ここにも教育格差が
月刊誌「図書」2016年12月号に、「北海道ブックシェアリング」代表理事をしている荒井宏明氏が、北海道の小学校図書館の惨状について書いている。
札幌の隣町にある市立小学校で、学校図書館に並んでいる本がどれもひどく痛んでいて、半分以上は背表紙がはがれタイトルの判別さえできない。
中から一冊の本を取り出すと図鑑だったが40年も前に出版された本だ。
百科事典には「西ドイツの首都はボン」と書かれ、地図帳にはソ連がのっている。これでは図書館で勉強するほど間違った知識を身につけることになる。
閲覧机はなく、会議室用テーブルにパイプ椅子が並べてあるだけだ。これでは本の魅力も読書の楽しみも伝わってこない。
道内には週に数時間しか利用できない「開かずの学校図書館」が多いのもムベなるかなだ。
北海道では一般書店の閉店もあいつぎ、道内179市町村のうち約50が無書店自治体となっている。子どもから大人まで、本を手に取る手段が失われているのだ。
同じ北海道でも札幌の学校図書館は、蔵書数や図書更新の充実のみならず、学校図書館地域開放制度といった全国でも先進的な取り組みをしている。
先ほどの隣町とは雲泥の差だ。
先の小学校校長は生徒に「本が好きな子は進学で札幌に行って好きなだけ読め」と言ったこともあるそうで、悲しい現実としかいい様がない。
こうした状況は北海道だけでなく、おそらく全国の多くの地方自治体が抱える問題だろうと推測される。
なぜ学校図書館が地域によって大きな格差が生まれたのか。
その理由は、かつて学校図書の購入費は補助金扱いだったので、生徒の規模に応じて公平に配分されていた。
それが現在は地方交付税扱いになり、地方自治体の裁量で増減の措置が取られる。
財政状況が厳しい自治体だと、図書の購入費が削減されてしまうのだ。北海道のケースだと措置率が、文科省の指針の半分以下になっている。それも先進的な札幌を含めての数字なので、他の自治体は推して知るべしだ。
少なくとも義務教育である小中学校では、全国どこでも公平な教育環境が担保されるべきだ。
財政が厳しい地域の学校では、まともに学校図書を購入できないといった状況は即座に解消せねばなるまい。
その主たる原因が財源の問題であるなら、以前の補助金制度に戻せばよい。
文科省の役人たちは、一体この問題をどう考えているのだろうか。
« 恵比寿ルルティモ寄席2016(2016/12/19) | トップページ | #40大手町落語会(2016/12/24) »
「教育」カテゴリの記事
- 不登校と子どもの居場所(2023.10.05)
- 「ひろゆき」の世間知らずの思い込み(2023.08.18)
- 「孟母三遷の教え」は本当です(2022.10.10)
- ヤングケアラーって、不幸ですか?(2022.04.10)
- 授業より大切なこと(2021.05.15)
コメント
« 恵比寿ルルティモ寄席2016(2016/12/19) | トップページ | #40大手町落語会(2016/12/24) »
同感です。
文科省の役人は当然だと思っているのでしょう。
教育破壊はこいつらが元凶の一味です。
投稿: 佐平次 | 2016/12/24 09:40
佐平次様
子ども達の教育環境を保つのが文科省の最大の責務です。そういうことは放置しておいて道徳教育の押し付けに狂奔している。
連中の頭はおかしい。
投稿: ほめ・く | 2016/12/24 18:35