良質のコメディ!「フォーカード」(2016/4/18)
劇団青年座第221回公演『フォーカード』
日時:2016年4月18日(月)14時
会場:紀伊國屋ホール
作=鈴木聡
演出=宮田慶子
< キャスト >
【劇団「新流」養成所同期】
増子倭文江/横山千鶴
横堀悦夫/谷義人
大家仁志/中込彰
野々村のん/神崎由佳里
【喫茶店のマスターと従業員】
名取幸政/榎本治郎
小暮智美/小池仁美
【喫茶店に集う人々】
五味多恵子/久米藤子
小豆畑雅一/久米春樹
有馬夕貴/内田裕子
那須凜/星野沙紀
高松潤/松宮徹
尾身美詞/小野真理子
【資産家】
山野史人/立花秀雄
ストーリー。
舞台は都内の喫茶店。店内の客の会話がゲス不倫やSMAPの解散などが話題になっているので、時は現在。
今から20数年前、劇団「新流」の俳優養成所を卒業した横山千鶴、谷義人、中込彰、神崎由佳里の同期4人が、さる理由から劇団員にはなれず、俳優を断念し今はそれぞれ違う道を歩いている。
ある日、千鶴の呼びかけにより昔馴染みの喫茶店で4人は再会した。
それは、ある人物から大金を騙し取るためにペテンの片棒を担がないかという相談だった。当初、他の3人は断ろうとするが、4人ともそれぞれ経済的に困っていて現金が必要だった。そこに「ペテンは演技力。かつて養成所のフォーカードと呼ばれた4人が集まれば必ず成功する!」という千鶴の「激」で、かつての俳優魂に火がついた。不審と不安が渦巻く中、3人はこの提案を受け入れる。
一方、この喫茶店の常連客は3組で、課長と部下の不倫、先輩と後輩の女性社員、嫁と折り合いの悪い老母とその息子だ。
3組のペアの人生ドラマと交錯しながら4人の計画は進み、その稽古にも熱がこもる。ターゲットは資産家に投資話を持ちかけ1億円を詐取すること。舞台はこの喫茶店。
いよいよ4人によるコンゲーム(信用詐取)の日が来た。4人(フォーカード)は大勝負に出るが・・・。
人間は誰しも日常生活の中で演技をしている。
自分を振りかえっても、会社に行けば社員になり、妻の前では良き夫、子どもの前では厳格な父親、近所の人には良き隣人、といった具合だ。親しい友人の前では会社や家庭では決して見せない顔にもなる。そうして演技していかないと精神的に壊れてしまうからだ。
この芝居でも元劇団員の4人が再会し互いに現状報告する場面や、他の3組の人たちの会話では、そうした日常の演技が披露される。
それに対して俳優が演じる演技は違う。与えられた状況下で自分とは全く異なる人間を人生を演じるわけだ。
この芝居は、そうした俳優としての演技に魅せられた4人が、その演技力を武器に再び同じ舞台で一世一代ともいうべき演技を披露するという物語だ。
映画「スティング」の主題歌にのって次第にコンゲームにはまり込み熱中する4人の悲喜劇、そして最後のどんでん返しも鮮やかに幕を閉じた。
彼らの芝居は終って日常が残る。その日常はきっと大変なのだ。
演者が真剣になればなるほど、客席の笑い声が大きくなる。良質のコメディである。
出演者はいずれもハマリ役に見えた。
この劇団の層の厚さを示す。
公演は24日まで。
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