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2016/06/24

【書評】『戦争するってどんなこと? 』その3(「沖縄の米軍基地」)

米国の植民地としての沖縄
戦後の米軍占領下の1951年に、日本は連合国(但しソ連、中国などは不参加)との間でサンフランシスコ講和条約を締結(発効は1952年)するが、同じ日に「日米安保条約」を結ぶ。両条約はセットとなっており、安保と引き換えに講和条約を結ばされたのは明らかだ。もちろん、米軍の占領下だったので、いずれの条約も「押しつけ」である。いま改憲を主張する人々が「押しつけ憲法」を叫ぶが、不思議なことに彼らが「サンフランシスコ体制」や「安保条約」を押しつけだと非難するのを聞いたことがない。安保が憲法をも超える超法規であるにも拘わらずだ。
安保条約により、アメリカは「望む数の兵力を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利を確保」(ジョン・フォスター・ダレス)した。

一方の講和条約では、沖縄を米国施政下に置くことにし、沖縄は引き続き米軍の占領状態が続く。米軍は沖縄の住民から強制的に土地をとりあげ、次々と基地を建設してゆく。1972年に沖縄が日本へ復帰するまでの27年間は、アメリカの植民地扱いだった。
アメリカにとって沖縄は、戦利品だったわけだ。
土地を奪われた農民たちは生きていけない。さすがに見かねた米軍は世界に沖縄の人たちの受け入れ先をさがし、南米のボリビアだけが移民の受け入れ可能と分かると、500世帯単位で移住させた。しかしボリビアでは山を切り開いて畑を作らねばならず、とても惨めな生活を強いられる。彼らはアメリカからも日本からも見捨てられた「棄民」に等しい。
かくして沖縄は日本全土の0.6%しか面積の所に、74%の米軍基地が集中するという今日の事態に至った。

日本の植民地としての沖縄
2013年の朝日新聞の世論調査では、日米安保条約を支持する人は81%だった。一方、憲法9条は変えない方がいいと答えた人は52%だ。
この結果について著者は、「日本は平和な国と思いたいが、米軍基地がないと不安だ」と思っている人が多いのではと書いている。
もっと言えば、米軍には守って欲しいが近くに米軍基地が置かれるのはイヤだという考え方だ。その人たちにとって、米軍基地の大半を引き受けてくれている沖縄はとても好都合だと映るんだろう。沖縄の基地撤去闘争に対して本土の世論が概して冷たく感じるのも、そのせいだ。
1879年に琉球王国は日本の領土となるが、この時の琉球王は明治政府に対し軍の基地だけは置かないでくれと要請するが、政府は「軍隊をどこに置くかは政府が決める」とはねつけ、結局沖縄に日本軍の基地を作ってしまった。
このセリフ、最近どこかで聞いた気がしませんか?
そう、沖縄で辺野古への移転運動が起きて基地反対派が市長に当選したとき、自民党幹部は「基地をどこに置くかは政府が決める」と言い放った。沖縄に対する中央政府の態度は、明治時代と変わらない。
もし同じことが本土の中で起きたら、政府の態度は違っていた筈だ。
明治時代に沖縄を日本領土とした際には、日本の宗教を信じるように、日本語をしゃべるように、名前を日本風に変えるようにという「同化政策」が行われた。これは植民地化そのものだ。
植民地支配の要諦はアメトとムチであり、それは現在の日本政府の沖縄に対する態度そのものといえる。
いま「憲法9条を世界遺産に」という運動が進められている。これに対し著者は、安保条約がある限り、沖縄の米軍基地がある限り、日本がアメリカの核の傘の下にある限り、世界からほめて貰えるとは思えないと指摘している。「国の安全を軍事力に頼らない」という9条の精神が、現実とはあまりに離反しているからだ。
私も憲法9条を世界遺産にとか、ノーベル平和賞をという運動には賛成できない。
それは名実ともに9条を実現させてからの宿題とすべきだろう。

『戦争するってどんなこと? 』という本の中の一部を3回に分けて紹介した。本書の中で著者は、憲法9条の完全な実現を終始うったえている。勇気のいることだし、困難もある。しかし、これだけは世界中で出来るのは日本だけなのだ。

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