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2016/09/22

「小満ん・馬石・文菊 三人会」(2016/9/21)

第2回文京らくご会「小満ん・馬石・文菊 三人会」
日時:2016年9月21日(水)19時15分
会場:文京シビックセンター小ホール
<  番組  >
前座・桃月庵はまぐり『子ほめ』
隅田川馬石『火焔太鼓』
~仲入り~
古今亭文菊『笠碁』
柳家小満ん『素人鰻』

落語の楽しみにベテランの円熟した芸と、上り坂の若手の勢いのある芸がある。その両方を楽しめたのが、この日の「小満ん・馬石・文菊 三人会」だった。

馬石『火焔太鼓』
馬石という人はどこか捉え所がなく、フワフワした感じなのだが、ネタに入ると独特の味があって面白い。古い太鼓を小僧にはたかせる時に、主人と小僧が交互にはたく。殿様の家来が店に来ると、最初は主は小僧が叩いたと言い訳をするのだが、殿様が気に入ったからと言うと途端に「あたしも叩いたんです」と言い出す。太鼓が300両で売れて50両ずつに包が渡されると、主人が両手で持ってその感触を確かめてから感激するという演じ方も理にかなっている。300両を懐に入れて女房の前に出ると、出っ張った懐をゆすりながら自慢するのも独自の演り方と思われる。
細部に様々な工夫が見られた一席。

文菊『笠碁』
噺家には見るたびに上手くなってるなと感じられる若手がいるが、文菊はその最右翼だろう。クスグリを入れたり、受けを狙った改変をするでもなく、真っ直ぐに演じてこれだけ沸かせるという技術は大したものだ。
碁の一目待ったをする時に、盤面と相手の顔を七三に見ながら待ったを迫る表情が巧みだ。どうしてもこの一目を外させたという切実な気持ちが伝わってくる。相手が待ったに応じないと分かると、今度は居直って昔の貸金の件を持ち出すまでの「間」がいい。
相手の男が雨の中を出かける時にすげ笠をかぶるのだが、この笠の寸法が本物に近かった。近ごろの噺家はすげ笠を見たことがないらしく、みな笠の大きさが小さ目だ。あれでは雨よけにはならない。こういう点が文菊は優れている。
もう一方、こちらも退屈で困ってるのだが、店先で奉公人たちに細かなことまで叱りつける事でイライラぶりを示していた。
相手が雨の中を店先で行ったり来たりするのを目で追いながら、こっちを見ろというサインとして顎を細かにしゃくって見せていた。
最近では出色の『笠碁』だった。

小満ん『素人鰻』
このネタには二通りあり、一つは黒門町が十八番としていた「神田川の金」という酒乱の職人が登場する型。もう一つは鰻裂きの職人がいない留守を狙って店を訪れ、ただで鰻をせしめようとする型で、通常は『鰻屋』のタイトルで演じられる。寄席などでは後者の型で演じられるケースが圧倒的だが、小満んはむろん前者だ。
小満んのマクラで幕末の黒船来航から維新になって武士階級が廃止され、士族となったこと。これに伴い、士族は無収入になったので、何か職に就かねばならなくなり、手っ取り早く商売を始めると殆どが失敗ばかり。間に入った人間に良い思いをさせたという例が絶えなかったことが語られる。このマクラは、『素人鰻』の大事な背景で欠かせない。
小満んの高座では、先ず神田川の金の造形がいい。腕のいい職人で人あたりも上手で商売にはもってこいだが、欠点は酒乱。客から酒を勧められて飲み始める時は腰が低く、相手を立てる。それが飲むにつけ酔うにつけ、段々と乱れてきて仕舞いには暴言を吐き始める。この刻々とした変化を描くのが難しいのだが、小満んは見事だ。畳にこぼした酒を口で吸い上げ、手についた酒は頭や顔に塗りつける。こうした所作によって、金の酒好きが巧みに表現されている。
金が店に戻らず、やむなく元武士の主が鰻裂きを試みるのだが、これがまるで果し合いの様なセリフを連発する。
サゲは文楽の型でなく、主が鰻を追いかけてどんどん上にのぼって行き、姿が見えなくなるとやがて1通の手紙が奥方に。
「去年(こぞ)の今日鰻と共にのぼりしが いまに絶へせずのぼりこそすれ」
両手が使えないのに、どうやって手紙が書けたのか不思議がると、裏書に「手を離す暇がないので、代筆させた」でサゲ。
先代文楽を彷彿とさせるような小満んの高座、結構でした。

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コメント

アタリが続きますね。
やはり勤勉でなくちゃダメかな。

佐平次様
「下手な鉄砲 先ず撃ちゃ当たる」の典型です。

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