中国旅行を終えての感想
「いま中国国民は毛沢東をどう思っていますか?」と質問すると、それ迄にこやかだった現地ガイドの顔がこわばった。明らかに緊張しているのが分かる。
「皆、尊敬してます。」
「しかし、文化大革命は誤りだった事は中国政府が公式に認めてるし、文革の中心人物は毛沢東だったよね。それでも尊敬してる?」
「でも、毛沢東は良い事もしています。」
「その良い事って何ですか?」
ここで現地ガイドは言葉が詰まり、しばらく沈黙が続いた。どう説明しようか迷ったんだろう。
「文革は確かに誤りでした。しかし当時の人たち(敵視され失脚した人たち)は名誉回復されてます。中国の人はいつまでも過去に拘ることなく、未来を大事にしています。」
中国の長い歴史から見れば、文革の誤りなんぞ取るに足らないのかも知れないが、私から見れば文化大革命の誤りに正面から向き合わねば、これからの中国の正常な発展は無いと思う。
文革の本質が、毛沢東に対する個人崇拝を批判していた当時の指導部に対する毛沢東側のクーデターだったのは明らかだ。彼個人の欲望によって多数の犠牲者と長期にわたる国内の混乱を招いた、その責任は計り知れない。その後、鄧小平や周恩来らによって混乱は収拾され、やがて「改革開放」路線へと転換してゆく。
しかし彼らの改革は毛沢東への個人崇拝を棚上げにし、文革への反省を中途半端に終わらせてしまった。
その結果、後に生じた中国国内の民主化運動を潰し、経済格差を拡大させ、今日に至っている。
私が皮肉半分に「そうか、文革があったから改革開放が出来たと考えれば、毛沢東も良い事をしたってわけか?」と言うと、現地ガイドは苦笑いを浮かべていた。
これ以上議論を拡げるのは中国国内では無理なことは分かっていたので、現地ガイドとの会話もそのまま終わらせた。
中国共産党は現状を社会主義への発展過程と見ているようだが、過去も現在も中国は社会主義や共産主義とは全く無縁な社会である。もはや「共産党」という党名は変えるべきだろう。
中国への旅行は今回が5回目(香港を含めれば6回)となる。観光で4回、仕事で1回。
8月中旬から8日間のツアーで、中国の西安-ウルムチ-トルファン-敦煌と周ってきた。現地のメディアは「対日戦勝記念日」一色でアウェイ感一杯だったが、旅行中特に嫌な気分を味わうこともなかった。
正確にいえば嫌な事はあったが、それは毎度の事で特別ではない。
その嫌な事というのはいくつかあるが、一つは旅行中やたらにパスポートの提示が求められることだ。
ホテルのチェックインでは必ずで、時にはフロントに預けて翌朝に返還なんて事すらある。飛行機に乗る時は仕方ないが、高速鉄道(日本でいう新幹線)の乗車の際にもパスポートの提示が求められる。加えて、主な観光地に入場する際にもパスポートの提示が必要だ。入場券にパスポート番号が表示されていて、入場の際に入場券とパスポートが照合されるケースもある。
目的は唯一つで、外国の旅行者の動静を把握するためだろう。これだけパスポートの記録をしておけば、旅行者個々人の日々の動きが当局には手に取るように分かる仕組みだ。
これは聞いた話だが、中国国内の旅行は人民解放軍が掌握しているとのことだ。数十年前までは現地ガイドは観光客を監視する役目を負っていたらしい。観光客が乗る車両には公安が張りつき、動きに眼を光らせていた時期もあったと聞く。
今はさすがにそういう事は無い様だが、何となく不気味な感じがする。
それと係員が官吏のせいか、やたら高圧的なのも気に障る。
二つ目は観光とショッピングの境界がアイマイなことだ。ツアーの日程表に「00博物館の見学」とか「00工場の見学」と書かれていたら、見学は付け足しでメインはショッピングだ。
それだけではない。観光施設でも案内の途中や終りには必ず売店に案内され、商品の購入を勧められる。
レストランで食事でも、食事が終了した頃を見計らって店の特産品の売込みがある。
見分け方は簡単で、日本語を話す人が出てきて説明を始めたら、最終目的はショッピングだと思えばいい。例えその人が学者だろうと研究者だろうと専門ガイドだろうと、最後は販売員になる。
そう割り切ってしまえば良いんだろうが、何となく騙された様に気分になって嫌だ。買い物好きな人は良いのかも知れないが、30分以上も一ヶ所にとめられ商品を勧められるのは苦痛でしかない。
中国には魅力的で行ってみたい場所が未だいくつかあるのだが、以上の事が気になって行くのが憚れるのだ。
もし中国がこれから多くの旅行者を呼び込もうと思うなら、上記の点は改善した方が良い。
前回(9年前)に比べて良くなった点もある。
①以前に比べれば全体にトイレがキレイになった。
②ホテルの部屋へのマッサージ(実態は売春)勧誘が無くなった。これは恐らく習近平政権の「黄掃」(フーゾク一掃)政策の結果と思われる。
③空港でスーツケースにバンド掛けして10元のチップを要求するという光景が無くなった。これも政権の意向かも知れない。
④西安市でいえばバイクは全て電動に変り、バスと乗用車の燃料は全て天然ガスに変るなど、環境対策が進んでいる。
以前に比べ全体的に浄化されつつあるようだが、経済にどのような影響が出るか注視する必要があろう。
以上が中国旅行の感想だ。異論もあろうが、それは人それぞれという事で。
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