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2016/06/03

「残花―1945 さくら隊 園井恵子―」(2016/6/2)

『残花―1945 さくら隊 園井恵子―』
日時:2016年6月2日(木)19時
会場:座・高円寺1
原案:上田次郎 
作・演出:詩森ろば
<  キャスト  >
林田麻里:園井恵子(さくら隊員)
福本伸一:丸山定夫( 同上 )
ザンヨウコ:仲みどり( 同上 )
大石憲:槇村浩吉( 同上 )
畠山泉:島木つや子( 同上 )
庄崎真知子:笠絗子( 同上 )
熊坂理恵子:小室喜代( 同上 )
酒巻誉洋:八田元夫(さくら隊演出)
竹鼻優太:高山象三(さくら隊演出助手)
坂元貞美:佐竹昭夫(元さくら隊員)/袴田清吉(園井恵子の父)/菊地善五郎(愛真館亭主)
万理紗:吉田雅子(岩手タイムス記者)/袴田みよ子(園井恵子の妹)

1913年8月6日に岩手県で生まれた園井恵子は、宝塚少女歌劇団(現・宝塚歌劇団)に入団。その後、新劇の劇団「苦楽座」に籍を移し、映画『無法松の一生』の未亡人役で一躍脚光を浴びる。太平洋戦争が始まると「苦楽座」は解散し、彼女は移動演劇隊「さくら隊」に参加。各地で公演活動を行うが、空襲が激しくなってきて、劇団疎開と現地での慰問活動のためとして昭和20年に広島行きが命じられる。広島に原爆が投下された運命の8月6日は園井恵子の誕生日でもあったのだが、宿舎が爆心地に近かったため、その場にいた「さくら隊」の隊員は園井を含めて全員が死亡。
この悲劇は多くの著作で紹介され、映画化や舞台化もされている。
このテーマを題材にしたこまつ座の井上ひさし作『紙屋町さくらホテル』が 7月に再演される。
本作品の原案は岩手放送の上田次郎がドキュメンタリー『夏のレクイエム』で、岩手県出身の詩森ろばが戯曲化したもので、ほぼ詩森ろばのオリジナルと言って良いと思われる。
本作品は岩手出身の園井にスポットをあてたもので、開演後の最初の場面が岩手県内の温泉旅館で「さくら隊」が『獅子』を稽古する場面であり、本興行が岩手県からスタートしているなど郷土色が強いのは、岩手県からの文化発信を意識したものと思われる。
園井恵子が宝塚のスターの地位を捨てて、敢えて新劇の世界に飛び込んだ理由を「人間を演じたかったから」というのは説得力がある。
園井が占い師から「広島へ行くと火事にあう」と言われ、広島行きを逡巡するのは実話だ。
『紙屋町さくらホテル』との大きな違いは、被爆後のさくら隊員たちの姿を克明に描いている点だ。一瞬にして命を奪われた者もいれば、数日経てから亡くなった者もいる。特に園井の様に被爆からしばらくは元気で、傷口にマーキュロを塗って治療していたのが、ある日から急に病状が悪化し、苦悶のうちに死んでゆくのだが、放射能がいかに恐ろしかを如実に示している。
さくら隊のリーダーであり名優として夙に知られた丸山定夫が死の床で玉音放送を聞き、「もう10日早けりゃ」と言うセリフには胸を打たれる。その通りで、もう10日終戦が早ければ沢山の人の命が助かったのだ。「聖断」なんて有り難がってる場合じゃないのだ。
園井も丸山も、また元気になって再び舞台に復帰することを最後まで夢見ていた。その無念さは計り知れない。
東京に辿り着いたものの体調が極度に悪化し、自ら東大病院に入院した仲みどりは、その死後、医学上認定された人類史上初の原爆症患者となった。たまたま所用で広島を離れていて死を免れた隊員が、お前は大した役者じゃなかったが、これで名を残したじゃないかというセリフは、悲劇性を際立たせていた。
劇中で仲みどりを見舞いに行くのは佐竹昭夫となっていたが、これは佐野浅夫の事ではないかと思うが、どうだろうか。
舞台で表現するのはかなり難しいと思われた隊員たちが被爆から死を迎えるまでを描いた本作品は、高く評価されて良い。
椅子の移動だけで場面転換を行った演出も手際が良かった。
主演の林田麻里を始めとする出演者たちの演技は、そのひたむきさが伝わってきた。

公演は5日まで。

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コメント

仲みどりさんを病院に見舞いに行ったのは、ご指摘の通り、佐野浅夫さんに間違いないようです。

次のサイトで、2007年の追悼会における佐野さんのお話の内容を確認することができます。

http://www.photo-make.jp/hm_4/sakura_23_2.html

小言幸兵衛様
作品全体はフィクションですが、大事な部分は実話に基づいています。仲みどりの見舞いについては大事な部分ですので、ここは事実を尊重して欲しかった様に思います。

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