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2017/01/13

初めての新派「華岡青洲の妻」(2017/1/12)

初春新派公演「華岡青洲の妻」四幕
日時:2017年1月12日(木)15時15分
会場:三越劇場
有吉佐和子・作
齋藤雅文・演出
<  主なキャスト  >
於継:水谷八重子
華岡青洲:喜多村緑郎
加恵:河合雪之丞
小陸:波乃久里子
於勝:甲斐京子
ほか

雑食系なもので、様々な演劇分野を観てきたが、新派と宝塚だけは今まで縁がなかった。両方ともTVの舞台中継は何度か見ていてヅカにはおよそ魅力は感じないが、新派は一度観てみたいと前から思っていた。
本当は花柳章太郎らの名優が揃っていた時期が一番良かったのだろうが、見逃してしまった。
現在の新派は水谷八重子と波乃久里子の二人を柱にしているようだが、この日もさして大きな会場でないにも拘わらず空席が目立ち、人気の低迷が窺われる。
客層も年配のご婦人が多い。
昨年は、歌舞伎の先代猿之助の弟子から市川月乃助を移籍、数十年ぶりに2代目喜多村緑郎の名跡を復活させた。
今月からは同じく市川春猿を移籍、河合雪之丞を襲名させた。河合は新派創設時の名優「河合武雄」から採り、雪之丞は猿翁から許しを得たというもので、いかに力を入れているかが分かる。
こうしたテコ入れが奏功し、若い観客をどれだけ惹きつけられるかが大きな課題だろう。
  
華岡青洲は、江戸時代の外科医。記録に残るものとして、世界で初めて全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を成功させた。
麻酔薬の開発を始める。研究を重ねた結果、曼陀羅華の実(チョウセンアサガオ)、草烏頭(トリカブト)を主成分とした6種類の薬草に麻酔効果があることを発見。動物実験を重ねて、麻酔薬の完成までこぎつけたが、人体実験を目前にして行き詰まる。
実母の於継と妻の加恵が実験台になることを申し出て、数回にわたる人体実験の末、於継の死と加恵の失明という大きな犠牲の上に、全身麻酔薬「通仙散」を完成させる。
その後、近隣の女性に全身麻酔を使った乳癌の摘出手術を成功させる。
彼の名を一躍世間に知らしめたのは有吉佐和子の小説『華岡青洲の妻』がベストセラーになったからで、この芝居はその小説を戯曲化したもの。

あらすじは、新派のHPより下記に引用。
江戸時代後期、紀州にある華岡家。
代々、貧乏ながらに志を持って医業に勤しむ家柄で、当主の青洲も三年前より京都で修行の身。
留守を預かるのは、青洲の母・於継に、妹・於勝と小陸、そして近郷の名家・妹背家から嫁いできた加恵で、遊学中の青洲に仕送りをするため、女たちは毎日機(はた)を織ることに余念がない。
加恵の慣れない様子にも優しく言葉をかける於継―二人の仲は人も羨むほどの睦まじさだ。
そんなある日、青洲が突然京都から帰ってくると、様子が一変する。まるで加恵の存在などなかったかのように、青洲の身の周りの世話をする華岡家の女たち。
実の母娘以上の結びつきすら感じていた加恵は戸惑い、於継に焦がれていた想いは変化して―姑と嫁、二人の間に目には見えない争いが起きていた。
最新の医学を学んで帰ってきた青洲は、曼陀羅華(チョウセンアサガオ)を主薬とする麻酔薬の研究と乳癌手術の可能性に執念を燃やしている。
麻酔薬完成のためには人体による実験を残すのみとなったとき、於継と加恵は競って自らの身を捧げると言い出した――。

青洲の妻・加恵は、当初は青洲の母・於継に憧れて嫁入りし、夫が不在のうちは二人とも仲良くやっていた。処が、夫が帰宅した途端に状況は一変し、嫁姑は険悪になる。二人の女が一人の男を取り合うという、今も続く永遠のテーマだ。
二人の意地の張り合いは、やがて麻酔薬の人体実験をどちらが先に受けるかを争うまで先鋭化する。
二人の間柄は、最終的には嫁が姑を心から許すという結末になるのだが、それは姑の死を経てからだ。つまり、そこまで行かないと決着しない。
劇中で、青洲が医師でありながら二人の妹の命を救えなかったり、麻酔薬の実権で母を死なせ妻を失明させてしまった苦悩が描かれる。
だが、嫁姑の対立に青洲がどこまで真剣に悩み、解決しようとしていたのかは描き切れていない。

八重子と雪之丞が演じる嫁姑の火花を散らすごとき嫉妬のせめぎあいが見所。八重子が息子の前に出ると可愛らしい女に変貌する姿はさすがだが、声のかすれは聞いていてかなりキツイ。
雪之丞は新婚当初の初々しい嫁の姿から、年月を経るうちに次第に変わってゆく姿を演じて好演。貴重な存在となるだろう。
青洲を演じた祿郎は、やや一本調子のセリフが気になった。もう少し演技に陰影が欲しいと思ったが、或いはそういう役柄なのか。
青洲の妹を演じた久里子、京子はいずれも熱演で、他の脇役陣も堅実な演技を見せていた。

公演は23日まで。

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