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2015/12/28

滋味あふれる高座が続いた「師走四景」(2015/12/27)

「師走四景」
日時:2015年12月27日(日)17:00
会場:浅草見番
<  番組  >
柳亭市童『出来心』
五街道雲助『辰巳の辻占』
柳家小のぶ『火焔太鼓』
~仲入り~
柳家小里ん『言訳座頭』
柳家小満ん『よかちょろ』

最近は浅草見番での「雲助蔵出し」の後に、引き続き別の落語会が行われる。年末のこの日は雲助と5代目小さん門下のベテラン3人が顔を揃えるという豪華な顔ぶれ。

市童『出来心』、実力では兄弟子たちを追い越す様な勢い。物怖じしない高座スタイルも良い。
雲助『辰巳の辻占』、水商売の女性の手練手管、男性なら多少とも経験があるだろう(反省!)。彼女たちからしてみれば客をおだてて虜にしなければ生きて行けない。そこで男の自惚れをコチョコチョっとくすぐるわけだ。無尽に当たった男が女郎から金を預かると言われる。訝った男の叔父が女の心情を試すために心中話しを持ち掛けるよう勧める。大川へ身投げすると言って、女が欄干に足でも掛けたら二人を夫婦にしてやると叔父から言われた男が深川(辰巳)の女郎屋へ出向き、誤って人を殺したので心中してくれと持ち掛ける。いよいよ橋の上に来るとハナからその気がない女は身代りに大川へ石を投げ込む。男も命が惜しくなって同じように石を投げて女郎屋へ戻る。その玄関先で二人がバッタリ。
「あっ、てめえ」
「あーら、ご機嫌よう」
「この野郎。太ェアマだ」
「娑婆で会って以来ねェ」
でサゲ。お定まりの筋だがサゲが洒落ているのと、男が女郎屋の二階で女を待つ間に煎餅に入っている辻占を読む場面がこのネタの特色。
雲助の高座は最初は一途だったが女の態度から疑心暗鬼になってゆく男の心情と、嫌々ながら心中話に乗っかりどこで逃げようかと思案する女郎の強かさとの対比を軽妙に描いていた。
師匠・10代目馬生の十八番だったが、今こういうネタを演らしたら雲助の右に出る者はいないだろう。
小のぶ『火焔太鼓』、初見。ほぼ志ん生の演出通りの高座だったが、やたら可笑しかった。
マクラで「おじゃん」の語源が半鐘から来ていて、火事で何もかも失うという所から生まれた言葉だと解説があったが、親切だ。
上半身が良く動く人で、これが会話やリアクションを際立たせる。例えば前半の道具屋夫婦の会話で女房が亭主をなじる時に身を乗り出して小言をいうのだが、女房のイライラが伝わってくる。太鼓が売れて驚き喜ぶ道具屋の亭主の動きも大きく、300両の受け取りを震えながら書くというのはリアリティがある。50両ずつの包みを懐に入れる際には、金包み一つ一つに目を輝かせながらぎこちなく懐に収めるという演じ方も初めて見た。このネタって、こんなに面白かったっけと再認識させられた高座だった。
普段あまり寄席に出ない人だそうだが、これだけの芸があるのに勿体ない。
小里ん『言訳座頭』、柳家小さん代々のお家芸ともいうべきネタで、師匠・5代目小さんも得意としていた。大晦日の掛取りをめぐるネタだが、『掛取萬歳』や『睨み返し』に比べ高座にかかる機会が少ない。
マクラで大晦日に因む川柳「大晦日もうこれまでと首くくり」「大晦日とうとう猫は蹴飛ばされ」などを披露しネタに入る。
大晦日を迎えて借金で首が回らぬ貧乏夫婦。近所に口の上手い座頭が住んでいるので借金の言い訳を頼むことにした。座頭が言うのは、相手が来る前にこちらから出かけてツケが返せないと説明する方が効果的と。二人は掛取りの相手の店に出向き、座頭はある店では店先に座りこみ、別の店では「さあ、殺せ!」と居直り、他の店では泣き落としという具合に次々と言い訳(実際は脅迫に近いのだが)をして夫婦の借金の支払いを免れる。そこに除夜の鐘。今度は座頭が「これから家へ帰って自分の言い訳をしなくちゃならねえ」でサゲ。相手によって言い訳の手口を変えるのと、それに対する店の主たちの反応を見せ所にして、小里んの高座は先代小さんを彷彿とさせる。佇まいも芸風も益々師匠に似てきた。
小満ん『よかちょろ』、マクラで先日「永青文庫」で開催された春画展に行った時の感想が語られた。女性客が多かったので驚いたと言ってが、際どい話もしていた。そんな色っぽい話題から吉原へ入りびたりの若旦那が主人公のネタへ。8代目文楽の十八番だったが、死後しばらくは演じ手がいなかった。
落語には多くの若旦那が出てくるが、これほど厚かましくて野放図なのは他にいない。客先から受け取った200円をすっかり吉原で使い、注意する番頭に向かって花魁のノロケを語る。番頭が花魁と父親とどちらが大事かと問われれば迷うことなく花魁だと答える。果ては「おやじというのは人間の脱け殻で、死なないように飯をあてがっとけばいいんです」と言い出す始末。それも父親に聞こえるような大声で。堪りかねた父親が部屋へ呼びつけ200円の使い道を訊くと、若旦那が先ずは床屋に5円、続いて「よかちょろ」に45円かかったと。父親がその「よかちょろ」って何だと尋ねると若旦那が手拍子で、
「女ながらもォ、まさかのときはァ、ハッハよかちょろ、主に代わりて玉だすきィ、しんちょろ、味見てよかちょろ、しげちょろパッパ」
と歌い出す。呆れた父親がとうとう倅を勘当する。
この噺のキモである遊び人である若旦那の「艶」をタップリと見せた小満んの高座は見事だった。

4人4様、それぞれが10代目馬生、5代目志ん生、5代目小さん、8代目文楽の十八番を演じ、その神髄を引き継ぐ高座を見せてくれた。
1年の終りに相応しい、味わい深い会だった。

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コメント

締めの落語は、浅草の「夜の部」でしたか!

小のぶをお聴きになれて、良かったですね。
池袋で『長短』を初めて聴いた時を思い出します。
その日の代演で名前を発見して、驚いて出かけたのでした。
“幻の噺家”と言われているほどですからね(^^)

ほめ・くさんの一年回顧、楽しみです!

投稿: 小言幸兵衛 | 2015/12/28 12:48

小言幸兵衛様
小のぶは遅まきながらの初見でしたが、80歳に近い年齢とは思えぬ動きで楽しませてくれました。CDを沢山出しているようでうが、魅力は高座を見ないと分からないと思います。

投稿: ほめ・く | 2015/12/28 15:21

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