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2016/07/20

柳家三三独演会(2016/7/19)

みなと毎月落語会「柳家三三独演会」
日時:2016年7月19日(火)19時
会場:麻布区民ホール
<  番組  >
前座・立川うおるたー『つる』
柳家三三『万両婿(小間物屋政談)』
~仲入り~
柳家三三『居残り佐平次』

名前の通り毎月開催の「みなと毎月落語会」、7月は「柳家三三独演会」。
この落語会に注文が二つある。
一つは、これほどの規模の会なのにお囃子を呼ばず、出囃子をテープで済ませていること。なんかケチ臭い。お囃子がいないとネタも限られるのに。
もう一つは、出演者に関係なく前座が立川流で、しかも大概は志らくの弟子だ。立川企画が運営しているせいだろうが、不満だ。一考を要する。

三三『万両婿』
『小間物屋政談』のタイトルの方がお馴染みで、圓生の高座が嚆矢。現役の人も圓生に倣っている。元々は世話講談の『万両婿』がオリジナルなので、こちらの演じ方の方がオリジナルに近いのかも知れない。
『小間物屋政談』とは細部にいくつか違いがあり、そこがちょいと引っかかった。

『政談』では相良屋小四郎と若狭屋甚兵衛の出会いが、小四郎が箱根山のあたりで腹の具合が悪くなり森の中へ入って用を足そうとすると、どこからか助けを呼ぶ声がする。近寄ってみると樹木に肌襦袢一枚で縛り付けられている甚兵衛を発見する。事情を聞けば、病の療養の旅の道中追い剥ぎにあったためにこのような仕打ちを受けたと言う。
一方の『万両婿』では箱根路を歩いていた小四郎がいきなり下帯1枚の男に助けを求められる、それが追剥に身ぐるみ剥がされた甚兵衛だった。
後者のケースでは、追剥は目的を達すると直ぐに甚兵衛を解き放ったということになる。しかし、それでは直ちに甚兵衛が後を追いかけたり、大声で追剥の被害を訴えることも可能になる。
ここは前者の様に身ぐるみ剥いだ後は被害者を木に縛り付けて、逃亡の時間稼ぎをするという方が理にかなっている。
また後者で、江戸きっての大店の主人が療養のために湯治に行くのに、供を連れていないというのも不自然だ。
甚兵衛は元々具合が悪いところにもってきて、追剥にあい、更に木に縛り付けられという恐怖(小四郎が見つけていなければ、そのまま死んでいっただろう)から急激に衰弱し、宿で急死したものと思える。
『政談』に比べ『万両婿』のこの場面設定には無理がある様に思う。

『政談』では小四郎が死んだと早合点した大家が、残された女房お時がまだ若い身なので、小四郎の遠戚に当たる三五郎を見合わせ夫婦にするというもの。
これに対して『万両婿』では、大家らが女房のお時に小間物屋の店を開かせ、手が足りないからと三五郎を引き合わせ、その後に夫婦にするという設定だ。
しかし、長屋住まいの小四郎は自分の店を持てないから背負い(しょい)小間物を商っていたと思われる。それが亭主が死んだと分かった途端に、女房がどうやって店舗を開けたんだろう。まさか大家が資金を調達したとも思えぬ。
この部分も、『政談』の方が理にかなっている。
甚兵衛の年齢が60歳という設定もどうなんだろう。
こうして見ていくと圓生の脚色は良く出来ており、完成度が高いことが分かる。

三三の高座は持ち前のテンポの良さで聴かせてくれたが、どうも作品自体の欠点が最後まで頭から離れなかった。
それと圓生の高座と比較するのは酷だが、もう少し人物像を練り上げて欲しいと思った。

三三『居残り佐平次』
三三のこのネタは初。こちらもテンポよく楽しい高座だった。
欲をいえば、中盤からの佐平次はもうちょっと弾けてほしい。
終盤の、喜助相手に「居残り佐平治」を名乗る場面ではもっと凄みが要る。アナーキーな凄みが。
それと座敷で勝つぁんを相手に佐平次が酒を飲む時、最初は杯で飲み始めるというのは変ではないか。杯は勝のものだろうし、ここは常法通り勝にねだって、湯のみに酒を注いで貰い飲み始める方が自然だと思う。

ブログ休載中に永六輔氏、大橋巨泉氏の訃報に接した。
お二人とも青春時代の思い出には欠かせない方だった。
ご冥福をお祈りする。

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コメント

二席とも登場人物が動く、筋のはっきりした噺ですね。
時代劇の元のような。
三三はそのあたりの名手になろうと志しているんでしょうか?

私は最近、新宿末廣亭で『締め込み』を聴きました。すいぶんとかけているそうですが、そのせいか、女房の嘆き台詞が見事で、楽しい高座でした。

福様
三三は2席とも一筋縄ではいかないネタを並べました。1席目は演じ方によっては陰惨な雰囲気になりかねませんが、三三の明るさが救いとなっていました。

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