「健康食品」は健康に悪い
近ごろTVをつけると健康食品とサプリメントのCMだらけだ。もし人間が日常の食事だけで健康を保てないとすれば、人類はとっくに滅亡している。
いま70歳を超えるお年寄りは多いが、ほとんどの人は子ども時代を食うや食わずの生活を送っていた。都会の人は米も食えず、地方の人は米だけという暮しだった。それでも皆長生きしている。
私は健康食品やサプリメントといった類のものを使った事がない。
理由は簡単で、一つは人間に必要な栄養素は普段の食材に含まれているので、とくに外部から摂取する必要がないからだ。
もう一つは、どんな成分でも取り過ぎれば毒になるからだ。例えば人間が生きるためには必須の塩と水を考えてみよう。ある量を摂取すると人間が死に至るのを「致死量」と呼ぶが、塩の致死量は200g程度、水の場合は20-30リットル程度(いずれも資料によって数値は異なるが)とされ、個人の条件によってはこれより少ない量でも死亡することがある。
これはどの食品でも言えることで、身体に良いといっても特定の成分を取り過ぎるのは避けるべきなのだ。
今から20年以上前になるが、かつて現役時代に在籍していた会社が(よせばいいのに)一時期「健康食品」の開発を手掛けたことがあった。晴海にあった東京国際見本市会場での健康食品展に出品しPRしたこともある。
私も数か月、開発のお手伝いをしたのでこの業界を多少は垣間見ることができた。極論をいえば、半分は詐欺みたいなものだった。根拠のない効能をうたい、効果を誇大宣伝していたのだ。そうして安い商品をベラボウに高く売りつける。
しばらくして会社はこの開発から撤退したが、正解だったと思う
現在は事情が違っているかも知れないが、相変わらずCMでは「私がこれを飲んだら(食べたら)、こんな効果がありました」などという体験談が紹介されている。事実かも知れないが、それはあくまでその人一個人の体験に過ぎず、決して普遍的なものとはいえない。
以前にも書いたことだが、50年間苦しんできた慢性喘息が50歳の頃に突然治ってしまった。何もせずにだ。もしあの時に「00健康法」をしていたら、きっとその効果だと信じていたろう。何かの宗教を信仰していたら、そのご利益だと思っただろう。だから個人体験談などというのはアテにならないのだ。
それでも効果があると信じて飲んだり食べたりしている分には問題はないが、2013年に国民生活センターに寄せられた健康食品に関する苦情相談は約6万4千件にのぼっている。こうなると本人が良けりゃいいんじゃないのと看過できない。
安倍政権はサプリメントなど一般食品の「機能性表示」の解禁を決め、この制度は4月1日から実施されている。「機能性表示により国民に安心感を与えて、医療費が削減できる」などを謳い文句にしているようだが、健康被害などの負の側面が拡がることは全く考慮されていない。
どうやらサプリメント大国であるアメリカに配慮し、米国の「栄養補助食品健康教育法」を手本にして作った制度のようだ。今後、海外から多数のサプリメントが流入してくることが予想される。
こうした動きに騙されぬ賢い消費者になることが求められよう。
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