桂春団治の訃報
旅行中だったのでこの訃報を見落としていて、小言幸兵衛さんのブログで知った次第。
落語界の大御所の一人で、戦後衰退していた上方落語を復興させた「四天王」の最後の一人だった三代目桂春団治さんが1月9日、心不全のため大阪市内の病院で死去した。85歳だった。
CDやDVDでは聴いていたが、ライブでは残念ながら高座は一度しか接していない。ただその印象は強烈で今も鮮明に憶えている。
2011年2月11日に横浜にぎわい座で行われた第32回上方落語会での高座で、演目は十八番の『野崎詣り』だった。81歳の時の高座だ。
その時の記事を以下に再録する。
ライブで初めて観たのだが、上方落語の重鎮らしい佇まいと上品な色気。若いころはよほど祇園辺りで修行してこられたのだろう。そうでなけりゃ、あれだけの色気は出て来ない。
噺は大阪から野崎詣りに出かけた二人が船に乗り、土手を行く人に口喧嘩を売ると言う他愛ない筋書。演者の話芸だけで聴かせるネタで、こういうのが上方ではトリ根多なんだろう。
春団治のひとつひとつの所作が実に綺麗だ。例えば日傘をさして歩く姿など観ていて惚れ惚れする。小便をする仕草さえ粋なのだ。
初夏の野崎の風景が浮かんでくる。ふと、人形浄瑠璃「新版歌祭文 野崎村」を思いだした。そういえば春団治の出囃子も「野崎」だ。
そして何より会話の軽妙洒脱さ、それほど面白い事を喋っているわけではないのに、客席は笑いの渦。
久々に名人芸を見られたという満足感で一杯になり、この1席だけで来た甲斐があった。
ご冥福を祈る。
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