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2015/10/21

建築不正は何故なくならないか

横浜市内の大型マンションが傾いた問題で、建設時の杭打ち工事で、建物の基礎となっている複数の杭が強固な地盤に届いておらず、杭打ちのデータに別の工事のデータが転用されていたことに加え、セメント注入量まで偽装されていたことが明らかになった。
デベロッパーは三井不動産レジデンシャル、元請け施工が三井住友建設、下請けが日立ハイテクノロジーズ、杭打ち工事を行った孫請けが旭化成建材と、いずれも日本を代表する企業ないし子会社であり、日本の企業のコンプライアンスが問われる事態に発展している。
昨日、旭化成建材の親会社である旭化成の社長が謝罪の記者会見を開いたが、今後の調査により今回のような不正がどこまで拡がっていくのか、又問題マンションの建替えなど課題は山積みだ。

現在は旭化成一人が悪者になっている様だが(もちろん旭化成建材の不正は許されないが)、本来は元請である三井住友建設が責任を負わねばならない筈だ。なぜなら建築は設計、施工、監理からなるが、その全ての責任は元請が負わねばならないからだ。
孫請けの不正を見抜けなかったとしたら、それは元請の怠慢だ。黙認あるは気が付かないふりをしていたなら、完全に元請の責任となる。
ここで工事の「監理」というのは一般に馴染みがないかと思われるが、以下のようにとても大事な仕事だ。
・設計図通りの施工が進んでいるかチェック
・図面だけでは伝わらない内容の伝達
・建築主の代理となって、工事現場との打合せや指示
・建築主への報告
メーカーでいえば品質管理部門に相当し、工事では建築主の代理人の立場だ。
今回の件も、元請が規定の「監理」を真面目に行っていれば防げた筈なのだ。処が、まるで元請が他人事のようにしている印象があり、違和感を覚える。

今回の不正が旭化成一社だけと思ったら大間違いで、むしろ氷山の一角と見るべきだ。大小含めた不正は恐らく工事現場では日常的に起きているものと思われる。
では何故、建築工事で不正が行われるのだろう。マンション建設を例にいくつか原因を考えてみたい。
1.建築物の不正を居住者が見抜くのは難しい。
これが家庭電器や家具、乗用車などの耐久消費財であれば欠陥は見つけやすい。処が建築物の欠陥というのは簡単には見つからない。不具合を感じてもその原因が建築工事の不正であることを見抜くのは困難な事が多い。集合住宅の場合、不具合が一様に現れることが少ないし、不具合の全く無い住戸もあるからだ。長い期間を経てから不具合が生じてくるというのも建築物の特徴といえる。
2.建築工事は工期とコストが最優先される。
工期を守るのは至上命令であり、赤字は許されない。しかし実際の工事では予期せぬことがしばしば起きる。地盤が脆弱だったり、今回のように地表から岩盤までの距離が予想を遥かに超えていたとう様なケースもある。しかし元請としては工期は絶対に守らねばならないし、予算の超過は許されない。そこで下請けや孫請けに対して「何とかしろ」という指示になる。命じられた側は仕方なく「何とかする」ことになるが、これが不正の元になる。
3.工事では「監理」がおろそかにされる。
これは某設計事務所のサイトからの引用。
【昨今では設計施工の工務店やハウスメーカーによる現場では、監理者は名ばかりで機能しない状態の現場もあります。
なぜなら監理者は品質管理の為に、管理者の意に添わない指示を行う必要があるからです。
しかし設計施工一貫の会社では、会社の利益に反するケースが多く、監理者の立場に矛盾が生じてしまいます。】
つまり品質管理が不十分な製品を消費者が買わされていることになる。
日本の場合、とりわけゼネコンや大手ハウスメーカーの力が異常に強いので、この傾向が顕著だ。
4.居住者側に立たない管理会社が多い。
マンションの売り出し広告を見ると、全て予め管理会社が決められている。又、管理会社のランキングを見ると、殆んどの会社がデベロッパーやゼネコンの子会社だ。だから居住者が苦情を申し出ても、管理会社が建築の欠陥や不正を認めず、むしろ居住者を説得する側に回る事が多いので要注意だ。

いま直ちに建築の不正を根絶するのは難しいだろうが、当面は次のような対応が考えれよう。
それぞれの居住者が自分の住む集合住宅の住み具合に関心を持ち、問題が生じたら管理組合にどんどん声を上げて行く。
必要な場合は第三者の専門家による診断を依頼する。
居住者の立場に立って動いてくれるようなヒモの付かない管理会社に変える。
不正が明らかになり、相手の態度が不誠実であれば、社会的に広くアッピールしてゆく。

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住まい・インテリア」カテゴリの記事

コメント

ゆうべ、どこかのテレビで同じような仕事をする人が、旭化成は品質管理は好い方で、もっとひどいところはたくさんあると語っていました。
驚きもしませんでしたが。

佐平次様
建築工事では品質管理という概念が極端に疎かにされています。反面、工期とコストだけが重視されるので、不正は避けられないのが現状です。

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