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2016/12/09

「ヘンリー四世 第一部‐混沌‐」(2016/12/8)

「ヘンリー四世 第一部‐混沌‐」
日時:2016年12月8日(木)12時
会場:新国立劇場 中劇場

脚本:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
演出:鵜山仁
<  キャスト  >
中嶋しゅう:ヘンリー4世(イングランド国王)
浦井健治;皇太子ヘンリー(別名ハル)
佐藤B作:騎士フォールスタッフ(皇太子の遊び仲間)
ラサール石井:キャッズヒル(同上)
有薗芳記:ポインズ(同上)
水野龍司:居酒屋の主人
那須佐代子:その妻クイックリー
*************************************************
立川三貴:ノーサンバランド伯
岡本健一:その息子ヘンリー・パーシー(別名ホットスパー)
藤側宏大:モーティマー
木下浩之:オーウェン・グレンダワー
勝部演之:ヨーク大司教
ほか

新国立劇場では、シェイクスピアの歴史劇の中では異色として知られている『ヘンリー4世』を、1部2部に分けて上演している。
ヘンリー4世の王権をめぐる闘争、ハル王子の王位継承への葛藤と成長を主題に、ハルの遊び仲間として自己の欲望のままに生きるフォールスタッフを配した芝居だ。
その第一部「混沌」を12月8日に観劇。

国王だったリチャード2世から力づくで王位を簒奪し、ランカスター朝を開いたヘンリー4世。正当な継承者ではなかったため、謀反の動きに悩まされる。
その一方で長男の皇太子ハルは仲間とともに放蕩三昧。特にフォールスタッフはハルの遊びの指南役ともいうべき遊び人で、一緒に旅人を襲っては奪った金で飲み打つ買うの自堕落な暮らし。国王もこれには頭を痛めている。
かつてヘンリー4世を王位につけるために奮闘したノーサンバランド伯らがその後冷遇されたのを恨み、息子ホットスパーを中心にモーティマーやグレンダワーらと同盟し、王位を奪うべく挙兵する。
知らせを聞いたヘンリー2世は和睦を申し入れるが反乱側に拒否され、王子ハルを指揮官にして戦いを開始する。人が変わったように勇敢に戦うハルの奮闘により戦は優勢となり、ハルはホットスパーとの一騎打ちを制して最終的に勝利する。

しかしこの劇の主人公は国王でも皇太子でもなく、飲んだくれのフォールスタッフだ。架空の人物で、享楽的で自分本位。常に自分の地位を守るために神経をすり減らす王侯貴族とは異なり、惰眠を貪る人物として描かれている。
「名誉ってなんだ? 言葉だ。その名誉って言葉になにがある? その名誉ってやつに? 空気だ。結構な損得勘定じゃないか。」とフォールスタッフは語る。
ハルの要請にこたえて出陣。小隊長として指揮をとるが危ない所は部下に行かせ、自身は戦場を逃げ回り、敵に倒されそうになれば死んだふりをして身を守る。
シェークスピアはこの芝居で、フォールスタッフに庶民の姿を代表させているようだ。

タイトルからするとシェークスピアの歴史劇というお堅いイメージがあるかも知れないが、中身は喜劇だ。役者も時に客席の人に話しかけたり、客席に座って居眠りをしたりと、サービス満点である。
厳めしい国王と放埓な皇太子の対比は、まるで落語に出てくる商家の主人とその放蕩息子の姿を見ているようだ。
お笑いあり活劇ありのエンターテイメントとしても単純に楽しめる舞台となっている。

出演者では佐藤B作の存在感が圧倒的だ。彼がこれほど上手い役者とは知らなかった。
皇太子ハルを演じた浦井健治の爽やかな演技と、敵役のホットスパーを演じた岡本健一の熱演が光る。
「第二部-戴冠-」の感想は、また後日に。

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