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2016/11/22

談志まつり2016(2016/11/21夜)

立川談志生誕80周年記念公演「談志まつり2016」第3部
日時:11月21日(月) 17時
会場:よみうりホール
<  番組  >
立川談修『一眼国』
立川談慶『啞の釣り』
立川談笑『イラサリマケー(居酒屋(改))』
立川志らく『洒落小町』
~仲入り~
『座談会』出演者全員、談志『孝行糖』の一部放送あり
立川ぜん馬『黄金餅』
松元ヒロ『スタンダップコメディ』
土橋亭里う馬『禁酒番屋』 

先日『映画 立川談志』をビデオで初めて見た。映画の中で談志の高座として『やかん』『落語ちゃんちゃかちゃん』『芝浜』の3席が入っていた。
談志ファンには叱られるだろうが、それほど上手い人とは思わない。ただ、とても魅力的だ。愛嬌があって可愛らしくさえ見える。
これは落語に限ったことではないが、芸人というのは芸が良い、上手いというだけではダメなのだ。愛嬌、色気、華やかさといったその人の総体が価値を決める。
談志の話に戻るが、他の追随を許さぬという点からすれば『やかん』『源平盛衰記』『相撲風景』、それに『五人廻し』『黄金餅』といった辺りが代表作だと思う。世評の高い『芝浜』は感心しない。

今年は談志生誕80周年ということで、それを記念した「談志まつり2016」が3回に分けて公演された。その第3部に出向く。
お目当ては立川ぜん馬だ。石松の三十石じゃないが、立川流で上手い人といえば一番はぜん馬だろう。しばらく高座を観ていなかったので、この会に行くことにした。

立川談修『一眼国』、立川談慶『啞の釣り』、立川談笑『イラサリマケー(居酒屋(改))』は、取り立てて言う事なし。

志らく『洒落小町』
マクラで先日と同じTV出演を話題にしていた。なんのかんのと言っても本人は嬉しそうで、決して悪い気はしていない様子だ。
この演目は演じ手が少なく、寄席でもめったにお目にかかれない。それだけ演者に力量が求められるのだろう。
筋は、やたら喧しい女房のガチャ松が、亭主の浮気を止めるために隠居のアドバイスに従って愛想を良くして、地口(駄洒落)で亭主を和ませるというもの。
志らくの高座ではこの地口に独自の工夫がなされ、いかにもこの人らしさが出ていた。
またネタの中で隠居が、在原業平の妻・井筒姫の詠んだ「風吹けば沖津白波たつ田山夜半にや君が一人越ゆらん」や「雨乞い小町」の故事でお松を諭すのだが、なかなかの教養人だったと見える。
一方お松の方も、出かける亭主の背中を見て咄嗟に浄瑠璃「葛の葉子別れ」の中の「恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信田の森の恨み葛の葉」が口に出る。してみると、この女性はさほど愚か者だったわけではなかったか。あるいはこの一説がそれだけ当時の人口に膾炙されていたのか。

中入り後に生前の立川談志の亡くなる2年前の高座『孝行糖』の一部が紹介された。初出しということで談志ファンには貴重な録音だったか。
出演者による座談会で司会が「これからの立川流」と言ったら、志らくがすかさず「流れ解散!」と応じていた。半分本気かな。
各人の談志の思い出は、この一門では日頃の高座でのマクラや著作で紹介されているものが多く、特に新しい話題はなかったようだ。

ぜん馬『黄金餅』
2014年にガンの手術をして現在も抗がん剤の投与を受けているようだ。本人によれば5年後の生存率が数%という厳しい状況とのこと。声が出にくくなっていて、声が出る限りは高座を務めたいと語っていた。
このネタは落語には珍しいほど金に執着する主人公を描いたもので、それも焼骨した遺灰の中から金を取り出すという凄まじいもの。
「江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ」なんて粋がっていたのは職人連中、いうなれば中流の町人だ。
この噺に出てくる人物たちだが、舞台の下谷山崎町は貧民街でどうやら被差別部落の人々が多く住んでいたようだ。
金に心が残り、遂には餅にくるんで飲み込んで死んでゆく西念の実態は物乞いだ。金山寺味噌売りの金兵衛も、恐らくは同様の身分だったに違いない。
彼らからすれば、この環境から抜け出すには金しかない。
他の登場人物である麻布絶口釜無村の木蓮寺の和尚や焼場の隠亡、いずれも階級制度からはみ出した様な人物ばかりだ。
江戸時代の社会の最下層に生きる人々の凄まじい生きざまを描いた稀有な作品といえる。
ぜん馬の高座では、西念が汚い袋をあけて一分銀、二分銀を取り出し、餅にくるんで一つずつ苦しみながら吞み込んでゆく悲壮な姿を描く。
次いで金兵衛、西念の死骸を樽に詰めたものを一人で担いで麻布から桐ケ谷まで歩く姿と、焼骨後の生焼けの遺体を包丁で切り裂き銀貨を取り出して懐に1枚1枚入れてゆく姿には、爽快さえ感じてしまう。
渾身の一席、結構でした。

松元ヒロ『スタンダップコメディ』
この日はヒロポン節全開だった。永六輔が皇后から招待されたのを天皇制反対だからと断ったエピソードや、文化勲章も同じ理由で断ったことなどが紹介され、自分も天皇制には反対だと語る。
皇室の民営化では、皇居をテーマパーク化してと色々なアイディアを披露。このネタは談志が好きで自分の独演会でもやれやれと勧められたとのこと。TVでも放映されたことがあるが、昭和天皇の蝋人形を作り地中に埋めて、それを探すゲーム「戦争犯罪人を探せ」という部分だけはカットされてしまったそうだ。
今どきこうした過激とも思えるネタを舞台で披露できるのはこの人しかおるまい。貴重な存在だ。

里う馬『禁酒番屋』 
先ず、酒好きの侍の造形が良い。自分の小屋へ寝酒用に1升届けろという無茶な要求をする武張った人物として描いていて、酒屋も承知せざるを得なかったのだ。
番屋の侍もそれなりに威厳があって、その後の落差が効果的だ。
番屋の侍が酒を口にする前に香りをかいで、愛おしそうに湯呑を見てから飲むという姿が良いし、口にした後で同僚の侍に顔を向けて嬉しそうにする表情も巧みだった。
ぜん馬や里う馬の高座を見て感じるのだが、立川流の若手たちもこうした先輩の丁寧な高座を見習ってほしい。

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コメント

天皇制の内包する矛盾をついたらいいのですが。

投稿: 佐平次 | 2016/11/24 09:22

佐平次様
松元ヒロは天皇制は全ての差別の根源だから反対だと語っていました。永六輔から「9条を頼む」と言われ、「芸能人9条の会」を立ちあげたとも。
コメディアンの舞台としてはギリギリの線だったと思います。

投稿: ほめ・く | 2016/11/24 09:48

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