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2016/06/23

【書評】『戦争するってどんなこと? 』その2(「兵士の仕事」「原爆投下」「難民」)

「兵士の仕事」は人を殺すこと
日本では戦争というと国のために死ぬとか、命をかけるというイメージで捉えられることが多い。太平洋戦争では沢山の兵士が死んだので、その時の体験からそう考えるのだろう。
しかし、と著者はいう。兵士の仕事は人を殺すことだと。著者は3年間海兵隊の任務につき、予備役を含めれば10年間兵士としての訓練を受けてきたが、死ぬ訓練を受けたことは一度もない。もし死ぬとすれば、それは失敗したか、訓練が足りなかったか、運が悪かったからだ。
他の組織と違って軍隊の特徴は人を殺すことだ。だから兵士の仕事も人を殺すことになる。
しかし、人間は「殺せ」と命令されても簡単には人を殺せない。したがって相手を殺せるように、殺すことに対する抵抗を乗り越えるための訓練を行う。
先ず、相手を憎む訓練が行われる。相手が人間以下と考えられれば殺しやすくなる。相手を動物に例えるとか、悪と決めつけるとか。
2007年にイラクで、ロイター通信社のカメラマンとスタッフ十数人が、米軍のヘリコプター攻撃によって殺害されるという事件があった。この時の映像がウィキリークスによって公開された。
それによると、市街地を歩くイラク人数名が歩いていて、その中に武器を持っていると思われた人が一人いた(実際には武器ではなくカメラだったのだが)。ヘリの兵士は通信で本部に「撃ってよい」という了解を得て銃撃し、ほとんど皆殺しにする。生き残った一人の負傷者が道路脇にはっていこうとしていると、ワゴン車がきて怪我人を車に乗せようとした。そこを更に銃撃して、その人たちも撃ち殺してしまった。
銃撃のあと、全員が動かなくなったのを確かめたヘリの兵士は、「おお、みんな死んでる、ナイス」と言っている。
後から到着した米軍の装甲車が遺体の上を通ったら、ヘリの兵士たちは「いま遺体を轢いてる」「本当に?」と言って笑いあっていた。
彼らだって普通の市民だ。だが遺体に対する尊厳とか、遺体を踏みつけるのが異常だという感覚が失われている。そういう精神状態にならないと、戦争はやりにくいのだと著者は語っている。
戦場での兵士は「人を殺す」ことのストレスに加え、「殺されるかも知れない恐怖」「仲間が殺される」といったストレスを何重にも抱えることになる。
第二次大戦後のアメリカの研究によれば、兵士が連続して60日間戦場にいると、98%の人が精神に何らかの異常の兆候が出るという結果が得られている。だから米軍の兵士は60日を超えないように一定の期間、休暇を取らせることにしている。ベトナム戦争での休暇先はタイであり、日本の沖縄だった。

米国政府が原爆投下を謝罪しない理由
戦時国際法では兵士以外の民間人を殺傷することを禁じている。しかし飛行機が戦闘の主体になるにつれ状況は一変する。その範囲が武器や資材を運ぶ人たち(兵站、日本政府は「後方支援」と呼んでいるがマヤカシだ)への攻撃も許されるようになる。さらに拡大して武器や弾薬を作っている所なら爆撃してと良いとなった。
次の段階は、人が住んでいる所はどこでも空爆して良いとなり、やがて住民が住んでいる街を空襲すれば、そこに住んでいる人たちが政府に戦争を早くやめるよう圧力をかけるので、結果的に被害は少なくてすむという理屈になってきた。
アメリカが広島と長崎に原爆を投下したのは人道的だとしている論拠はここにある。アメリカは現在もこうした考え方をしている。
もし原爆投下を謝罪したなら、それは二度と核兵器を使わないと約束したことになる。これでは抑止力にならない。相手に使うかも知れないと思わせないと、抑止力が生まれない。謝罪しないのは、米国の軍事戦略上できないからだ。
米国に限らず核兵器を保有している国はすべて、軍人や民間人の区別なく皆殺しにするという覚悟を持っているということになる。

なぜ大量の「難民」が生まれたか
現在の戦争は人の生命を奪うだけでなく、多くの人の生活をも奪っていく。人が住んでいる場所が戦場になると、そこに住んでいた人たちの故郷と生活基盤も奪われる。人々は住む場所も仕事も学校もすべて失い、自立して生きてゆくことが出来なくなる。これらの人びとを「難民」と言う。
第二次大戦後に起きた最初の大規模の「難民」は、「パレスチナ難民」だ。イスラエルによって故郷を追われたパレスチナ難民の数は、現在までに470万人にのぼっている。この人たちは世代を超えて70年近くも難民として生きることを余儀なくされている。
現在も世界各地の紛争地域で難民は生まれ続け、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、その数は4520万人に達している。単純に計算すれば世界の155人に一人が難民ということになる。
UHNCRの活動資金は各国の自発的拠金によって賄われているが、活動資金3520億円のうち63%しか集まっていない(2012年実績)。
私から言わせてもらえば、難民を生んだ原因を作った国が負担すりゃいいじゃないかと思うのだが、そうなってはいないようだ。

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