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2016/03/19

まるで「チーママ」みたいな女流作家たち

【「林君、僕はね、すごい発見をしたんだよ。女を歓ばすには、挿入なんて何の意味もないってことをね。」
「はあ・・・」
「君だってそうだろ。ヘンなものが体の中に入ってくるよりも、指でじっくり愛してもらった方がずっといいだろ。」】

言っておくが、これはスナックのチーママと客のオッサンとの会話ではない。「林君」と呼びかけているのが先年亡くなった作家・渡辺淳一であり、相手は作家の林真理子。
林は続けてこう書いている。
【先生(註:渡辺淳一のこと)は最後に、
「女とちゃんとヤルこと」
を徹底的に追求したこの小説を遺作として、あの世にいかれた。『愛 ふたたび』は、到達した者だけが書ける寓話なのである。】
この文章は渡辺淳一の『愛 ふたたび』(幻冬舎文庫、2015年)の林真理子による解説の一部だ。
(【】内は引用、以下同じ)

月刊誌『図書』2016年3月号で、斎藤美奈子女史による『文庫解説を読む』では、渡辺淳一の作品の文庫解説を採りあげている。斎藤によれば渡辺の小説はソフトポルノであり中身はスカスカとのこと。だから論評の対象になるかというと、なかなか難しいだろうとしている。
それでも膨大な数の作品が文庫化されており、それにはいちいち解説がついているというわけだ。最近は解説も女流作家によるものが多いそうだ。

『ひとひらの雪』(集英社文庫、2009年)解説は唯川恵。
【「君はちゃんと恋愛をしているかね」
ある時、渡辺さんがおっしゃった。
渡辺さんは大ベストセラー作家であり、同時に文壇の大御所であるという驚異的存在の方だが、私のような者にも時折、声を掛けてくださる。
「まさか、私なんかが、恋愛なんてもう無理です」
「人間が死ぬ時、思い出すのはどれだけお金を儲けたとか、高い地位を手に入れたかじゃない。かつて好きだった人と、ふたりで歩いていた時、空がきれいだった、そういうことだよ」
どう答えていいかわからず、言葉を探していると、呆れたように笑われた。
「そんなことじゃ、いいものが書けないよ」】

『化身』(集英社文庫、2009年)解説は村山由佳。
【以前、文学賞のパーティーでお目にかかったときのこと。私はちょうど性愛をテーマにした『W/F ダブル・ファンタジー』という小説を上梓したばかりだった。渡辺氏から、今度の作品はいいよ、よくあそこまで書けたね、どうしたの? と訊かれ、じつは少し前に別れて独りになりました、と答えてところ、おお、と破顔して肩を叩かれた。
「それは良かった! 素晴らしいことだよ、おめでとう」】

『うたかた』(集英社文庫、2009年)解説は林真理子。
【「林君、小説家にとって、いちばんおもしろくて難しいことは、男と女の情痴を書き尽すことなんだよ」
渡辺先生がそうおっしゃたのは、ある文学賞(註:直木賞と思われる)の選考会でご一緒した、札幌でのことだったと思う。(中略)ちょうど先生は『失楽園』の準備を始めていらした頃だったはずだ。】

どうやら渡辺淳一という人はパーティーで女性作家に出会えば、肩を叩いて性的な話題をふるというクセがあったようだ。一般社会ならこれはセクハラと呼ばれる。女性作家の方も心得たもので、適当な相槌を打ち渡辺を喜ばせていたわけだ。
これが「文壇」というものなら、スナックの客とチーママ(一般のホステスより少しは高級かなと)との会話と区別がつかない。
チーママは以下のように客をおだてることに長けている。

『愛の流刑地』(幻冬舎文庫、2007年)解説は谷村志穂。
【著者こそが、本来は、どっかりと根を生やして、「存在する女たち」の生理を、もっともよく知るお一人であろう。】

『くれなゐ』(文春文庫、2012年)解説は桜木紫乃。
【女は旅行者(トラベラーズ)で、男は観光客(ツーリスト)―。
そう考えると、男が性愛の相手を違えたがる理由に、ある種の理屈が生まれてくる。】

『くれなゐ』(集英社文庫、2009年)解説は角田光代。
【近著『欲情の作法』で渡辺さんは、その区別を「挿入する性」と「される性」と表現されている。これほど明確な区別はない。】

『失楽園』(講談社文庫、2000年)解説は高樹のぶ子。
【このエロティシズムと死の文学は、長く記憶され続けるだろう。】

ここまでくると、解説というよりは単なるヨイショだ。「あら、ナベちゃん、様子がいいわ」ってなもんだ。
チーママに徹する、これが渡辺淳一の作品に対する女性作家の解説の秘訣のようだ。
もっとも作品がスカスカだから解説もスカスカにならざるを得なかったのかもね。

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コメント

ポルノ、劣情扇情を文学といえばなにやら高級感も出てくるようです。
まあ、読んでもいないのに(「失楽園」はときどき新聞で斜め読み)論評する資格はなのですが。

佐平次様
私は渡辺淳一の本を一冊も読んでいないのですが、これらの解説を見るだけでどんな内容のものか大方の察しがつきます。そういう意味では親切な解説と言えるでしょう。

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