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2015/07/15

国民の声より「米国への忠誠」

集団的自衛権行使の解禁を柱とする安全保障関連法案は7月15日午後、衆院の特別委員会で自民、公明両党の賛成により強行採決され、可決された。安倍晋三首相自身が、採決に先立つ締めくくり質疑で「国民に十分な理解を得られていない」と認めていたにも拘らずだ。
では、なぜこうまでして安倍政権は安保法制を今国会で通したいのかというと、その理由は「アメリカへの忠誠」だ。

安倍首相は今年4月に米連邦議会の上下両院合同会議で演説した際に、太平洋からインド洋にかけての海を「自由で、法の支配が貫徹する平和の海」にするため、日米両国には同盟を強化する責任があると語った。日本は世界の平和と安定にこれまで以上に責任を果たしていくため、「必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現する」と言明した。
つまり安保法案の法制化を今夏に行うとアメリカに約束してきたのだ。アメリカ議会で演説するのがやたら嬉しくてついつい「ご主人に尻尾を振ってみせた」のだが、約束は守らねばメンツが潰れる。

安倍政権がなぜ今回の法案を出したのかという事を考えるにあたって、鍵となるのが「第3次アーミテージ・ナイレポート」である。このレポートは2012年8月15日(奇しくも終戦記念日だ)、米国のアーミテージ元国務副長官及びジョセフ・ナイ元国務次官補(現ハーバード大学教授)を中心とした超党派の外交・安全保障研究グループが、日米同盟に関する報告書 “The U.S-Japan Alliance ANCHORING STABILITY IN ASIA”(日米同盟-アジアの安定を繋ぎ止める-)として公表したものだ。
以下は、「海上自衛隊幹部学校」サイトに掲載された『第3次アーミテージ・ナイレポート』(コラム033 2012/08/28)より、抜粋・引用する。
「報告書の概要」の中で特に注目されるのは次の記述だ。
【日本の「信頼性」についても言及されており、特に自衛隊は日本で最も信頼に足る組織であるとの評価を明言する一方、「時代遅れの抑制」を解消することで、アジア太平洋地域における海洋安全保障上の戦略的均衡の要になり得るとの評価をしている。】

報告書では「提言事項」として27項目が提起されており、うち日本への提言は以下の9項目である。
「日本への提言(9項目)」
(1)原子力発電の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩である。(後略)
(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。
(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に加え、経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)など、より野心的かつ包括的な(枠組み)交渉への参加も考慮すべきである。
(4)日本は、韓国との関係を複雑にしている「歴史問題」を直視すべきである。(中略)日米韓3か国の軍事的関与を継続すべきである。
(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。
(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。
(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。
(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。
(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。

上記を読んで頂ければ明白なように、安倍政権は3年前に出されたこのレポートで指示されたことを実に忠実に実行してきた。とりわけ安倍首相がバカの一つ覚えのように繰り返している「ホルムズ海峡の封鎖」問題も、彼はテキスト通りにしゃべっていることが分かる。
全てはアメリカの言いなりなのだ。

安倍政権が今回の安保法案について唯一の拠り所としている「砂川判決」については、既に本ブログの記事”「砂川判決」を下した売国の裁判官”で明らかにしたように、アメリカ政府の主張をそのまま受け容れたものだ。
本判決の裁判長を務めた田中耕太郎最高裁長官は、判決のおよそ1ヶ月前にアメリカ大使を面談し、判決の要旨や日程、評議内容まで伝え米国側の了承を得ていたことが分かっている。
裁判所法に明らかに違反した判決であることが今日では明白になっているにも拘らず、この判決だけにしがみつく姿は、安倍政権の対米追従ぶりを示している。

アメリカへの忠誠と自分のメンツを守るために国を売る、それが安倍政治の本質だと言えよう。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

神の国・日本意識も無視できないのではないでしょうか。
国民なんて差別して分断して、、。

投稿: 佐平次 | 2015/07/16 10:15

佐平次様
ナショナリズムと対米従属とは本来は対立すべきものですが、安倍らが旗を振る「日本会議」は復古思想と米国追随を結びつけた醜悪な政治集団です。この連中が今の政治を牛耳っている所に最大の問題があります。

投稿: ほめ・く | 2015/07/16 11:45

「第三次アーミテージ・ナイレポート」を教えていあだき、ありがとうございます。
安倍のシナリオは、まさにこれだったのですね。

拙ブログでも取り上げ、こちらの記事にリンクさせていただきましたので、ご了解のほどをお願いいたします。
まさに、アメリカの奴隷政府ですね。

投稿: 小言幸兵衛 | 2015/07/16 12:41

小言幸兵衛様
この報告者が出されたのは3年前ですが、秘密保護法、原発再稼働、TPP参加、そして今回の安保法制と、安倍政権はこの筋書き通り政策を進めています。
こんな大事な文書が海上自衛隊のサイトだけに掲載されているのは意味深です。

投稿: ほめ・く | 2015/07/16 12:56

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