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2017/01/25

彦六由縁落語会(2017/1/24)

八代目林家正蔵師没後三十五年「彦六由縁落語会」
日時:2017年1月24日(火)18:45
会場:日本橋社会教育会館
<  番組  >
前座・春風亭一花『やかん』
春風亭一之輔『啞の釣り』
橘家文蔵『天災』
桂藤兵衛『首提灯』
~仲入り~
八光亭春輔『松田加賀』
春風亭一朝『中村仲蔵』

8代目林家正蔵(彦六の正蔵)が亡くなって35年がたち、それを機に所縁の演目を一門の噺家が演じるという趣向の会。
一門と言ってもこの日の出演者でいえば直弟子は八光亭春輔と桂藤兵衛(彦六死後に先代文蔵門下に移籍)の二人で、一朝と文蔵は孫弟子。一之輔にいたっては曾孫弟子で彦六に会ったこともない。林家木久扇の物真似でしか知らないそうだ。
亭号がバラバラなのもこの一門の特長で、これは8代目が正蔵を襲名した際の複雑な事情に起因する。

前座の一花『やかん』
女流の前座としてはしっかりとした語りで、機転も利きそうだし楽しみな存在になりそうだ。

一之輔『啞の釣り』
何でも思いっきり出来ちゃう一之輔、持ちネタの豊富さも若手でトップだろう。
身障者を戯画化する様な内容だが、ここまであけっぴろげに演じられると却って清々しささえ覚えてしまう。

文蔵『天災』
八五郎が大家に離縁状を書いてと頼みに来るところから、「・・・天災だろ?」「なに、先妻の間違いだ」のサゲまでのフルバージョン。
強面の八五郎は文蔵とダブり、紅羅坊名丸の心学によって変心してゆく過程が描かれていた。
ただ冒頭部分は別のネタ『二十四孝』と重なるので、ここは5代目小さん流に八五郎が心学の先生を訪れる所から始めた方が良いのでは。

藤兵衛『首提灯』
マクラで『試し斬り』『胴斬り』を演じたあと、本題へ。
見所は、田舎侍に対する江戸っ子の啖呵(やり過ぎではあるが)と、首を斬られた男の首が次第に胴とずれてゆく動き。
藤兵衛は長い顔の利点を活かし、特に首が前にガクンと落ちる動きが見事。

春輔『松田加賀』
初見、ネタも初めて。
粗筋は。
江戸時代、盲人は大きく4階級に分かれ最高位は検校。違いは杖の頂部の形状で、もし街頭でぶつかり合った場合は互いに杖をさぐり、相手の身分を知ることができた。
本郷の雑踏で検校と小僧按摩がぶつかり、杖で相手が検校だと知った小僧按摩があまりに恐れ多くて言葉もでずぺこぺこと頭を下げるばかり。検校にはそれが見えないから、怒って杖でめった打ち。
周囲に野次馬が取り囲むが、何もできない。
そこへ通り合わせたのが、神道者で松田加賀という男。
自分が一つ口を聞いてやろうと丁重な言葉で仲裁に入る。
検校もこれで機嫌を直し、あなたのお名前を伺いたいという。
「これは失礼いたしました。私はこの本郷に住んでいる、松田加賀と申します」と返事をしたが、興奮が冷めない検校は本郷のマツダをマエダと聞き違えて、これはすぐ近くに上屋敷がある、加賀百万石の殿様と勘違い。杖を放り捨ててその場に平伏。
加賀も、もう引っ込みがつかないから殿様に成りきって検校を諭す。
検校がいつまでも這いつくばっているので、松田はお祓い向かうのでこの場を離れる。
そうとは知らない検校は、いつまでも平伏を続けている。
周囲の野次馬連中が喜んで一斉にわっと笑うと、検校は膝をたたき
「さすがは百万石のお大名だ、たいしたお供揃え」
でサゲ。
これだけの噺だが、春輔の声も語りの口調も彦六に似た唄い調子。実に良いのだ。
こうしたあまり演じ手のいない彦六のネタを継承していることに敬意を表す。
そして1席終えた後の「深川」の踊り、これがまた見事。さすが、藤間流の名取りだけのことがある。

一朝『中村仲蔵』
このネタ、色々な人が高座にかけるが、やはり8代目正蔵が最高だと思う。
一朝の高座はマクラで歌舞伎のエピソード(六代目中村歌右衛門のが特に面白かったが、勿体ないので教えてあげない)を披露し、ネタへ。
ほぼ正蔵の演出に沿ったものだが、一朝独特の柔らかい語りが、より世話物風の色を濃くしていた。
この会の締めに相応しい一朝の高座、結構でした。

こういう会に出会うと得をした気分になる。
来られなかった方は残念でした。

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コメント

文蔵に合う噺は以前から『天災』だと思っておりました。
彦六の正蔵と先代柳朝とは、個性の異なる師弟ですが、その無頼で粋で、という継承者こそ文蔵と言われるようにと期待しています。

福様
彦六もあれでなかなか鉄火で、正蔵襲名にはその筋が動いたという証言もあります。
その部分を継承しているのが当代の文蔵というわけですか。

このところ残念続き。

佐平次様
特に仲入り後の春輔、一朝の高座は良かったです。春輔も言ってましたが正蔵は踊りも達者で、そうした芸を含めて継承されているのが嬉しいですね。

春輔、ですか。
まだ知らない噺家さんがたくさんいるなぁ。
ぜひ、そのうち聴いてみたいものです。

小言幸兵衛様
春輔、私も初めてでしたが、客席から「待ってました」の声もかかりファンの方もおられるようです。彦六が小僧に奉公に出ていた頃のエピソードをマクラに振り、ネタも踊りも結構でした。
彦六の数少ない直弟子として、これからも活躍し続けて欲しいです。

正雀師の名前が無いのが残念無念。
ブッキングできなかったのでしょうか?いの一番に声のかかる存在だと思いますが。

落語通様
会の趣旨からいって人選については私も同様の疑問を持っています。主催者の判断なのか、ご本人の都合なのか、どちらでしょうか。

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