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2016/06/18

芸協真打昇進披露興行in池袋(2016/6/17)

池袋演芸場6月中席・夜の部「芸協真打昇進披露興行」

前座・三遊亭遊かり『寿限無』
<  番組  >
柳亭明楽『饅頭こわい』
マグナム小林『バイオリン漫談』
三笑亭可龍『こうもり』
桂小文治『粗忽の釘』
Wモアモア『漫才』
神田松鯉『谷風の情相撲』
三遊亭小遊三『六尺棒』
~仲入り~
『真打昇進披露口上』高座下手より司会の可龍、圓馬、新真打3名、松鯉、小遊三
橘ノ圓満『あくび指南』
神田鯉栄『祐天吉松』
三遊亭圓馬『手紙無筆』
東京ボーイズ『ボーイズ』
三笑亭可風『壺算』

池袋演芸場6月中席は、今年5月に誕生した落語芸術協会の新真打、きらり改メ神田鯉栄、橘ノ圓満、可女次改メ三笑亭可風、3名の昇進披露興行。その7日目に出向く。会場は一杯の入り。
芸協の真打披露興行では、落協と異なり全員が毎日出演する。だから、いつ行ってもお目当てが見られるという点が特長だ。この日もそれぞれの高座にファンから温かい声援が飛んでいた。

明楽『饅頭こわい』、お初。滑舌が良くなく噺も上手いとは言えないが、どこか可笑しい。こういう人は得だ。
可龍『こうもり』、若手だが落ちついた高座で口調も明快だ。ネタはアマチュアの落語好きな人が小朝のためにこしらえた新作らしい。
筋は、飲食店の店長がケガをしていたコウモリを助け手当して森に放す。翌日の「あおいちゃん」と名乗る若い女性が店に現れるが、彼女は助けて貰ったコウモリで、恩返しに店を手伝うと申し出る。美人で気立てが良いので店は繁盛。
ある日、店内で客同士が喧嘩を始め、仲裁に入った店長までが殴られて流血してしまう。これを見ていた娘は喧嘩をしている客二人の首筋にかみつき血を吸って貧血で倒してしまう。
折りから急に雨が降ってくると、店長の出血がとまってしまう。
「これぞまさしく、雨降って血(地)固まる」でサゲ。
『鶴の恩返し』と『吸血鬼』を合わせたような作品で、可龍が演じる「あおいちゃん」が愛らしかった。
小文治『粗忽の釘』、粗忽物の大工が隣家に出向いて、肝心の要件そっちのけで、所帯を持った当時のノロケ話を嬉しそうに語る所が良かった。でもこの女房のあの頃の優しさはどこへ行ってしまったんだろう。
Wモアモアや、後半に出た東京ボーイズ、こうしたベテランの色物の人たちが元気な高座を見せてくれたのは嬉しい。落協のベテラン漫才師たちが高齢で亡くなったり病気で休んでいたりと状況を見ると、余計にそう感じる。
松鯉『谷風の情相撲』、元々は講釈ネタだが、今では落語の『佐野山』の方がお馴染みになった。元々相撲はスポーツというよりショー的な要素が強い。公正だなんだと言うが、審判である行司が各相撲部屋に所属してなんて、純粋なスポーツでは有り得ない。大鵬の全盛期には、彼の取組の2番前には必ず呼び出しが土俵上に水を打つことが慣例化されていた。大鵬が最も好んだ土俵の状態を準備していたわけで、これが大相撲の世界だ。
小遊三『六尺棒』、まあ、こんなもんでしょう。

真打昇進披露口上』では、可風の師匠の可楽が休席しているので惣領弟子の(ってたって、二人しかいないが)可龍が代りを務めていた。それぞれの師匠から温かい励ましの言葉が掛けられていたのが印象的だった。最後は小遊三のブラックジョークで締め。
圓満『あくび指南』、52歳の真打昇進はハンディになるかも知れないが、元々この人の芸からすれば、数年前に昇進させても不思議ではなかった。3代続いた江戸っ子で、老舗料理屋の跡取りだったというから、落語を地で行くような人生を歩んできたことになる。かつては落語家の「御贔屓」の立場だったのだ。
夏場の昼下がりにあくびを教えるというのんびりとした世界と、習いにきた遊び人の威勢のいい男との対比が巧みに描かれ、いい出来だった。客席の小さな坊やが大受けしていた。
鯉栄『祐天吉松』、元旅行会社の添乗員だったという。女流ながら男になりきった様な高座スタイル。講談は一声、二調子、三啖呵と言われるが、師匠が言うように声が大きいし何より啖呵の切れが良い。落語界と異なり、講談の世界では次々と有望な女流が生まれている。
演題は三夜連続ものだそうで、スリの世界から足を洗い、堅気の大店の婿養子になった祐天吉松が、昔の仲間に脅され200両もの金を渡してしまう。覚悟を決めた吉松がその仲間を殺害しようとするが、却って逆襲される・・・、と今日はここまで。
元は浪曲で、映画化された程の有名な作品だ。
圓馬『手紙無筆』、新真打の圓満の師匠・橘ノ圓が1昨年死去したため、兄弟子だった圓馬が圓満の師匠となった。真面目くさった顔をして滑稽噺をする、その落差が面白い。
可風『壺算』、経歴が故古今亭志ん馬に入門したものの、4カ月後に師匠が死去して廃業。小笠原でウミガメの調査をしたり、インドやバングラデシュを放浪したりした後に、三笑亭可楽に入門した。昨今は、学校を出て直ぐに入門して芸人になる人が多いが、今回の真打3人はいずれも回り道をしてから入門しているのが共通点だ。でも、そうした経験は必ず芸に活かされる様になる。
可風は、風貌が亡くなった上方の枝雀にちょっと似ている、不思議な雰囲気を持った人だ。マクラで爺さんと婆さんの会話を使ったいくつか小噺を披露したが、これがやたら可笑しい。このマクラで客席をしっかり取り込んでいた。
ネタに入って筋の運びや会話の間が枝雀に似ている様に思われた。なかなか50銭まけてくれない瀬戸物屋の店主に業を煮やした兄いが、子どものころ50銭足りなくて父親に酒を買って帰れず、それが心残りとなって父親の幽霊が出ると言って、50銭まけさせる所が独自か。頭が混乱する店主を上手に描いて客席を沸かしていた。
とにかく不思議な面白さを持った人で、これだけは見て貰わないと分からない。

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