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2015/07/24

立川談春『もとのその一』(2015/7/23)

立川談春三十周年記念落語会『もとのその一』-THE FINAL-追加公演
日時:2015年7月23日(木)18時30分
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
<  番組  >
春風亭正太郎『権助魚』
立川談春『たがや』
立川談春『小猿七之助』
~仲入り~
立川談春『居残り佐平次』

久々の談春。いま東京の落語家で、常に1000人規模のホールを一人で満員にするという人は数えるほどだ。TVなどのメディアで名前が売れてるなら別だが、高座の魅力だけでこの域に達している人は更に少数だ。談春はその一人。「落語は談春」という熱烈な固定ファンをつかんでいるのが大きい。反面、いわゆる落語通の人たちからの評価はあまり高いとは言えない様に思う。
以前に読んだ記事によれば、談春は照明と音響の専門スタッフを抱えていて、彼らに会場の隅々までチェックさせているとあった。そういう工夫も大ホールでの公演を支えているんだろう。
師匠の談志が亡くなってから、談春はメディアに積極的に出るようにしているようだ。これからの落語界の一端を支えていこうと意志表示にも見える。
少し前までは最もチケットが取りづらい落語家などと評されていたが、最近はそうでもない。当日売りも出ているし、この日も2階席には空席があった。
”立川談春三十周年記念落語会『もとのその一』-THE FINAL-追加公演”とは長いタイトルだが、全国公演のシメをBUNKAMURAで行うのだが、それに先がけてこの日に追加公演を行った。
なお『もとのその一』とは、千利休が残したとされる和歌「利休百首」にある「稽古とは一より習ひ 十を知り 十よりかへる もとのその一」という一首から引用し、「初心に帰る」という強い決意を込めたものだそうだ。

正太郎『権助魚』、大ホールの開口一番でアガリ気味だったが、ネタに入ってからは権助のとぼけた味が出ていて好演。

談春『たがや』、師匠譲りの、最後は旗本の一閃でたがやの首が飛び、周囲が「たがや」と掛け声を掛けるというもの。この方がオリジナル。だがこの噺は江戸の夏の永代橋の情景、花火風景、そして威張り腐った侍に職人のたがやが胸のすくような啖呵を切って、最後は侍たちを切り捨てるという爽快さが魅力なのだ。なんだか理屈っぽく暑苦しい高座だった。

続いて談春『小猿七之助』、この噺は五代目神田伯龍のレコードに惚れ込んだ立川談志が落語にしたもので、全体が講釈調なのはそのためか。
ストーリーは、以前に当ブログで書いた記事をそのまま以下に再録する。
通称を小猿と呼ばれた七之助と、売れっ子芸者・お滝の二人が大川を船で浅草に向かう。
途中永代橋から身投げの男を助け船に上げる。
事情を聞くと、その男は酒問屋の手代で、集金の30両を渡し船の中の博打ですってしまい死のうとしたと言う。さらに話の続きを聞くとイカサマ博打で取られと分かり、七之助はそれなら俺が取り返してやると、そのイカサマ師の名前を訊くと、深川相川町の「網打ちの七蔵」だと言う。
途端に七之助の態度が変わり、今度は手代を大川に突き落とす。
その七蔵こそ、七之助の実の父親だったのだ。
一部始終を聞いていた芸者お滝に、匕首を持った七之助がお滝の命を奪おうと迫るが・・・。
船に一人船頭に一人芸者はご法度、というルールがポイント。このルールは『船徳』の元になった『お初徳兵衛浮名桟橋』にも重要なシーンで使われている。
談春の長所である口跡の良さ、淀みのない語りが活かされていて上出来だった。このネタは2回目だが、今回の方が遥かに出来が良かった。
談春は終りに、歌舞伎の河竹黙阿弥作『網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)』の中の七之助が奥女中滝川を脅す場面の声色で締めた。この演出も気が利いている。

談春『居残り佐平次』、私たちが普段耳にしいる『居残り』とはいくつかの点で異なる。
①通常は佐平次が自分の友達を品川に誘うのだが、この高座では新橋の居酒屋で偶然に知り合った4人を佐平次が誘う。
②通常は貸し座敷の前で佐平次と牛太郎とのヤリトリがあるが、この高座ではいきなり引き付けでオバサンとの交渉が始まる。佐平次は自分は家来で4人が主役だと紹介する。
③通常は佐平次の部屋で1円ずつの割り前を取った佐平次が自分の1円を足して仲間に渡し、これを母親に届けてくれと頼む。この高座では佐平次は割り前を受け取ってしまいこむ。
④全体的にこの高座の佐平次は言葉が荒く、強面。
⑤客の勝つぁんから小遣いを貰った時に、佐平次は今度はもっと大きなご祝儀をとねだる。
⑥旦那が佐平次に高跳びの50両に着物まで与えたことに、若い衆が文句を言う場面を加えている。
⑦サゲが、佐平次を裏(口)から返すと「裏を返す」のシャレにしている。
このネタの佐平次というのは厚かましい小悪人ながら、どこか憎めないという人物像に描かれるのが普通だが、談春の佐平次はよりアクドイ人物に仕立てている。
どちらが良いのかは好みの問題だが、アタシは前者を好む。
東京落語の特長は「粋」にあると思う。談春の『居残り佐平次』にはその「粋」が欠けているように感じた。

コッテリした3席、タップリ感は味わえた。

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コメント

通とはいえないけれどあまり聴きたくない噺家です。
なんだか粋とは違うようなきがしてときに胸焼けがするのです。

投稿: 佐平次 | 2015/07/24 13:56

佐平次様
談春は個性的ゆえに好き嫌いがはっきり分かれますね。『九州吹き戻し』やこの日の『小猿七之助』、あとは『文七元結』は良いと思いますが、それ以外はあまり感心しません。

投稿: ほめ・く | 2015/07/24 15:02

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