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2015/09/04

こまつ座「國語元年」(2015/9/3)

こまつ座公演・紀伊國屋書店提携『國語元年』
作/井上ひさし
演出/栗山民也
<   キャスト   >
八嶋智人/南郷清之輔-文部省学務局の四等出仕の官吏、長州出身。
朝海ひかる/南郷光- 重左衛門の娘で清之輔の妻、薩摩出身。
久保酎吉/南郷重左衛門- 清之輔の義父で、薩摩出身。
那須佐代子/秋山加津-女中頭、江戸山の手出身。
佐藤誓/築館弥平-車夫、遠野出身
土屋裕一/広澤修二郎-書生、尾張名古屋の出身。
後藤浩明/江本太吉-記憶喪失者で無口、津軽出身らしい。(ピアノ演奏者)
竹内都子/御田ちよ-女中、大阪河内出身。元女郎。
田根楽子/高橋たね- 女中、江戸下町出身。
森川由樹/大竹ふみ- 女中、米沢出身。
たかお鷹/裏辻芝亭公民-公家出の国学者、京都出身。
山本龍二/若林虎三郎-強盗、会津出身。
【ストーリー】
明治七年(1874)、幕藩体制が崩壊し、日本は近代国家の道を歩み始めたが、国民の話し言葉は地方によってバラバラだった。明治政府はこれではまずいという事で、田中閣下から文部省学務局の南郷清之輔に「全国統一の話し言葉を制定せよ」という命令が下った。
清之輔が住む麹町番町の自宅だが、婿入りした清之輔は長州だが妻と義父は薩摩といった具合に家族も使用人も言葉はバラバラで、日本の縮図を現していた。
清之輔は皆のお国言葉の観察を始めるが、統一させる大変さが分かってくる。そこへ成功させるためには自分が必要と国学者という裏辻芝亭が居候として入ってくる。清之輔は軍隊で言葉が混乱すると国家の大事と騒ぐが、容易ではない。さらに若林が押し込み強盗に入ってくるが、自分の財布を忘れて取りに戻り、そのまま居候となる。清之輔はさまざまな言葉を混ぜて統一言葉を作ろうとするが、維新の逆賊の言葉が含まれていると田中閣下から叱責される。次に清之輔は「文明開化語」を考えだす。原形は「す」で終わり、過去形は「すた」、否定は「ぬ」、疑問は「か」、命令は「せ」を動詞につけるというものだ。試しにこれで口説けるかと、ふみを相手に口説いて実験は成功。強盗ができるか若林が実験するが、警官に捕まり、獄舎の中から「万人の言葉を変えるのは個人の力ではどうにもならない」と書いてよこす。清之輔は「文明開化語」を田中閣下に上申するが、既に学務局が廃止され、机もなくなっていた。

私がいた会社での社員教育で、工場現場の従業員を集めてディスカッションをしたら、岩手工場の人と大分工場の人では互いに話が通じなかった。そこで三重工場の人が通訳で間に入ったという笑い話しがあった。
まして明治初めの頃では、さぞかし言葉が通じなかっただろう。この劇中にも様々な方言が飛びかうが全く分からず、字幕が必要だ。だが、これこそが作者が言いたかった事なのだ。
これを主に軍事上に必要から一つにまとめて統一の言語を作ろうというのだが、国家が権力をもって強制的に言葉を統一させようとしても、言葉は人間同様に生き物だから無理があるのだ。
自身が東北出身で言葉に苦労し、何より言葉を大事にしてきた井上ひさしだから書けた戯曲であろう。劇中に出てくる各地の方言を採取するだけでも大変な作業であったに違いない。
芝居は、「小学唱歌」(パロディ)の合唱に乗せて音楽劇のように進行し、とにかく楽しい。

余談になるが、日本に速記が導入されるのは明治10年代になってからで、速記の練習台として寄席に通い、噺家のしゃべる事を速記にしていた。それがあったから、現在の私たちが三遊亭圓朝の口演を読むことが出来る。さらにこれが近代文学の礎になっていく。

主役の八嶋智人と朝海ひかるの周囲を、ベテランの久保酎吉、たかお鷹、山本龍二らが脇を固めるという布陣。他の演者もそれぞれの方言に乗せてリズミカルにセリフを語っていた。
個人的には元女郎役の竹内都子が、私が子ども頃に近くに住んでいた元女郎のオバサンと体形や声がそっくりで、リアリティがあった。

公演は東京が23日まで、その後は各地で。

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コメント

めったに見ないテレビですが、これは見ました。ちあきなおみが出たのを覚えています。

佐平次様
私もTVドラマで見た口ですが、やはりちあきなおみの演技だけが記憶にあります。舞台とは少しストーリーが異なっていました。

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