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2016/08/07

笑福亭鶴二独演会(2016/8/6)

「笑福亭鶴二独演会~噺家生活30周年記念~」
日時:2016年8月6日(土)18時30分
会場:国立演芸場
<  番組  >
笑福亭竹三『手紙無筆』
笑福亭鶴二『ハンカチ』
ゲスト・柳家喬太郎『ハンバーグができるまで』
~仲入り~
『対談』鶴二&喬太郎
笑福亭鶴二『らくだ』

上方落語界の中でも東京で頻繁に会を持つ人は少数で、大多数の人は東京で公演する機会は少ない。笑福亭鶴二もその一人で東京公演は今回が2回目とのこと。6代目松鶴最後の弟子で入門から30周年の会は一杯の入り。わざわざ大阪から来た方も多かったようで、ファンというのは有り難い。

竹三『手紙無筆』、上方落語家ではあるが鶴光の弟子で芸協の二ツ目。上方の噺家が東京で会を開くとき、しばしば前方に芸協の笑福亭を使う。使う側からすれば何かと便利だろうし、本人にとっても勉強になる。一石二鳥。

鶴二『ハンカチ』
30周年記念の独演会では新作1席と大ネタ1席を演じているとのこと。この作品はお笑いコンビ「二丁拳銃」の小堀裕之作とのこと。
倦怠期を迎えた夫婦、妻が誕生日プレゼントのハンカチをねだるが、夫は今さらと言って口げんかになり外出する。友人とぱったり出会うと、いま町内会で夫から妻への愛を叫ぶ大会をしているので出場してくれと頼まれる。参加賞がハンカチと聴いてしぶしぶ大会に出た夫は、最初は妻への愚痴ばかりだったが、次第に感謝の言葉に変わってゆく。家に帰ると、大会の模様がケーブルTVで中継されていて妻は夫の言葉を全て聞いていた。優勝賞品の着物セットを誕生日祝いとして妻に差し出すと、妻は「私はハンカチが欲しかった!」でサゲ。
お互いの感情を素直に表現できない中年夫婦の愛を描いたヒューマンな作品に仕上がっている。作品の中の夫婦がちょうど鶴二と同じ年代ということもあって、笑いの中にジーンとさせる高座だった。

喬太郎『ハンバーグができるまで』
喬太郎の代表作といって良いだろうし、今までに何回聴いたか分からない。続けて当たったりすると又か!という気分にもなったが、久々に聴くと、やはり良く出来た作品だと改めて感じた。
男は45歳。3年前に妻と分かれて今は独り暮らし。決定的な理由があったわけではなく、ちょっとした行き違いから離婚したせいか、男は今でも元妻を忘れることができないでいる。女性の方も分かれた元夫のことは気にかけていたが、新しい恋人もできて再婚することが決まった。電話や手紙でも良かったが、やはり男に直接会って再婚を伝えることにした。もう再び会うことも無いだろうしと、女は男の大好物だったハンバーグを作ることにした。
久々に訪れてきた女に、男は密かに期待する。きっとワクワクする気分でハンバーグができるのを待っていたのだろう。やがて料理が完成し、男は美味い美味いと言って食べ始める。ここで女は再婚することを告げる。しばしの沈黙、男は女に「帰ってくれ!」と言い、女は別れの挨拶をして去ってゆく。
残された男は、ハンバーグの付け合わせに用意されていた大嫌いなニンジンを口にして、「ニンジンって、結構甘いじゃん」。
このストーリーを軸に、男が住む町の商店街の人たちがハンバーグの食材を買い求める男の身の上を心配するというドタバタをからめて、一席にまとめたもの。
テーマが男女の切ないラブストーリーという、従来の創作落語のカラを破った画期的な作品だ。男女二人の微妙な心の変化を描く場面は、落語というよりドラマや映画に近い。
喬太郎はこのネタを演じるごとに細部に変化を持たせていて、この日も会話の「間」の取り方を秒単位で計算したかのような見事な話芸を見せていた。

鶴二『らくだ』
鶴二はたまたま演芸場で6代目松鶴の『らくだ』を聴いて落語家になる決心をしたという思い出のネタ。但し、師匠は入門して間もなく亡くなっていて、以後は兄弟子や他の一門の先輩から稽古をつけて貰ったとのこと。
この『らくだ』も兄弟子の鶴瓶から教えを受けたもの。確かに師匠・松鶴との演じ方とは異なる。例えば主人公の紙屑屋が、地ベタを這い回るような泥臭さより、かつて表通りの奉公人を抱えた店の主人という面影を残している。その分、酔うにつれ変身していく様子が細かに描かれていた。本人は酒で店を潰し裏長屋に引っ込んで紙屑屋になったと言っていたが、事実はそうではあるまい。酒好きだけでは店は潰れない。この人は酒癖が悪いのだ。酔うと人格が変わる。だから酒の上で大きなしくじりをしたのが原因で、ここまで落ちぶれたのだのだと思う。
時間の関係からか部分的にカットした短縮版だったが、このネタの最大のテーマである最下層に生きる人間たちの連帯感が感じられ、良い出来だったと思う。
初見だったが、決して器用な人ではなく、着実に階段を一段一段上ってゆくタイプの人だという印象を受けた。

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