#6米紫・吉弥ふたり会(2016/3/9)
第6回「米紫・吉弥 ふたり会」
日時:2016年3月9日(水)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
< 番組 >
米紫&吉弥『オープニングトーク』
桂吉弥『餅屋問答』
桂米紫『厩火事』*
~仲入り~
桂米紫『大安売り』
桂吉弥『不動坊』*
(*ネタ出し)
桂米紫、東京の方にはお馴染みがないかも知れないので、略歴を紹介する。
1994年3月 桂都丸(現4代目桂塩鯛)に入門。「桂とんぼ」と命名。
1997年3月 芸名の表記を「桂都んぼ」に改める。
1999年「NHK新人演芸大賞」落語部門で大賞を受賞。
2005年「なにわ芸術祭」で新人奨励賞を受賞。
2009年「文化庁芸術祭」大衆芸能部門で新人賞を受賞。
2010年8月 4代目桂米紫を襲名。
さこばの孫弟子にあたる。桂吉弥とは同期だが入門は8ヶ月程早い。芸風は吉弥のスマートな高座に対して米紫は上方のコッテリとした味わいで対照的だ。
『オープニングトーク』ではやはりあの話題、桂文枝の不倫騒動が採りあげられていた。吉本の圧力からか関西では放送でこの話題に触れるこては厳禁だそうだ。二人も言ってたが文枝に愛人がいるなんて、驚いた人がいるだろうか。大方の人は「やっぱり」か「そうだろうな」という感想だっただろう。「きっと一人じゃないよね」と思った人も多いだろう。1月に亡くなった春団治などは若い頃には手帳に100人の女性の連絡先が書かれていたというエピソードが残っている。そういう世界なのだ。
文枝を擁護する気はサラサラないが、情事をメディアに暴露する愛人の(玄人なんだから)倫理観を問いたい位だ。
閑話休題。
広島県府中町立、府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒が自殺した件が大きな問題になっている。進路指導のおりに担任から、生徒が1年生の時に万引きをしたとする誤った記録をもとに、生徒が志望した私立高校への学校長の推薦はできないと告げていた。生徒はこのことが親に伝えられた日に自殺していた。
痛ましい事件だし担任の教師も責められて当然ではある。しかしネットでは担任を吊し上げるかの様な風潮があるが、一番悪いのは学校側だ(校長又は教育委員会)。1年生の時の万引き、それも補導歴もなく店に謝罪して収まっていた件を理由にして、推薦しないと決めた学校にこそ問題がある。これは名前の取り違い以前の問題だ。学校は教育の場であるという意識が根本的に欠如している。
本題に戻って。
吉弥『餅屋問答』、タイトルから分かる通り東京の『蒟蒻問答』を上方に移したもの。関西では蒟蒻が生産されていないので餅屋としたのだろう。ストーリは東京のものと同じで、寺男が和尚に寺の符牒を教える所や問答を避けるため自分の故郷へ逃げようと和尚に勧める場面がカットされていた。吉弥の高座はスピーディな展開は良かったが、イロハニホヘトのお経が下手だったのが難点。
米紫『厩火事』、東京でもお馴染みのネタでストーリーも同じ。但し米紫の演じ方は東京とは大きく違う。
マクラで落語における女性の動作について解説があり、特長は「斜めの動き」と言っていたが、この主人公のお崎さんは確かに斜めに動いていた。お崎さんの動作やセリフ一つ一つにキレがあり、それがやたら可笑しい。米紫が描くお崎さんは亭主が可愛くて愛しくて仕方がない。傍目にはブラブラ遊んでばかりいるダラシナイ亭主だが、そんな欠点は一向気にしてない。そうした特定のタイプの女性の姿や心情を見事に描き出していた。
このネタでこれほど笑えたのは初めてかも知れない。米紫、恐るべし。
蛇足ながら我が家は「モロコシの孔子」です。
米紫『大安売り』、東京の寄席だと短い時間での小咄や相撲ネタのマクラに使われるが、上方では1席の噺として演じられているようだ。内容は東京の相撲に出ていた大阪の力士が客から成績を訊かれて「勝ったり負けたり」と答える。中身を聞くと全敗で、相手が勝ったり自分が負けたりだと言う。相撲を諦め商売を始める、ついては名前を大安売りにするという。誰にも負けるからでサゲ。相撲に負けると、値段をまけるに掛けている。
仲入りと同様に米紫の高座は所作やセリフにキレがあり、楽しく聴かせていた。
吉弥『不動坊』、吉弥の良さは本寸法でありながら芸に艶があることだ。これは芸人として最も必須な愛嬌が身に着いており、たぶん天性のものだろう。このネタは利吉が風呂屋で独白する場面や、独り者たちが利吉の家の屋根で復讐の準備をする場面でダレル事があるのだが、吉弥はそれぞれのシーンで強弱を付けて引き締まった高座を見せていた。
力量を十分に発揮した上出来の高座だった。
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