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2016/09/13

鈴本演芸場9月中席・昼(2016/9/12)

鈴本演芸場9月中席昼の部・2日目

前座・柳亭市若『金明竹』
<  番組  >
三遊亭美るく『転失気』
鏡味仙三郎社中『太神楽曲芸』
春風亭正朝『目黒のさんま』
三遊亭歌武蔵『大安売り』
柳家紫文『三味線漫談』
柳家はん治『妻の旅行』
桂吉坊『寄合酒』
江戸家小猫『ものまね』
桂藤兵衛『そば清』
─仲入り─
ホームラン『漫才』
古今亭文菊『高砂や』
三遊亭歌奴『初天神』
林家二楽『紙切り』
蝶花楼馬楽『二十四孝』・寄席の踊り『深川』

鈴本演芸場9月中席昼の部はトリと中トリが久々で、上方から吉坊がゲスト出演することもあり、2日目に出向く。
入りは良いとはいえないが、月曜日の昼にしてはまあまあか。ただ常連は少なかったようだ。 仲入りまでに携帯の音が3度鳴り響いたり、口演中に会話する人がいたり、途中で席を立つ人がいるなど、総じてこの日の客のマナーは良くなかった。
寄席だからあまり厳しいことは言いたくないが、最低限のマナーは守ってほしい。

美るく『転失気』、セリフはまだ良いが、地の語りになると噺家のしゃべりになっていない。
正朝『目黒のさんま』、軽く流していたが、押さえる所は押さえての高座。サゲの近くで携帯の着信音が高く、かなり鳴り響く不運はあったが淡々と語り続けた。
歌武蔵『大安売り』、正朝が下りた後で場内アナウンスの注意があり、歌武蔵も冒頭で携帯を切るよう確認したにも拘わらず、この後2度も携帯の音が鳴り響いた。神経が分からん。高座は相撲ネタの小噺で終わる。
紫文『三味線漫談』、この人の芸を評価するのだが、声だけは頂けない。三亀松、枝雀や紫朝など、かつて男の音曲師は美声が揃っていただけに、よけいに感じる。
はん治『妻の旅行』、桂文枝の新作。定年を過ぎた父親の所に息子がやってきて、お袋が旅行に出かけると親父が愚痴るので気分が悪いと嘆いていた。もっと気分良く送り出してやれと父親に助言する。
父親が言うのには、定年になって二人で家にいるようになって気が付いたのだが、とにかく母親が口うるさい、小さなことまでいちいち口出ししてきて息が詰まる。おまけに料理が不味く、一緒にいると疲れるばかりだ。だから旅行に出かけて留守の時が、一番ホッとする。
息子は、それなら機分よく送り出してやればいいじゃないかと言うと、父親は、それが違うのだと、以前、喜んで行ってこいと送り出したら、留守になんか企んでいるのでしょうと途端に不機嫌になってしまった。だからわざとグチグチ言って送り出すのだと。息子は、夫婦の間は深いと納得。
場内から笑いが多かったのは、身につまされて人が多かったということ。長い間夫婦をしていても、定年になってから初めて分かることも多い。そした機微を描いた秀作。
はん治は古典より新作向きだ。
吉坊『寄合酒』、結論からいえば受けなかった。
・この日の客層とはミスマッチ。アウェイ感が強かった。
・吉坊のしゃべる標準的な関西弁が、客に聞き取りづらかったと思う。意味がよくつかめないまま終わったという感じだったのではないか。
このネタは東京でもしばしば演じられるが、大きな違いは鯛を調理する場面があることだ。犬がくわえていた鯛を奪ってまな板の上で捌き始めるが、その犬が近くにきて唸り声をあげる。調理している男は気が気ではない。仲間に相談すると、「犬に食らわせろ!」と言われる。犬をどつけという意味だったのだが、男は勘違いして鯛の肉を犬に食わせてしまうという筋だ。
アタシはこのネタを笑福亭松之助で観ているが、見台をまな板に見立て、扇子を包丁に見立てて、鯛の尻尾や頭を切り落とす時に小拍子を叩いて音で表現していた。犬に放り投げると犬がくわえて去るのを見送り、ヤレヤレという表情をすると、直ぐにまた犬が戻ってくる。この繰り返しに場内が沸くのだが、吉坊は高座の床でこの動作をしていて、恐らく多くの人は何をしているのか分からなかっただろう。客席からの反応が薄かったのも、このためと思われる。
こうした見せ方の工夫も課題だろう。
小猫『ものまね』、研究熱心さが高座に現れている。
藤兵衛『そば清』、いつもながら、江戸前のスカッとした高座だ。こういうネタは、こう有りたい。
ホームラン『漫才』、絶好調。
文菊『高砂や』、語りにやや硬さが感じられるのが弱点だが、芸は本寸法。古典を真っすぐに演じてこれだけ客席をつかめるのは、大した資質だ。
歌奴『初天神』、客席を明るくし、ワッと沸かせて下がる。寄席にはなくてはならぬ噺家だ。
二楽『紙切り』、「出雲大社」で苦戦。
馬楽『二十四孝』、珍しく最後のサゲまで聴けた。若干いい淀みがあったり、二十四孝の郭巨と呉猛の名前を入れ違ったりというミスはあったが、面白さは伝わった。
おまけの踊りの『深川』、結構でした。寄席で踊る人はいるが『かっぽれ』や『奴さん』が大半だ。やっぱり粋な踊りはこの『深川』、久々に見られて良かった。

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コメント

はん治はよくかける「ぼやき居酒屋」も文枝作ですね。

よく聞くのが以下のくすぐり。
「あんたたち、女房に新聞とって来い、なんて言える?おれは言えるよ。」
「そして、『自分でとってきなぁ~』って言われる。」
以上、本当に独特の口調です。

投稿: 福 | 2016/09/13 20:09

福様
はん治は見かけ古典向きに見えますが、新作落語で本領を発揮するタイプだと思います。熟年男の悲哀の表現が上手い。

投稿: ほめ・く | 2016/09/13 22:07

老いたヤクザを演じる判事も老判事、笑う私はもっと老いてました。

投稿: 佐平次 | 2016/09/14 10:48

佐平次様
はん治が演じる登場人物に共感が得られるのは、観客が同世代だからかも知れません。
「玉子ばかり食わせやがって、俺はミネソタの生まれじゃねえ」というギャグは、ちと古過ぎました。

投稿: ほめ・く | 2016/09/14 11:37

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