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2016/12/20

恵比寿ルルティモ寄席2016(2016/12/19) 

「恵比寿ルルティモ寄席2016 supported by 渋谷道玄坂寄席」
日時:2016年12月19日(月)19時
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール
<  番組  >
前座:省略
三遊亭兼好『ねずみ』
春風亭一之輔『文七元結』
~仲入り~
桃月庵白酒『二番煎じ』
橘家文蔵『芝浜』
(全てネタ出し)

人気と実力を兼ね備えた若手4人がトリ根多の長講に挑むという趣向の落語会。
休憩を除いて3時間に及ぶ熱演が繰り広げられたが、中身は色々課題も見られた。

兼好『ねずみ』
最近の兼好の高座を見ていると、芸域を拡げようとして努力しているのが感じられる。
兼好のこのネタでは、いくつか通常と異なる演出が行われている。
・「鼠屋」の主人が向かいの「虎屋」を追われるまでの身の上話を、卯兵衛の仲間である「生駒屋」に語らせる。
・甚五郎が彫ったネズミが動き回るのを最初に発見したのも生駒屋。
・生駒屋が甚五郎と知らず、仙台には腕のいい職人が沢山いるので、しっかり修業するよう勧める。→最後に謝罪。
通常では脇役の生駒屋が大活躍するのが兼好の演じ方だ。
しかし、どうなんだろう。卯兵衛の身の上話は本人がするから聞き手が感情移入できるので、第三者を介する演り方は感心しない。
また、セリフの「間」が微妙にずれる場面が何ヶ所かあったのも気になった。

一之輔『文七元結』
一之輔がこのネタを演じたらきっとこうなるだろうと予測していた、その通りの出来だった。
全体として完成度が高く、佐野槌、吾妻橋、近江屋、達磨横町の長兵衛宅、それぞれの場面もソツなく描いていた。
ただ、これは一之輔に限らず若手がこのネタを演じる時の共通点と言えるのだが、長兵衛の造形に問題がある。長兵衛はおそらく年齢は40代、動かす金から判断すると左官職の頭になるような人物と推定される。こういう男が博打にこり、挙句は借金まみれのスッテンテンという状況。
江戸っ子を気取っていても、内実は長兵衛は惨めな中年男だ。
だが若手が演じると、どうも長兵衛が若くなってしまう。吾妻橋でも長兵衛と文七は親子ほど年が違うはずだが、ヤリトリを聴いていると、それほどの年齢差を感じさせない。
そこが惜しまれる。

白酒『二番煎じ』
白酒のこのネタも通常の演じ方と異なる。
・通常は夜回りを二つの班に分けるのだが、白酒の高座では一班だけだ。
・宗助は夜回りには加わらず、一人番小屋で留守番をするが居眠りばかりしている。
・夜回りのメンバーに一人大阪人を入れている。
・半ちゃんの吉原での夜回りの時のノロケ話にかなりの時間を割いている。
キズとしては番小屋での宴会が盛大過ぎる。ここは密かな楽しみが次第に大胆になってゆく様にした方が良いと思う。

文蔵『芝浜』
文蔵のこのネタは2度目だが、前回に比べさらに完成度が上がっていた。最初は女房に騙されて断酒し仕事に励むのだが、魚勝が次第にその仕事自体が生きがいになってゆく様も丁寧に描写されていた。
最近聴いた『芝浜』でもかなりの高レベルだったと思う。
ただ根本的な問題として、このネタはこれほどの時間をかけて演じるような代物だろうかと思ってしまうのだ。
前日の朝に体験した出来事を、翌朝になって夢だ夢だと言い立てて納得させる筋に無理がある。実際の出来事には様々な痕跡が残っており、勝五郎からすればいくらでも反論できる筈だ。前日の朝の勝五郎はシラフだったのだ。
だからこの落語はメルヘンなのだ。メルヘンをメルヘン風に演じた3代目桂三木助の演じ方が正解だ。
文蔵の様にリアリティを持たせてしまうと、夢だ夢だという嘘に勝五郎が騙されるという所が不自然になってしまう。

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コメント

ただ変えればいいというものでもなさそうですね(兼好)。
二番煎じ、二班に分けないとわざわざ番小屋で待つ意味が無くなる?慰労懇親ですか。
それなら鍋を担いで歩かなくてもいいような気がする。

投稿: 佐平次 | 2016/12/21 10:31

佐平次様
兼好、白酒ともこの改変は感心しません。特に白酒の改変は、ストーリーの辻褄が合わなくなっています。普通に演じても十分に聴かせられる腕は持っているんでしから、勿体ない。

投稿: ほめ・く | 2016/12/21 15:17

記事を拝見していると、実験落語とでも言う注文が主催者からあったかのような改変ばかりですね。
たしかに、落語は生き物であり、噺家さんによって違う演出、解釈があってもよいでしょうが、肝腎な部分を変えない勇気も必要でしょう。

とはいえ、そのへんは、なかなか難しい。
この四人はまだ若い。
いろいろ悩んで大きくなっていただきましょう!

投稿: 小言幸兵衛 | 2016/12/21 17:49

小言幸兵衛様
兼好の『ねずみ」でいえば、虎屋が乗っ取られた経緯を主本人が語るのを聴いて甚五郎がネズミを彫ることにしたのであって、第三者からの証言では重みが違います。
白酒の『二番煎じ』は辻褄が合わなくなり、ストーリーが破綻しかけています。
変えてはいけない所を変えてしまった感があります。

投稿: ほめ・く | 2016/12/21 20:27

二班が巡回している間にずるをするところが面白い味わいでもあるのにね。

投稿: 佐平次 | 2016/12/22 09:16

佐平次様
このネタは二班に分けて片方が巡回している間に密かな宴席を持つ所が主題なので、一班だけになると別のストーリーになってしまいます。
やはり無理な改変です。

投稿: ほめ・く | 2016/12/22 13:06

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