喬太郎「牡丹灯籠~お札はがし」ほか(2015/8/8)
「葛飾納涼落語会~真夏の特撰怪談噺~」
日時:2015年8月8日(土)16時30分
会場:かめありリリオホール
< 番組 >
前座・林家つる子『新聞記事』
林家たけ平『死神』
柳亭左龍『ろくろ首』
~仲入り~
柳家喬太郎『牡丹灯籠~お札はがし』
8日連続猛暑日という東京で、いくらか暑さが緩和された8月8日、「葛飾納涼落語会」へ。
目的は唯一つ、喬太郎の『お札はがし』を聴くためだ。
以前に、横浜にぎわい座で喬太郎が『牡丹灯籠(通し)』を演じたことがあったのだが、チケットを忘れたのを桜木町駅で気付き、取りに戻って引き返した時は既に遅し。肝心の『お札はがし』と『栗橋宿』を聞き逃してしまった。今回はそのリベンジ。
亀有駅に下りるのも約50年ぶりだ。当時、親しかった友人に創価学会の熱心な信者がいて、誘われてこの駅近くで行われた会合に出たことがある。選挙が近かったせいか公明党(当時は公明政治連盟だったかな)の区議が出席していて、話しは選挙対策が主だった。一度で懲りた。ただパンフレットやらなんやら読まされたので、学会の神髄みたいなものは理解したつもりだ。なぜ学会は安倍の「安保法制」に手を貸したんだろう。分けワカラン。
会のサブタイトルが「怪談噺」だが、『死神』と『ろくろ首』は怪談とは言えまい。チョイト無理がある。もっとも3席続けて怪談噺をミッチリ演られたら、それはそれでキツイかも。
たけ平『死神』、通常は医者になった男が金が入ると散財し、女房子どもを追い出し、愛人と関西旅行に出かけるのだが、たけ平の高座では女房は家を出ないし、愛人との旅行もない、堅実な性格のようだ。
このネタのハイライトである生命の蝋燭が並んだ洞窟の場面で、男の恐怖と緊張感の描写が薄く、平凡な出来だった。
左龍『ろくろ首』、欲得でろくろ首の女を女房にした男。なに夜中に首が伸びるなんて、熟睡してれば気にならないと大言したが、実際に見たらそれはもう怖ろしくて逃げ帰る。
左龍得意の「顔芸」を活かして面白く聴かせたが、語りにもう少し起伏が欲しいと思った。
喬太郎『牡丹灯籠~お札はがし』
この演目は多くの演者が手掛けていて、何人かの高座に接しているが、厳密な構成で演じた柳家小満ん、青春文学風の語りが効果的だった春風亭小朝という、対照的な2席を推す。
先ず、ざっと粗筋を紹介するが、通常は『お露新三郎』と『お札はがし』を併せて演じることが多い。喬太郎の高座もそうだった。
医者の山本志丈の紹介で、飯島平左衞門の娘・お露と美男の浪人・萩原新三郎が出会い、互いにひと目惚れする。
新三郎はお露のことを想い悶々とした日々を送る。
新三郎は山本志丈からお露と女中・お米が死んだと聞かされるが、夏のある日にお露が牡丹灯籠を提げたお米を連れて萩原新三郎宅の前に現れる。これを機に毎夜二人は新三郎宅を訪れ、新三郎とお露は深い仲になる。
人相見の白翁堂勇斎がお露らを幽霊だと見破り、萩原新三郎にその事実と死相が出ていると告げる。最初は否定していた新三郎だが、調べていくうちにお露らが幽霊であることがわかり、僧侶の良石の助言に従い金の仏像とお札で幽霊封じをする。
新三郎の奉公人である伴蔵と妻のお峰は幽霊から頼まれ、百両もらって一計を案じて、萩原新三郎の幽霊封じの仏像を奪いお札を取り外す。
翌日、心配になった勇斎が伴蔵と一緒に家に入ると、既に新三郎は絶命しており、その傍には2体の骸骨が置かれていた。
こうした怪談噺では笑いを避けるのが普通だが、喬太郎は四季の小咄風のマクラをふり、本編でもお峰から疑われた伴蔵が「あの二人はこれだ」と言って幽霊の恰好をすると、お峰が「ピグモン?」と訊き、伴蔵に「我慢しろ!」と言わせるクスグリを入れていた。これも全体の雰囲気には影響せず、適度な息抜きとなっている。
全体として登場人物の造形は良く出来ていて、特に伴蔵のいかにも小心者の小悪党という人物像が巧みに描かれていた。オタイコ医者の山本志丈には、もっとアクの強さを強調して欲しかった。
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