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2015/12/30

ベスト演劇2015

今年は26回の演劇鑑賞を行ったが、この中でベストだった芝居は次の通り。

こまつ座公演・紀伊國屋書店提携「父と暮せば」
日時:2015年7月11日(土)17時
会場:紀伊国屋サザンシアター
作 :井上ひさし
演出:鵜山仁
<  キャスト  >
辻萬長 :福吉竹造
栗田桃子:娘・福吉美津江

何度も再演され映画化もされたので観た方も多いだろうが、今回初めて舞台に接した。
1945年8月6日の広島への原爆投下で父親は死亡し、一人残された娘は様々な困難を抱えながら暮らしていた。好きな人が出来たが、父親や親友の死を目の当たりにして自分だけ幸せになってはいけないと躊躇う娘の前に父親の幽霊が現れる。
その娘に対して父はこう言う。「人間のかなしいかったこと、たのしいかったこと、それを伝えるんがおまいの仕事じゃろうが」「そいがお前に分からんようなら・・・・ほかの誰かをかわりに出してくれいや・・・・わしの孫じゃが、わしのひ孫じゃが」。
そうした父の言葉に背中を押され、一歩一歩前に進もうとする娘の姿を描いて芝居は終る。
広島の原爆投下により、一瞬にしておよそ30万人もの命が奪われた。助かった人もいるが、それはいくつかの偶然が重なり生死を分けた。亡くなった人間の無念さと、生き残った人の罪悪感。これが本作品のテーマだ。残された人たちもその後に次々と発生する被爆の症状に悩まされる。加えて、当時の周囲は必ずしも被爆者に同情的ではなかったという事情も重なる。もちろん被爆の実態を隠そうとしていたアメリカ占領軍の意向もあった。
本作品はそれらの諸事情全てを、父娘の会話だけで再現させようとしたものだ。
登場人物は二人だけで上演時間は90分という芝居だが、観る者に戦争の悲惨さ、核兵器使用の残酷さを訴え、改めて怒りと悲しみがこみ上げてくる。
久々に芝居で泣いてしまった。
数多くの井上ひさしの戯曲の中でも最高傑作といって良い。

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