#21東西笑いの喬演(2016/10/15)
第21回東西笑いの喬演「三喬・喬太郎 二人会」
日時:2016年10月15日(土)18時
会場:国立演芸場
< 番組 >
森乃石松『動物園』
笑福亭三喬『月に群雲』
柳家喬太郎『ついたて娘』
~仲入り~
柳家喬太郎『家見舞い』
笑福亭三喬『質屋蔵』
この会を主催していた「みほ企画」だが、来年で終了するとの告知があった。他に「さん喬・松喬(現在は一門会)二人会」も同様に10年間続けてこられた努力に感謝したい。こういう良心的な主催者の会がなくなるのは残念だが、致し方ない。
先ず苦言を。
この日の喬太郎の高座だが、せき込んで度々噺が中断していた。声もかすれていたし、本人は頑張ってるみたいな事を言っていたが、こういう状態で高座に上がるのは観客に失礼だ。
他の芸能、例えば芝居やコンサートなどで、こういう状態の芸人を見たことがない。
どうも落語家なんだからという甘えがあるのでは。
最高のパフォーマンスが出来るように体調を整え、無理なら休演しかない。厳しいようだが、そういう気持ちで高座に臨んでもらいたい。
アタシが不思議に思うのは、落語家に愛煙家が多いことだ。しゃべりの商売、声の商売の人がタバコを吸うなんて、理解不能だ。
体調管理、とりわけ声のケアはトークの芸人にとって最も大事なことだと思う。
不養生なんて、自慢にゃなりませんよ。
三喬『月に群雲』
冒頭に小佐田定雄が三喬のために創作した作品と言ってた通り、三喬にピッタリのネタだ。これで三度目だが、いつ聴いても面白い。
盗人と故買商との合言葉が、前者が「月に群雲」というと後者が「花に風」と受ける決まりになっているが、近所の人も知っている。これじゃ合言葉にならない。
間違えて「長崎は」と言うと、「今日も雨だった ワワワ」なんて受けるんだからいい加減なものだ。
故買商の主が「花に風」と答える前に、エヘンエヘンと咳払いしてタバコを一服する、その間がなんとも可笑しい。新米の泥棒が何かというと見当はずれの諺を繰り出すが、兄貴分がそれを咎める間が絶妙だ。
泥棒三喬の面目躍如。
喬太郎『ついたて娘』
大して面白くもないマクラを25分ほど。ネタが短いのと持ち時間が40分もあるので、つないでいると本人が語っていたが、何度もせき込んで見るからに辛そうで、それなら持ち時間を半分にすれば良いのに、と思った。
長く演ることがサービス、ってもんじゃない。
ネタは、小泉八雲の作品『衝立ての娘』を落語にしたもの。
若い学者が骨董屋で見かけた衝立てに描かれた娘にに一目惚れして、買い求めて自宅に飾り毎日眺める。その姿に恋焦がれているうちに病になり、心配した周囲の人たちから衝立ての絵の中から生身の娘を取り出す方法を教わり、その通りに娘が目の前に現れる。学者は大喜びし、来世も含め永遠の愛を誓うというストーリー。
ラフカディオ・ハーンの作品を落語化したという意欲は買うが、およそ面白味がない。
長いマクラのせいもあって、退屈した。
喬太郎『家見舞い』
『肥甕』というタイトルもあり内容ズバリだが、あまり綺麗な名称ではないせいか、こちらのタイトルが使われている。
二人の男が兄いの新築祝いに行き、水瓶を買う約束をしてくるが金がなく、瀬戸物屋の店主とやり合う所までの前半がカットされていて、骨董屋の店先にあった肥甕を担いで兄いの家に向かう後半から始まる。
喬太郎の市販のCDにも収められているが、せき込みによる中断は相変わらずだったが、テンポよく聴かせていた。
三喬『質屋蔵』
マクラで、質屋に預ける質草や金利の仕組みを解説してくれたが、これは親切。アタシもそうだが、今の人で実際に質入れを経験した人は稀だろうから、このネタを理解するためには必要な知識だ。
聴かせ所は、
・質屋の主が番頭に、蔵に預かっている質草に質入れした人の恨みが残り、幽霊騒ぎが起きる可能性があることを例え話で語る場面。
・主人の命令で大工の熊を迎えに行った小僧の定吉が、熊にあることないこと言いくるめて栗を買わせる場面
・蔵の幽霊を見届けるよう質屋に呼ばれた熊が、今まで内緒で店から酒樽や漬物の樽を持ち出していたことを告白してしまう場面。
・蔵を見張る役目の番頭と熊が酔って寝込み、代りに主が見守る中で幽霊が出てくる場面
の4か所だが、いずれも確かな語りで聴かせていた。
こうしたネタは店主の風格を描くのがキモだが、この点も三喬の描き方は優れていた。
来秋の松喬襲名を控え気力も充実しているのだろう、そう感じさせる高座だった。
« 五街道雲助一門会(2016/10/14) | トップページ | 時間稼ぎのマクラは迷惑だ »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 談春の「これからの芝浜」(2023.03.26)
- 「極め付き」の落語と演者(2023.03.05)
- 落語家とバラエティー番組(2023.02.06)
- 噺家の死、そして失われる出囃子(2023.01.29)
- この演者にはこの噺(2023.01.26)
ダラダラ続くマクラをえへらえへら聴く客にも困ったものです。まあ好き不好きと言ってしまえばそれまでではありますが。
投稿: 佐平次 | 2016/10/17 08:44
佐平次様
同感です。つまらないマクラを長々とやられると閉口します。周囲を見て、何が面白いんだろうと腹が立つことがあります。
投稿: ほめ・く | 2016/10/17 09:28