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2016/04/07

#4一之輔・文菊二人会(2016/4/6)

第4回「春風亭一之輔・古今亭文菊 二人会」
日時:2016年4月6日(水)18時30分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・林家たま平『道灌』
古今亭文菊『締め込み』
春風亭一之輔『くしゃみ講釈』
~仲入り~
春風亭一之輔『近日息子』
古今亭文菊『明烏』

ここんとこ1日置きにこの会場に来ている。人形町までの定期券でも買おうかな。
さて、一之輔のキャッチコピーにしばしば「鬼才」が使われている。先日の落語会でもさん喬が「鬼才、一之輔」と言っていた。
鬼才、辞書で調べるとこうある。

【鬼才】人間のものとは思われぬほどのすぐれた才能。また,その才能をもつ人。 〔同音語の「奇才」は世にも珍しいすぐれた才能のことであるが,それに対して「鬼才」は人間とは思われないほどのすぐれた才能をいう〕
その優秀さが正統的な部分から外れる場合に多く用いる。そうでない場合は奇才や機才を使用する。

いくら何でも一之輔の才能が「人間離れ」しているとは思えず、「その優秀さが正統的な部分から外れる」方に該当していると考えるべきか。
これに対して文菊の芸は「正統」そのものだ。楷書体の芸と言ってもいいだろう。余計なクスグリを入れず古典を真っ当に演じ、話芸の力だけで聴かせるタイプだ。
反面、高座に上がった時の姿をいかに綺麗に見せるかに神経を払っている。高座に上がる時の歩き方、お辞儀、羽織の脱ぎ方、高座からの降り方など、常に観客の眼を意識していると思われる。
それから、これはアタシの勝手な推測にすぎないが、女性修行は文菊の方が場数を踏んでいると思う。

たま平『道灌』、根岸の4代目、落語界の江戸家猫八。いずれ落語も一子相伝になるのかね。

文菊『締め込み』、ドジな泥棒が親方から説教され空き巣に行かされる所はカットし、その代り普段は途中で切ることが多い後半のサゲまで演じた。
このネタの主人公は泥棒だが、聴かせ所は風呂敷包をめぐる夫婦の痴話喧嘩だ。この家の女房のお福、泥棒が糠味噌をかき回していないと指摘したように家庭の中のことを細々するタイプじゃなさそうだ。器量が良くて人付き合いのいい女房の様だ。だから風呂敷包を見た亭主が即座に男と駆け落ちすると推測したのだろう。夫婦喧嘩の場面では、お福が二人の馴れ初めを語り、男が包丁を片手に「ウンと言うか、さもなければ出刃包丁で刺す。ウンか出刃か、ウン出刃か」と結婚を迫る所が山場。
文菊の描くお福は、ちょいと婀娜っぽく可愛らしい女で、これじゃ亭主がヤキモチを焼くのも無理はない。早合点の亭主や間抜けな泥棒の造形も良く出来ていた。

一之輔『くしゃみ講釈』、以前はオリジナルの上方版と東京版との別れていたが、今では東京の噺家も上方版で演じている。一之輔もそう。このネタを掛けるにあたって、一つは講釈の稽古、もう一つは覗きカラクリの語りの稽古が必須だろう。東京で3代目金馬がこのネタを得意としていたのは、金馬が一時期講釈師をしていて本職に近かったからだ。
一之輔は講釈もカラクリもあまり上手くなかった。それでもこのネタを高座に掛ける勇気は、正に「鬼才」の面目躍如。

一之輔『近日息子』、上方のネタを東京に移したもので、戦後は3代目桂三木助の独壇場だった。筋に大きな違いはないが、上方の場合長屋の住人が悔やみに行く前に知ったかぶりをする男を別の男が咎める場面が入る。例えば洋食屋に入って男が、「焼けたさかいソース持って来い」を「焼けたさかいホース持って来い」と言い間違えたために、店員が火事と間違え店じゅうにホースの水を掛けてしまった、と言うようなエピソードが挟まれる。余談だが現役では上方の桂文華が絶品です。
一之輔はこの部分を上方の演じ方に倣って、独自のクスグリを入れていた。先日の『人形買い』でもそうだったが、一之輔はこうした上方落語の演じ方を採り入れるのが上手い。

文菊『明烏』、古典に忠実な演じ方ながら、時次郎の初々しさや茶屋の女将の色気の表現はさすが。翌朝の花魁にもててすっかりふやけた時次郎と、振られてすっかり腐った源兵衛と太助の対比も鮮明に描いていた。疑問なのは、時次郎の敵娼(あいかた)である浦里の名前が最後まで出なかったことだ。想像だが、お床入りの前の所で「そんな初々しい若だんななら、ワチキの方から出てみたい」と浦里の方からお見立てになるという箇所を抜かしてしまったのではなかろうか。この噺のタイトルが『明烏』だから、浦里の名は省けない筈だ。この点が惜しまれる。

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コメント

いわゆる抜擢真打、しかもイケメンっていうやつですね。
『明烏』は細面の演者に限ると思っておりますが、
現在、上手いのは三三、柳朝、文菊。
申し分ないですね。
時次郎に似てなきゃ、リアリティーが出ないと存じます。

福様
時次郎を中心にすればこの3人はその通りでしょう。一方、源兵衛と太助中心だと別の名前、例えば雲助、喜多八が上がります。

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