ご機嫌なミュージカル「CHICAGO」(2015/12/9マチネ)
ブロードウェイミュージカル『シカゴ』
日時:2015年12月9日(水)14時
会場:東急シアターオーブ
作詞:フレッド・エッブ
作曲:ジョン・カンダー
脚本:フレッド・エッブ&ボブ・フォッシー
初演版演出・振付:ボブ・フォッシー
< キャスト >
シャーロット・ケイト・フォックス:ロキシー・ハート/ヴォードヴィルのスターを夢見ながら、ナイトクラブで働く人妻。愛人を殺害し監獄へ。
アムラ=フェイ・ライト:ヴェルマ・ケリー/元ヴォードヴィルダンサー。夫とその浮気相手である実の妹を殺害し監獄へ。
トム・ヒューイット:ビリー・フリン/裁判では一度も負けたことがない、私利私欲に目のない悪徳敏腕弁護士。ヴェルマとロキシーの代理人を務める。
トッド・ブオノパーネ:エイモス・ハート/妻ロキシーに裏切られ続けるお人好しの夫。それでもロキシーを愛す。
ロズ・ライアン:ママ・モートン/ロキシーやヴェルマ達の収監される監獄を取りまとめる女看守。ワイロを貰って収監者の便宜を図る。
D.ラテル:メアリー・サンシャイン/イブニングスター紙の記者。彼女の手に掛かれば瞬時にシカゴの街中がその話題で持ちきりになる。
ニコール・ブノワ:ゴー・トゥ・ヘル・キティ/裁判で有罪、絞首刑になる。
ほか、アメリカ・カンパニー。
<MUSICAL NUMBER>
— ACT1 —
OVERTURE/ザ・バンド
ALL THAT JAZZ/ヴェルマ&カンパニー
FUNNY HONEY/ロキシー
CELL BLOCK TANGO/ヴェルマ&ガールズ
WHEN YOU'RE GOOD TO MAMA/ママ・モートン
TAP DANCE/ロキシー、エイモス、ボーイズ
ALL I CARE ABOUT/ビリー&ガールズ
A LITTLE BIT OF GOOD/メアリー・サンシャイン
WE BOTH REACHED FOR THE GUN/ビリー、ロキシー、メアリー・サンシャイン、カンパニー
ROXIE/ロキシー&ボーイズ
I CAN'T DO IT ALONE/ヴェルマ
MY OWN BEST FRIEND/ロキシー&ヴェルマ
— ACT2 —
ENTR'ACTE/ザ・バンド
I KNOW A GIRL/ヴェルマ
ME AND MY BABY/ロキシー&ボーイズ
MISTER CELLOPHANE/エイモス
WHEN VELMA TAKES THE STAND/ヴェルマ&ボーイズ
RAZZLE DAZZLE/ビリー&カンパニー
CLASS/ヴェルマ&ママ・モートン
NOWADAYS/ロキシー&ヴェルマ
HOT HONEY RAG/ロキシー&ヴェルマ
FINALE/カンパニー
<ストーリー>
舞台は1920年代、禁酒法時代のアメリカ・イリノイ州シカゴ。夫と浮気相手の妹を殺害した元ヴォードヴィルダンサー、ヴェルマ・ケリーが現れ、虚飾と退廃に満ちた魅惑的な世界に観客を引き込む(All That Jazz)。曲の途中、ナイトクラブで働く人妻ロキシー・ハートが浮気相手に銃弾を放つ。
お人好しのロキシーの夫エイモスは、彼女の身代わりとして出頭し、愛すべき夫への想いを吐露するロキシー(Funny Honey)。しかし死んだのは妻の浮気相手だと気付いたエイモスは憤慨して警察に真実を話し、ロキシーは収監される。
そこにはヴェルマをはじめ、自らの犯した罪にそれぞれ勝手な“解釈”を加えて無実を高らかに訴える女性殺人囚たちがいた(Cellblock Tango)。女看守長ママ・モートンは「見返りをくれれば(When You’re Good To Mama)そのお礼をするよ」とロキシーにワイロを要求する。
無罪を勝ち取ってショービズ界へのカムバックしたいヴェルマは、マスコミの注目を奪ったロキシーが気に入らない。ヴェルマの代理人を務める弁護士ビリー・フリンは、金や名声より「愛こそがすべて」(All I Care About)だとうそぶき、ロキシーの弁護を引き受ける。
手始めにビリーは、お涙頂戴ドラマに弱い記者メアリー・サンシャインを利用しようと画策(A Little Bit Of Good)。記者会見を開き、ロキシーの偽りの過去と正当防衛の作り話をでっち上げる(We Both Reached For The Gun)。ビリーの話を信じたマスコミや世間の注目を浴びて大喜びのロキシーは、スターになった自分の晴れ姿を夢見る(Roxie)。
焦ったヴェルマはロキシーに手を組もうと持ち掛けるが(I Can’t Do It Alone)、他でより衝撃的な事件が起き、二人へのマスコミの関心は薄れてしまう。ロキシーとヴェルマは「頼りになるのは自分だけ」と自らに言い聞かせる(My Own Best Friend)。そこでロキシーは「実は妊娠している」と告白すすと、新ネタに狂喜したマスコミは、再び彼女に無数のフラッシュを浴びせる。
ロキシーの嘘に呆れながらも感心すら覚えるヴェルマ(I Know A Girl)と、ありもしない赤ん坊を想像して上機嫌のロキシー(Me And My Baby)。一方、周囲から忘れられたロキシーのエイモスは、自分がセロファンのように透明で目立たない存在だと嘆く(Mister Cellophane)。
名声に溺れて強気になったロキシーに対し、弁護士のビリーは自分こそがすべてを巧みに操る”スター”なのだと自信たっぷり(Razzle Dazzle)。彼の筋書き通り、法廷で社会の被害者を演じるロキシーの様子を聞いたヴェルマとママ・モートンは、道徳や品位(Class)など地に落ちた今の世のありさまを嘆く。
そして判決を迎え、めでたくロキシーは無罪となるが、その瞬間に他のスキャンダラスな殺人事件のニュースが舞い込み、マスコミは彼女に目もくれず飛び出していく。
茫然自失するロキシー、そして同じくマスコミに見放されたヴェルマ。
やがて自由の身になった二人はコンビを組んでナイトクラブのヴォードヴィルダンサーとして歌い踊る(NOWADAYS)(HOT HONEY RAG)。二人は客席からの喝采を浴びて終幕(FINALE)。
ストーリー自体は他愛ないが、とにかく数々ミュージカルナンバーに乗せて繰り出される歌と踊りが素晴らしい。鍛え上げられた身体が躍動する姿はエキサイティングだ。
ミュージカル俳優は「歌えて踊れて演技ができる」事が条件だが、日本の俳優だとこの三拍子が揃う人は稀だ。今回来日したブロードウエイの出演者やアメリカ・カンパニーの面々はその条件が備わっている。
特にヴェルマを演じたアムラ=フェイ・ライトのダイナミックなダンスに魅了させられた。
他には弁護士ビリーを演じたトム・ヒューイットと看守長のママ・モートンを演じたロズ・ライアンの歌唱力、美しい女声を響かせていた新聞記者メアリー役のD.ラテル(実は男性の俳優だった)が印象に残る。
またニコール・ブノワの肢体の美しさにウットリしてしまった。
主役のロキシーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスは熱演だったが、いかんせん華奢で線が細い。そのためか踊りのダイナミックさや歌の声量に欠けていたように思う。そこだけが残念だった。
公演は23日まで。
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