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2015/11/12

#12雀昇ゆかいな二人(2015/11/10)

桂雀三郎・春風亭昇太 第十二回「雀昇ゆかいな二人」
日時2015年11月10日(火)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
桂米輝『小倉船』
春風亭昇太『猿後家』
桂雀三郎『代書屋(代書)』
春風亭昇太『二番煎じ』
~仲入り~
桂雀三郎『崇徳院』

旅行先などで落語が好きだと言うと、先方は必ず「笑点」の話題を振ってくる。「ほとんど見た事が無いので」 と答えるとビックリする。正確には談志や三波伸介が司会をしていた頃は見ていたので、もうかれこれ30年ほど見ていない事になる。ただ出演者は誰かは知っているし、ナマの高座はみな観ている。
「笑点」に台本があると言うと驚かれる人が多い。これは番組の創始者である談志が「笑点の出演者の言葉は全てが台本」と認めているので間違いない。
演芸ではなくバラエティだ。だが決して「笑点」を貶めるつもりはない。TV番組なんだから台本があって当たり前なのだ。台本がありリハーサルもして、それをあたかもアドリブで演じているように見せているのが出演者の「芸」だ。
次に訊かれるのは、出演者の中で誰が一番落語が上手いと思うかという質問だ。「昇太でしょうね」と答えると、これも驚かれる。どうも番組の視聴者にはそう見えないらしい。
昇太には適当な時期に「笑点」を降板して欲しい。たい平もそうだ。いつまでも出続けていると落語家としては大成しない。5代目圓楽の二の舞になっちまう。

この「桂雀三郎・春風亭昇太 二人会」も今回で12回、ということは10年間続いている事になる。二人とも古典・新作の両方をこなす爆笑派だ。

米輝『小倉船』、米團治に入門して4年目だが老けて見える。船の中で問答する噺だが声と語りが明るくて良い。

昇太『猿後家』、この人の好さは愛嬌と勢いだ。愛嬌というのは噺家の大事な要素で、人気のバロメーターにもなる。よく実力はあるんだけど人気がないという落語家がいるが、大概は愛嬌に欠けているケースが多い。逆に芸はないが愛嬌だけで飯を食ってる人もいる。こればかりは天性が左右し、稽古で身に着くものではないだけに厄介だ。
お約束の「笑点」ネタと独身ネタをマクラで沸かせ(これが目的の客も多かったようだ)、ネタは顔がサルに似ていて劣等感を持つ大店の未亡人を、店に出入りの男が褒美欲しさに煽てる失敗するというストーリー。しゃべってはいけないと意識すると却ってしゃべってしまう心理を描いている。昇太の高座は未亡人の表情の変化で魅せていた。

雀三郎『代書屋(代書)』、ほぼ師匠・枝雀の演出に沿った高座だった。代書を依頼しに来た男の綽名が身体が小さく利口なので「太閤はん」。本名はと訊かれると「豊臣秀吉!」と答えるギャグは可笑しかった。ただこのネタを十八番としている当代春団治や枝雀に比べ、代書屋と男の表情の対比が弱く感じられた。
昇太『二番煎じ』、このネタの見所は2カ所あり、
・辰つぁんが良い喉で「火の用心、さっしゃりやしょう~」を聞かせた後で。若い頃吉原で火の見回りをしていた頃を語り出し、「キセルの雨がふるようだ」と見得を切る所。
・見廻りの役人に酒を呑んだのを咎められると、月番がその度に「それはこの宗助さんが・・・」と言い訳をする所。
昇太の高座ではこの2カ所がカットされていて、このネタの味わいを薄くしていた。昇太の弱点といえる多彩な登場人物の演じ分けが不十分だった事もあり、あまり良い出来ではなかった。

雀三郎『崇徳院』、東京版とはいくつか内容が異なる。
・茶店でお嬢さんが若旦那に短冊を渡すのではなく、紙に筆で崇徳院の和歌の上の句だけ書いて渡す。
・お嬢さんの居所を探せる羽目になった男が1日目に自宅に帰るのではなく店に戻り、見つからなかった事を大旦那に報告する。叱れて3日間だけの猶予を貰う事になり、ここで初めて見つけた褒美として長屋をくれるという約束が交わされる。
雀三郎の高座はテンポ良く、登場人物一人一人の演じ分けも出来ていて好演。特に人探しで疲れはてた男が煙草を吸うシーンが良かった。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

昇太が「笑点」メンバーである、ということについて、私には相反する評価があります。

一、明るいから適役。
一、むしろ、大喜利なぞ、引いて冷めた目で見るタイプ。

そして、それは圓丈に置き換えても同様であります。

福様
昇太の才能については注目しています。それだけに「笑点」で埋もれて欲しくないんです。志ん朝も談志もある時期を境にしてメディアから距離を置きました。落語家として何を目指すかという問題でもありますが。

笑点メンバーの中で生の高座を聴きたいと思うのは昇太だけです。そのためか、昇太の独演会はここ数年毎年聴いています。
本人の持つ明るさと、お客を笑わせることに貪欲な点が飛び抜けています。
ラジオのトークで聴いたのですが、師匠柳昇が昇太の前座時代に「(落語家)は芸人だからお客様から可愛がられないと駄目だ。」とよく言っていたそうです。そういうのも影響しているのかもしれません。

ぱたぱた様
私も年1回は昇太を観ています。『権助魚』『花筏』や今回の『猿後家』は、この人が一番ではないでしょうか。

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