« 平成27年度花形演芸大賞受賞者 | トップページ | 新聞の「株式市況」欄ってムダじゃねえの »

2016/04/02

「夢一夜~一之輔・夢丸二人会~」(2016/4/1)

「夢一夜~一之輔・夢丸二人会~」
日時:2016年4月1日(土)18時45分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
柳家小多け『子ほめ』
春風亭一之輔『人形買い(序)』
三笑亭夢丸『干物箱』
~仲入り~
三笑亭夢丸『アンケートの行方』
春風亭一之輔『百年目』

小多け『子ほめ』、なにしろ小三治の前座名が「小たけ」で同じ読みなんだから、期待大だろう。学習院大出だそうだが、もはやどこの大学卒だろうと驚かない。先代の枝太郎が学卒だった所から「インテリの枝太郎」と呼ばれていたのが嘘のようだ。落語家の社会的地が上がったのか、大学のレベルが下がったのか。
小里んの弟子だ。
そう言えば1昨年末ごろに喬太郎が弟子と取ったという情報が流れたが、あれはどうなったんだろう。どなたかご存知の方がいたら教えてください。

一之輔『人形買い(序)』、こういうネタも一之輔の手にかかると中身は変容してしまう。内容は大きく3つに分かれる。
1.長屋の住人の初節句の祝いに五月人形を二人で買いに行く。5円を集金したのだが人形を4円で買って1円浮かせ冷奴で一杯呑もうという算段だ。買い物下手の人間が女房の勧めで買い物上手の人間に同行を願い、人形店の若旦那と交渉して10円の人形を4円にまでまけさせる。ここまでの所を一之輔は『壺算』風に演じる。
2.人形は2種類あり、長屋の住人に意見でどちらかに決めるという段取り。2つの人形の包みを背負って店の小僧が二人についてくるのだが、この小僧が大変なおしゃべり。この人形は実は一昨年の売れ残りで処分に困り、だんなが「店に出しておけばどこかの馬鹿が引っかかって買っていく」といった代物だった。悔しがる二人。おまけに小僧は若旦那と女中との情事までしゃべり始める始末。この部分は本来の『人形買い』に沿って一之輔は演じていた。
3.ここから噺が急に変わる。片方の男がすごい恐妻家で、怖ろしい女房の行状を語り出す。女房の言いつけで焼き豆腐を買いに行かされ間違えて里芋を買って帰る。怒った女房は男に灸をすえ、熱がると井戸端にひきづって行き頭から水を浴びせる。冷たいと言うとまた灸をすえ、熱いと言うと井戸で水を浴びせる。これを繰り返しているうちに男が、「ああ、買い物は焼き豆腐だった」でサゲ。この部分は上方落語の『船弁慶』から持ってきたものと思われ、一之輔はここで切り。後半の2つの人形を長屋の易者と講釈師に見せて選んで貰い初節句の家に届けるという箇所は全てカットしていた。
恐らくこのネタを初めて聴いた人はこういう筋なんだろうと納得し、一之輔の仕掛けに気が付かなかったのではなかろうか。それほど自然に演じていた。
そして、オリジナルよりこっちの方が面白いのだから、お見事としか言いようがない。

夢丸『干物箱』、マクラで落語家は時には1000人以上の会場で演じることもあれば、数十名という寄席で演じることもある。こういう演芸は落語しかないと言っていたが、その通りだろう。小朝クラスがホール落語だとギャラが100万円という話をきいたことがある。でも寄席なら数千円だろう。珍しい業界ではある。
ネタに入って、若旦那に身代わりを頼まれた善公が2階に上がってからの弾けぶりが良かった。夢丸は以前のしゃべり急ぐという傾向が改まり、着実に腕を上げている。きっとこの会が良い刺激になっているのだろう。

夢丸『アンケートの行方』、後席の時間配分が夢丸10分、一之輔35分となっているので変ったネタをと。当代の枝太郎の創作で、サラリーマンの父親と小学生の男の子が、それぞれ会社と学校から出されたアンケートを取り違えて提出してしまう騒動を描いたもの。
突っ込み所満載のストーリーだが、夢丸のテンポのよい運びで客席を沸かせていた。

一之輔『百年目』、冒頭の番頭が小僧に小言をいう場面で『百年目』と分かり、おおっと思った。このネタはある程度の年になった大看板が演じるというイメージがあるからだ。上方では米朝が極め付け、東京では圓生の独壇場だった。あの志ん朝でさえ、このネタの出来は良く無い。
噺の主人公は番頭の冶兵衛だが、難しいのは寧ろ大旦那の演じ方だと思う。大旦那の語る昔話から察すると冶兵衛が40歳位とすれば大旦那は60歳近いと推定される。偶然に番頭の派手な遊びを見てしまった大旦那の心の動き、番頭への肚の見せ方、こうした描写が出来るのは演者がある程度の年齢に達していないと難しいのだと思う。
だから一之輔の様な若手が高座にかけるのはかなりの冒険だと思ったのだ。一之輔は2階に上がった番頭が眠れずウトウトとして、自分は小僧に格下げ、小僧が番頭に格上げされた夢を見て、眠りから覚めると早朝に店の前を掃除し始めるという箇所を加えた程度で、ほぼ圓生の演じ方を踏襲していた。
全体として若さ(大旦那も番頭も若く見えてしまう)という制約はあるものの、良い出来だったと思う。

ベテランの味わいのある高座ももちろん魅力だが、伸び盛りの若手の高座もまた楽しい。女性も噺家も相手を選り好みしない事にしてるんです、アタシは。

|

« 平成27年度花形演芸大賞受賞者 | トップページ | 新聞の「株式市況」欄ってムダじゃねえの »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

人形買い、そうとうなものですね。
聴きたかったな。

投稿: 佐平次 | 2016/04/03 10:00

佐平次様
『人形買い』というネタは演者にとってあまり「儲かる」噺ではないのか、高座にかかる機会が少ない。一之輔流に演じれば短い時間で客席も沸かせることが出来るので、賢い演り方といえるでしょう。
ただ、ここまで来ると改作に近いでしょう。

投稿: ほめ・く | 2016/04/03 11:27

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 平成27年度花形演芸大賞受賞者 | トップページ | 新聞の「株式市況」欄ってムダじゃねえの »