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2016/02/09

「西のかい枝・東の兼好」(2016/2/8)

第23回にぎわい倶楽部「西のかい枝・東の兼好」
日時:2016年2月8日(火)19時
会場:横浜にぎわい座
<  番組  >
前座・雷門音助『たらちね』
桂かい枝『私がパパよ』
三遊亭兼好『紀州』*
~仲入り~
三遊亭兼好『置き泥』
桂かい枝『茶屋迎い』*
(*ネタ出し)
23回目を迎えた「かい枝・兼好 二人会」、毎回充実した内容で楽しみにしている。その割には客の入りが今ひとつの感があるのは残念だ。
兼好に言わせると、この位の入りの方が芸人としてはもっと頑張って次回はもっと沢山の人に来て貰おうという気になるとの事だが、是非そうなって欲しい。

前座の雷門音助、アタシの知る限りでは現在イチオシの前座だった。この11日より二ツ目に昇進し、この日が前座としての最後の高座だった。
冷たい様だが、前座でダメな人は先に行ってもパッとせずに終わる。途中で化ける例もあるかも知れないがアタシは見たことがない。
昨年二ツ目になった柳亭市童や音助は期待が出来ると思うし、一層の精進を望みたい。

かい枝『私がパパよ』は新作。初めての出産に立ち会う父親の姿を描いたもので、期待と不安が交差する心境が表現されていた。主人公の父親は53歳で45歳の妻が初の出産だ。同じ待合室にいた21歳の男は妻が19歳で3人目の出産。父親としては先輩の若い男から色々なアドバイスを貰う場面を中心に演じていた。お互いの家が近いので、小学校の運動会で一緒になるなぁなどと想像する処が面白い。
ほのぼのとした1席。

兼好『紀州』、ストーリー自身は他愛ないもので、『源平』同様に専ら間に挟む小咄やクスグリで笑わせるネタ。落語家の襲名の話で、兼好が7代目圓生に「そーっとなっちゃおうかな」と言ってたが、多少の本音が含まれている気がした。もし今の圓楽一門から出すなら兼好は候補の一人だ。圓生となると人情噺に挑戦する必要があろうが、絶対条件ではない気がする。いま大名跡を継いでいる噺家を見ると、正蔵、文楽、小さん、金馬といった人たちは先代の芸を継承しているわけではない。昨年亡くなった円蔵も先代とは異質の芸だった。そうなると人情噺をやらない圓生もありかと。
この高座で気になったのは、通常は尾州公が登城の途中で鍛冶屋の鍛鉄の音を「天下取る天下取る」と聞いて気を良くするというものだが、ここをカットしていた。もしかするとこの仕込みを忘れていたのではと心配になった。下城の際に鍛冶屋の音を「天下取る天下取る」と聞くので齟齬は無いのだが、尾州公が登城の時に聞いて心が弾むという常法の演じ方の方が良かったと思う。

兼好『置き泥』、別の『夏泥』というタイトルで演じられる事もある。兼好の高座では季節は寒い時期だ。
最初はドスを突き付け金を出せと脅す泥棒だが、男からどうせ死のうと思ってたんだからさあ殺せと居直られ、男の言うままに金を出して行く過程を楽しく描く。
手元に兼好の『置き泥』のDVDがあるが、途中で間延びした感があった。この日の高座ではよりテンポが良くなり面白さが増していた。
最近の兼好を見ていると、ワンステップ上がったかなという印象を受ける。

かい枝『茶屋迎い』、以下に粗筋を紹介する。
大阪の船場、丹波屋という商家。旦那が息子の放蕩に頭を悩ませている。ここ数日息子の顔が見えないので番頭に訊くと、番頭が帳面を付けているところへ若旦那が現われ、集金に行くと請求書の束を持って出かけたっきり5日経っても戻らないという。
番頭が言うのには、どうも集めた金を持って新町の茨木屋に上がりこみ、居続けているらしい。わけを知った親旦那は、手代の久七を迎えに行かせるが5日待っても戻らない。堅物の杢兵衛をやるがこれ又戻らない。責任を感じた番頭が自ら説得に出掛けるが、これも5日経っても帰って来ない。
業を煮やした旦那は、ならば自分が行って来ると、飯炊きの権助から汚れた筒袖の着物を借り新町の茨木屋に向かう。
茨木屋の2階では若旦那が集まった奉公人たちと共に宴会の真っ最中。そこへ女中が新たな迎いが来た事を告げる。恰好からすると権助らしい。それなら1階の小部屋で酒でも飲ませておけと命じる。
狭い部屋で独酌をする旦那だが、2階の派手な宴会の音が響いてくる。ついつられて小唄を歌うと、女が部屋を間違えて入って来る。その女・小雪はかつて丹波屋が世話していたことがあり、故あって8年前に別れていた。小雪は今は独り身、そこで焼けぼっくいに火がついてしまう。
「これからチョイチョイ寄せてもらうわ。」
「んまぁ~、嬉しぃ。」
「そぉか、一人でいてんのんかいな、もぉちょっと、お前こっちおいでぇな。」
「あん、えぇのん?」
「来たらえぇがな。」
と、ここで旦那が小雪をぐっと引き寄せ、片方の手を襟元から中へ・・・。
突然、女中が現れ、
「あの、お迎いの方、若旦那お帰りでっせ」
「えー? 帰るてか? いや、その、いや・・・、親不幸者め。」

ストーリーを読んで分かる通り、東京での『木乃伊取り』と『不孝者』という二つのネタの元になっている。
改めてかい枝の高座を聴くと、やはりこの演目は上方のものだ。船場の商店の旦那と、大阪の新町(東京吉原、京都島原と並ぶ三大遊郭)の芸者という組合せが自然だ。
芸者の描き方も東京の『不孝者』がやや湿っぽいのに対し、上方の方は明るくずっと色っぽい。
かい枝の高座では丹波屋の親旦那が店ではいかにも堅物にふるまうが、新町に来てからはかつての遊び人の風情を表していた。芸者の小雪はセリフを言う時に髪をかき上げたり身体をくねらしたりさせて、親旦那を誘う手練手管を表現させた。これでは旦那がグッと引き寄せたくなる気も分かる。
親旦那が息子の放蕩を憂い妻にあれは自分の本当の息子かと嘆くと、妻が「あの子だけはあなたの子です」と切り返すのだが、昔の女遊びを皮肉っているように聞こえた。
若旦那や奉公人たちの人物の演じ分けも上々、お囃子との呼吸もぴったりで、かい枝の実力を示した高座となっていた。

4席とも結構で、今回も満足のいく充実の高座が見られた。

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コメント

昨夜もご来場くださり、まことにありがとうございます。なかなか集客に結びつきませんが、地道に頑張っていい高座を心掛けます。いつもお褒め頂いて本当に励みになります。本当にありがとうございます!!!

桂かい枝
この会は楽しみにして通っている会の一つで、この日もお二人の熱演が客席に伝わってきました。また次回も是非伺いたいと思っております。

いらっしゃいましたね。

私は三年ぶりでしたが、それだけに二人ともずいぶん器が大きくなったなぁ、と感じました。
ほめ・くさんのご感想と近いことを、嬉しく思います。

四十歳台、これから東京と上方の将来を背負って立つだろう二人の会、今後もぜひ来たいと思わせました。

小言幸兵衛様
40歳代という事は、伸び盛りと言えます。ベテランの円熟した芸も良いですが、見るたびにステップアップする人の芸も楽しみです。今年も幸兵衛さんとのニアミスが増えることを期待しています。

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