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2015/11/21

「テロとの戦い」を理由とした「ドサクサ紛れ」と「ワル乗り」

前回の記事で「テロとの戦い」というのは立場によって解釈が異なり、それが悪用される危険性を指摘したが、この事が決して杞憂に終わらない事を示すニュースがあった。

在英のシリア人権監視団は11月20日付の声明で、ロシア軍がシリア空爆を開始した9月30日以降、同軍の攻撃による死者数は1331人に達したと発表した。
監視団はその内訳として
・民間人が403人
・国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」など反体制派が547人
・過激派組織ISのメンバーが381人
それぞれ死亡したと伝えている。
今回のロシアによる空爆は、先日起きたISの犯行とみられる航空機の爆破に対する報復と見られるが、それならISのみを対象にすべきだろう。むしろ人数からいえばISよりロシアが支援するシリア政府と対立している反政府勢力を「ドサクサ紛れ」に標的にしていた可能性が高い。まして戦闘とは無縁の民間人を400人以上殺害した罪は極めて重い。
「腹いせ」と「ワル乗り」行為と言っても過言ではない。
犠牲者からすればロシア軍こそテロリストである。

もう一つは中国の動きだ。
今月トルコで開催されたG20を前にした16日、中国の王毅外相は、新疆ウイグル自治区の過激派との戦いも世界的な「テロとの戦い」の重要な一部との見解を示していた。その理由として、新疆では暴力事件が頻発しているが、それら全てが東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)が主導するイスラム過激派の仕業だと断定している。そのETIMがアルカイダとつながっていると中国は主張している。
しかし、これらについていずれも明白な根拠は示されていない。
新疆(この呼称も中国政府の一方的なもの)地域は歴史的中央アジアとの結びつきが強く、過去に何度も東トルキスタン共和国として独立の動きがあり、その度に清国、中華民国や現在の中国政府によって抑えられてきた。現在も独立運動は続けられていて、これが中国にとっては目障りで仕方ない。そこで「テロとの戦い」を口実にして一気に叩くつもりなのだ。
果たして中国の国営メディアは11月20日、新疆ウイグル自治区で警察が「テロリスト集団」のメンバー28人を射殺したと報じた。1人は投降したという。
また同自治区の政府系サイト「天山網」によると、警察は9月に同自治区アクス地区の炭鉱が襲撃され16人が死亡した事件の容疑者らを、56日間にわたって追っていた。警察は「さまざまな民族からなる」1万人を動員して今月12日までに複数の一斉検挙を行ったと報じている。
これに先立ち、米当局が出資する放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、政府筋らの情報として女と子供を含む17人の容疑者を当局が殺害したと報じた上で、「テロとの戦いにおける偉大な勝利」と述べた公安当局の声明が速やかに削除されたと伝えていた。
これまた「テロとの戦い」のドサクサに紛れた「ワル乗り」と見ていいだろう。

今後「テロとの戦い」を理由として本来の目的以外の、こうした「ドサクサ紛れ」の行動が各国に拡がる可能性がある。もちろん我が国でも。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

テロリストが利敵行為を犯している、と思うことしきりです。

投稿: 佐平次 | 2015/11/23 10:33

佐平次様
彼らの行動は民衆の権利や自由を制限する結果にしかなりません。一部に陰謀説が流れているのもそのためで、利敵行為と言われてもおかしくありません。

投稿: ほめ・く | 2015/11/23 11:50

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