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2015/08/03

青年座「外交官」(2015/8/1)

劇団青年座 第218回公演『外交官』
日時:2015年8月1日(土)16時
会場:青年座劇場
作:野木萌葱
演出:黒岩亮
<  キャスト  >
平尾仁:広田弘毅=重臣会議メンバー(元首相、元外相)
山﨑秀樹:松岡洋右=元外相、国際連盟脱退と日独伊三国同盟締結に貢献
高松潤:東郷茂徳=開戦時と終戦時の外相
横堀悦夫:重光葵=元外相、終戦直後に外相再任(降伏文書に調印)
矢崎文也:白鳥敏夫=駐伊大使
豊田茂:加瀬俊一=東郷茂徳の秘書官
山賀教弘:斎藤良衛=元満鉄最高顧問、終戦時は安立電機の工員
石井淳:大島浩=駐独大使、白鳥と共に三国同盟を推進
嶋田翔平:木戸幸一=重臣会議を主宰し、首班指名の決定権を持つ

ストーリーは。
1945年9月2日、日本側全権代表団は東京湾上のミズーリ号艦上で連合国に対しての休戦協定(降伏文書)に調印し、これをもって第二次世界大戦は終結した。
同年秋、極東国際軍事裁判(東京裁判)に向け、政治家や軍事指導者たちが逮捕されていくなか、元外交官たちが集った。外務省の庁舎は焼けてしまったので場所は帝国ホテルの一室。
出席者はいずれも戦前の日本の外交を主導していた外相経験者やドイツとイタリアの駐在大使、重臣会議のメンバーら。
1931年の満州事変から日中戦争を経て日米開戦、そして敗戦に至るまでの、日本外交の検証が始まる。
「なぜあの戦争は始まったのか」。
満州建国、国際連盟からの脱退、日独伊防共協定の締結、日ソ中立条約の締結、日米交渉の決裂と対日経済制裁、太平洋戦争へ突入、終戦工作、そして広島長崎への原爆投下を経て敗戦。
こうした重大な局面全てに外交官たちは係わってきた。
その多くは意見が分かれていて、日独伊三国同盟について推進派もいれば反対派もいた。国連脱退に反対だった者もいた。日米交渉ではもっと落し所があったのではと悔む者もいる。対米戦争だけは避けるべきと主張した者もいた。終戦工作を遅らせたために原爆投下を招いたと批判する者もいる。
しかし全体としては最悪なコースを辿って敗戦に至ってしまった。
議論は時に責任のなすり合いや罵倒し合いも。
外交官の責任は極めて重い。だが責任の全てを外交官が負うべきなのだろうか。彼らの努力は結局、陸軍の暴走と国民の熱狂に押し流されてしまったと、彼らは主張する。
劇中で重光葵は言う。「あの数年の間、国民のことを考える者など我々の中には誰もいなかった。考えていたのは日本国の国益だけだ」と。
周囲から東京裁判で無罪になりたいなら、全ては陸軍の所為にするよう勧められた広田弘毅は即座に拒否する。なぜなら「自身に責任がある」事を誰よりも知っていたからだ。

この劇はフィクションとノンフィクションの中間と言えるだろう。登場する外交官はいずれも実在し、それぞれが果たした役割や主張も史実にそって描かれているようだ。
しかし全体としてはフィクションである。
ならばもう一歩踏み込んで欲しかったのは、重光の言う国益と国民との関係だ。
日本の敗色が濃くなり水面下で連合軍との間で終戦工作を進めていたが、ズルズルを延ばした挙げ句に原爆投下を招いたのは「国体護持」に拘ったからだ。外交官たちはこの期に及んでも国民の生命より国体を選んだのだ。東京裁判において最も重視したのは昭和天皇の戦争責任の免罪だった。
「国益か、国民の生命か」というのは極めて今日的なテーマでもある。
この作品はその重要な部分を回避したようで、中途半端な印象を残してしまった。

公演は9日まで。

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コメント

総括が足りないのですね。
日本の日本たるゆえんでしょうか。

佐平次様
私の知る限りでは一般の兵士は天皇の命令で出征し、天皇のために戦い死んで行ったんです。開戦から敗戦まで総べて、国民の命より国体、国益を優先させた結果であり、そこの視点が欠如していました。

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