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« #4一之輔・文菊二人会(2016/4/6) | トップページ | 不破哲三『スターリン秘史―巨悪の成立と展開(6)~朝鮮戦争の真実~』 »

2016/04/09

「たとえば野に咲く花のように」(2016/4/8)

鄭義信 三部作 vol.2『たとえば野に咲く花のように』
日時:2016年4月8日(金)13時
会場:新国立劇場小劇場 THE PIT
< スタッフ >
作=鄭義信 
演出=鈴木裕美
<    キャスト    >
大石継太/伊東諭吉:「エンパイア」店主 
ともさかりえ/安田(安)満喜:「エンパイア」店員 
黄川田将也/安田(安)淳雨:その弟 
池谷のぶえ/珠代:「エンパイア」店員  
小飯塚貴世江/鈴子:「エンパイア」店員 
猪野学/菅原太一:「エンパイア」の客、海上保安庁の船員  
山口馬木也/安部康雄:「白い花」オーナー 
石田卓也/竹内直也:「白い花」支配人 
村川絵梨/四宮あかね:安部康雄の婚約者 
吉井一肇/李英鉄:活動家

【あらすじ】
舞台は朝鮮戦争のさなか、1951年の福岡の港町にある寂れたダンスホール「エンパイア」。中央にダンスフロアがあり、両側のテーブルで女性店員がアルコール類を提供する。2階には寝室があり、彼女たちはホステスであり踊り子でもあり時には男性客も取る。
そこには戦争で失った婚約者を想いながら働く満喜と、珠代、鈴子の3人が働いている。客は殆んどいなくて、海上保安庁の船員である菅原太一が足繁く通ってくる程度だ。そんな店の状況に店主の伊東諭吉だけが頭を悩ましている。
満喜の弟・淳雨もこの店に同居している。姉弟は朝鮮人で、淳雨が戦争中憲兵をしていたため朝鮮に戻れず、差別の中で職もないまま革命運動に関わっている。
そうした中、表通りに出来たダンスホール「白い花」のオーナー安部康雄と支配人の竹内直也の二人が店に飛び込んでくる。「白い花」に火炎瓶を投げた犯人がここに逃げ込んだというのだ。もしかしたら淳雨の仲間かも知れない。家探しした直也が犯人を見つけるが取り逃がしてしまう。
そんな騒動の中、満喜を一目見て康雄が恋に落ちる。しかし康雄には戦前からの婚約者・四宮あかねがおり、あかねは康雄に結婚を迫る。
ここから劇はいくつかの恋模様を中心に展開してゆく。
康雄は満喜に結婚を迫るが満喜は拒否。
その康雄にあかねが結婚を迫るが康雄は拒否。
そのあかねに直也が恋心を抱く。
珠代は常連客の太一と相思相愛。
鈴子は淳雨に恋愛感情を抱く。
こうした恋模様が、朝鮮戦争の激化を背景に朝鮮戦争による特需や日本(特に北九州)の米軍前線基地化、それに反対する暴動、海上保安庁による朝鮮半島の機雷掃海、太平洋戦争におけるガダルカナル島の悲惨な状況とその傷跡といった当時の世相と絡めて舞台は進行して行く。
果たして彼ら彼女らの恋の行方は・・・。

芝居は朝鮮戦争下での在日朝鮮人が置かれた状況、片方では皮肉にも特需の恩恵を受ける人もいれば、米軍の軍事行動を阻止するために反体制運動に加わり過激な行動を起こす人もいた。
海上保安庁が米軍に協力し、本来は禁止されていた機雷の掃海の任務にあたり、数十名の犠牲が出ていたという件も採りあげられている。
太平洋戦争でガ島のように大きな犠牲が出た戦場で、生き残って生還した人たちが心に負った傷が描かれている。
ただ、それらが深く突っ込まれておらず、表面的に処理されているきらいがある。例えば淳雨が革命運動に身を投じながら、その運動を放棄した過程は描かれていない。
恋人がガ島で戦死したと思われる満喜が、そのガ島で自らが生き延びるために瀕死の日本兵士から食糧を奪った事を告白した康雄の求愛を受け容れた理由が不明確だ。
終幕は大団円になるのだが、康雄のフィアンセのあかねや部下の直也の運命がどうなったのかが示唆されていない。もしかして彼らの犠牲の上に満喜と康雄の幸せがあるのではと、後味の悪さが残った。
そのため、全体としては「風俗小説」風な印象が否めない。
もし同じ作者の『焼肉ドラゴン』を先に見てなければ評価は違っていたかも知れないが、あの作品を見た後では厳しい評価にならざるを得ない。

出演者では珠代役の池谷のぶえの演技が素晴らしい。あの当時の水商売の女性の姿を彷彿とさせていた。
四宮あかね役の村川絵梨の狂乱ぶりも真に迫っていた。私が康雄だったら彼女の愛の方を採っただろう。
他では、大石継太と猪野学の軽妙な演技が光る。

公演は24日まで。

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