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2016/09/25

シス・カンパニー公演「遊侠 沓掛時次郎」(2016/9/24)

日本文学シアターVol.3【長谷川 伸】『遊侠 沓掛時次郎』
日時:2016年9月24日(土)17時
会場:新国立劇場 小劇場

作=北村想
演出=寺十吾
<  キャスト  >
段田安則=段三(花形座員) 
松澤一之=広岡名水(客演座員)
金内喜久夫=團十郎(座長)
戸田恵子=つた子(座員・座長の女房)
西尾まり=きぬ子(中堅座員) 
鈴木浩介=平治(中堅座員) 
渡部秀=長吉(若手座員) 
萩原みのり=洋子(家出少女)

ストーリー。
ある田舎町の神社の境内に、旅芸人一座の“長谷川團十郎一座”が小屋掛けして、ここでしばらく長谷川伸の股旅芝居の傑作の「沓掛時次郎」を上演する様子。
座員は座長と年下女房、一座の花形座員、客演の座員、その他3名の座員という小所帯だ。しかし、どうやら皆それぞれ曰くあり気な人物の様子。
舞台は無事初日をあけ、幕が下りると舞台は座員たちの生活の場と化す。旅回り一座の宿命だ。
座員たちがくつろいでいる所に一人の少女が訪ねてきて、ここで働きたいという。母子家庭で育ったが母親と折り合いが悪く家出してきたというのだ。
一見するとまとまっている様な座員たちだが、座長は女癖が悪く、座長の女房は他の座員と浮気。段三はインテリだが、学生時代に襲われた恋人のために相手殺してしまい、今はこの一座に身を置いているらしい。松澤一之は学生運動を挫折していて、ひとまず一座に加わっていると自称している。
「沓掛時次郎」の興行が終了する頃になって、座員のきぬ子は結婚のため退座。少女も東京の母の元に帰るということで、同じく東京に向かう広岡名水が実家まで送り届けるとして一座を離れる。
3年後、今では渡世人風の姿になった段三が、かつて一座が興行していた土地の宿屋に泊まりに来る。宿の主人の勧めで若い娘を部屋に招きいれるが、それが洋子だった。一緒に東京へ向かった広岡名水に騙され、洋子に客を取らせて自分はヒモになっていたのだ。段三は自分の過去と重ね合わせて洋子を救う決心をして、広岡に怒りを燃やす。
おりしも、段三が身を寄せている一家の若い衆から、鉄砲玉を頼まれる。一宿一飯の渡世の義理で段三は相手を殺しに行くと、その相手とは広岡名水だった。1対1の決闘の末、段三は広岡に重傷を負わせ、洋子の手を取って去って行く。

一口に言うと、とても良く出来た芝居だった。
内容的には、舞台の上で演じられる『沓掛時次郎』と、段三の実生活における『暗闇の丑松』という長谷川伸の代表作が、相互に絡み合いながら進行してゆく。
形式的にはチャンバラ映画の『股旅物』と東映映画の『任侠シリーズ』、それに加えて作品の底流を流れるのは素九鬼子の映画『旅の重さ』だ。
それらが上演時間90分のこの芝居1本に全てまとめられていて、北村想の才能には舌を巻く。
極上のエンターテイメントと言っても過言ではなかろう。

出演者では主演の段田安則が断然いい。やや細身なのが気になるが、舞台での颯爽とした殺陣、素に戻った時の影のあるインテリ像、そして最終場面での死を賭して女性を救う凛々しさ、いずれも良かった。
萩原みのりは前半の初々しい少女から後半の夜の女に身を落とした姿、初舞台とは思えぬ出来だった。
脇では西尾まりが、段三に心を惹かれながら思いが届かず、神主の息子と結婚してゆくのだが、幸せの絶頂で不幸を予感させていた演技が印象に残る。
広岡役の浅野和之が休演だったのが惜しまれる。

公演は10月2日まで。

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