「扇辰・白酒二人会」(2016/11/9)
「通ごのみ~扇辰・白酒二人会~」
日時:2016年11月9日(水)18:30
会場:日本橋劇場
< 番組 >
前座・柳家小たけ『子ほめ』
桃月庵白酒『花色木綿』
入船亭扇辰『ねずみ』
~仲入り~
入船亭扇辰『雪とん』
桃月庵白酒『禁酒番屋』
憧れのアメリカ。
戦争直後『憧れのハワイ航路』という歌が大ヒットしたが、戦後の日本人にとってはハワイは憧れ、ましてアメリカ本土とくれば憧れのそのまた憧れだった。
自由の国アメリカ、民主主義の国アメリカは仰ぎ見るような存在だった。
それから70年有余。
史上最悪と言われた米国大統領選を勝ち抜いたのがトランプだった。
白酒がマクラで大統領選の結果にふれ「バカですね」と言っていたが、そう実感した人も少なくないだろう。
「大統領には誰でもなれますね」、それもその通りだ。今までは大統領に当選するまでにはいくつもの大きな関門があったが、選挙を戦う資金さえあれば誰もがなれる。政治家のキャリアも、知性も、軍歴も要らぬ。
トランプは公約で「アメリカが世界の警察官であることをやめる」「各国の防衛は各国で」というスローガンをかかげた。
それはそれで正論ではあるが、危惧されるのは排外主義とナショナリズムの台頭だ。イギリスのEU離脱や欧州での極右の伸長など、既にその動きは出ている。
日本も安閑としてはいられない。
白酒『花色木綿』、別名『出来心』というタイトルでも演じられるが、この日はこれで。
泥棒に入られたのをこれ幸いと、男は大家から店賃を免除して貰い「お帰りはこちら」。大家に役所に盗難届を出すので盗られたものを言わされる羽目になり、ついつい口からでまかせ。このネタは一つの事でウソをつくと、次々ウソの上塗りをしないといけなくなる羽目に陥るという、人間心理を描いたものだと思う。
人間誰しも経験のあることだから、聴いていて共感を呼ぶのだろう。
白酒は、男が戸惑いながらウソを重ねる表情を巧みに描いていた。
扇辰『ねずみ』、扇辰らしい丁寧な高座だった。特に「ねずみ屋」の主人が「虎屋」を乗っ取られるまでの経緯を感情を抑えながら語る場面が良く出来ていた。
ただ、この人は時々声を裏返らせて奇声を発するのが気になる。メリハリを付けたいのかも知れないが、不自然に感じることがあるのだ。
扇辰『雪とん』、これも扇辰らしい丁寧な高座だった。これは好みの問題だが、こういうネタは粋にスーッと行きたい。やはり志ん生の様な演じ方が正解だと思うのだが。
白酒『禁酒番屋』、マクラで噺家が酒宴の席で芸談を語り合うなんてことは少ないと。特に志ん朝はその手の話題を嫌っていたとか。
アタシも落語家が「落語とは・・・」を語るのが好きじゃない。大事なのは芸談じゃなく、芸談に裏付けられた高座そのものだ。噺家は高座が全てだ。
禁酒番屋へカステラと偽って酒徳利を持ち込もうとした男が、品物を持ち上げる時についつい「どっこいしょ」。番屋の侍から「今、どっこいしょと申したな」と訊かれると「いいえ、ドイツの将校、と」と答える。これじゃますます怪しい。水カステラの商品名を「ゲロルシュタイナー」としたのもドイツつながりだ。
全体にテンポよく、ネタは15分程度で終わらせた。
東京落語は、やっぱりこうでなくちゃ。
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