前科」がある。この時も「補助金(をもらっている)ということは私の誤解だった」と陳謝して収束させている。
民主党は二度にわたり舐められたのだから、もっと怒って不信任決議を出すような構えが要るのではないか。
「バカヤロー解散」の事を思い出して、そう感じた。

|

« メキシコの現状に見る「日本農業の未来」 | トップページ | チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(2015/5/28) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

国会の争点化しているのに、この発言を放映しない(衛星だけはやりましたが)NHKの姿勢にもあきれます。

投稿: 佐平次 | 2015/05/30 11:05

佐平次様
これだけ重要な法案審議なのに本会議は放映なし、特別委員会も放映したりしなかったりと、NHKは公共放送の使命を忘れています。
ボロが出るのであまり国民に詳しい事を知らせたくないという意図が働いているとしか思えません。

投稿: ほめ・く | 2015/05/30 11:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/61662326

この記事へのトラックバック一覧です: 「ワンマン」と「バカヤロー解散」:

« メキシコの現状に見る「日本農業の未来」 | トップページ | チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(2015/5/28) »