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2016/12/03

柳家小三治独演会(2016/12/2)

「柳家小三治独演会」
日時:2016年12月2日(金)18時30分
会場:銀座ブロッサム
<  番組  >
柳家三之助『黄金の大黒(序)』
柳家小三治『馬の田楽』
~仲入り~
柳家小三治『宗論』

師走恒例の、銀座ブロッサム(中央会館)での小三治独演会。
スタイルはいつも同じ、前方に弟子の真打を出して本人が2席演じる。前座がいないようで、真打が高座返しやめくりをする珍しい会だ。

三之助『黄金の大黒(序)』
三之助、適度に噺は上手いし押し出しも良いのに、なぜか寄席にはあまり顔づけされない。何故だろう? 本人の意向なんだろうか。
独演会は全国各地で精力的に開いているようだが、この時期に寄席で揉まれないと将来に響くと思うのだが。
ネタは、長屋の連中の演じ分けも十分で調子よく進んでいたが、終りにミスが出ていた。後から小三治も指摘していたが、いくら「序」とはいえあまりに突然切り上げた演り方は感心しない。
名前では”いちのすけ”より上で”しのすけ”の直ぐ下の位置なんだから、頑張って欲しい。

小三治『馬の田楽』
マクラで終戦後、一家7人がバラック小屋で暮らしていて、台風で屋根が飛んでしまったと言っていた。1939年生まれなので終戦後の記憶があるのだろう。焼け野原になった近くの空き地で両親が野菜を蒔いて、その畑仕事の手伝いをしたとも。
ある時、近くに荷馬車を引いていた馬が突然倒れ、傍らにいた馬方が「死んじゃいけねえ」と言いながら馬の体をさすっていたのを鮮明に憶えていると語り、ここから本題へ。
師匠小さんの十八番だったネタ。江戸っ子が一人も出てこない点で珍しい噺といえよう。
小三治の高座は、馬方、店主、子ども達、茶屋の婆さん、百姓、吃音の男、そして最後に出てきてサゲを言う酔っぱらいの虎十といった多彩な人物をきちんと演じ分けていた。
この噺の舞台は、山間部の農村地域だろうと思われるが、そうした長閑な雰囲気も良く出ていたし、馬方の口は悪いが馬への一方ならぬ愛情も表現されていた。
いかにも小三治らしい緻密な高座だった。

小三治『宗論』
マクラで一昨日フランスから帰国したと言うと、驚きの声が客席から上がったが、今どき落語家が海外に行くのはちっとも珍しいことではない。娘さんと同伴というから私用だったのだろう。
同じ機内にラグビーの日本代表選手と乗り合わせ、彼らの体格や食いっぷりを紹介した後、江戸時代の深川不動での寒行の話題に移る。
真冬に井戸の周囲に集まり、頭から水をかぶる。男はフンドシ一丁、女は腰巻に上半身は薄い木綿の肌着という姿。この肌着が水に濡れると肌にピッタリくっつき、これが何とも色っぽい。男の中にはちょっかい出す奴もいて、お上が敷居を設けて男女を別にしたら、途端に男の参加者が激減したという。
ここからネタに入る。
この噺を聴くたびに思うのは、キリスト教団体から抗議が来ないもんだなということ。ここで描かれるクリスチャンの息子の姿は狂気としか思えない。あるいはキリスト教の中でも特殊なカルトだろうか。これでは父親も心配になるわけだ。
通常は、息子が扇子で拍子を取りながら讃美歌を歌うのだが、小三治はさらに扇子を振りながら、息子が町内の皆さんに教団の集会参加を呼び掛けるオマケ付き。
父親が怒って息子を殴りつけるのも無理はない。

また来年も来ようっと。

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コメント

小三治が元気で嬉しいことです。
三之助は真打になったときは注目していたのですが、自ら注目の外に出て行っちゃいましたね。

投稿: 佐平次 | 2016/12/03 11:23

小三治は、代表選手の名前やラウンジ、エコノミーといった言葉が出てこないのですが、ネタに入るとさすがで緻密な高座でした。
まだまだ元気ですし、ひと頃より寄席に出る回数も増えたようにも思えます。

投稿: ほめ・く | 2016/12/03 11:41

「宗論」は益田太郎冠者が作った準古典、だとか。
演じ手によっては「お気にさわる方がいらしたら、あらかじめお詫び申し上げます」と断ってから語ります。
権太楼、玉之輔で楽しい一席ですが、小三治となると想像もつきません。
貴重な高座なのかもしれませんね。

投稿: 福 | 2016/12/04 07:38

福様
小三治は1席目はマクラを振りながらネタを選んでいたようでしたが、2席目のネタは予定していたと思います。
『宗論』、故人では8代目春風亭柳枝、現役では三遊亭遊雀を買っていますが、小三治の弾けぶりも見ごたえがありました。

投稿: ほめ・く | 2016/12/04 09:40

小三治の『宗論』は、数年前に松戸まで独演会に行った時に聴いたネタです。『馬の田楽』は末広亭で出会っています。どちらも、長講ではありませんが、十八番に入るのではないでしょうか。

実は、先ほどテニスの合宿から帰ったのですが、昨夜の余興の落語の中の一席は、小三治の音源を元に『子別れ』の「下」(『子は鎹』)に挑戦し、結構仲間に楽しんでもらえたようです。
聞き手は玄能を知っている年齢層です。
結局短い『睨み合い』(彦いち作)と『二人癖(のめる)』と合わせて三席、独演会でした^^

投稿: 小言幸兵衛 | 2016/12/04 15:49

幸兵衛様
スケ無しで独りで3席とは、本物の独演会ですね。『子は鎹』が受けたならそれは相当な力量です。幸兵衛さんの記事を読むと、やはり自分が演じる立場で書かれていて、そこは弊方とは雲泥の差を感じます。

投稿: ほめ・く | 2016/12/04 17:59

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