トランプに期待する?
1月24日付朝日新聞に、永年にわたり政権批判を続けてきた映画監督オリバー・ストーンがインタビューで「トランプ大統領もあながち悪くない」と意外な評価をしていた。
その趣旨は次のとおり。
・米国が「米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変える」という政策から脱し、「米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させる」政策への転換が出来るなら素晴らしいこと。
・これまで米国は自国経済に対処せず、貧困層を増やし、自国経済を機能させてこなかった。トランプがかつてないほどの雇用を増やすというのは誇張かも知れないが、そこから良い部分を見つけねばならない。
・トランプはイラク戦争は膨大な資産の無駄だったと明快に断言している。こうしたプラスの変化は応援したい。
・ロシアがトランプを応援するためにサイバー攻撃をかけていたというCIAの見解については懐疑的だ。CIAはベトナム戦争やイラク戦争などで間違った情報を流し、他国の主権を認めたがらず、多くの国家を転覆させてきた。そんな情報機関をけなしているトランプに賛成する。
・ハリウッドのリベラルな人たちがトランプを批判している点について、彼らは真のリベラルではない。米国がテロとの戦いを宣告した2001年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなり、そうした映画がどんどん減っている。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビシリーズが目立ち、非常に腹立たしい。
ただこのインタビューでは、自国第一主義を各国が掲げることにより、経済衝突の激化による軍事的緊張関係が増大する可能性については言及されていない。
さらに、トランプ流が世界に蔓延した場合に起きる人権無視、人種差別、排外主義の横行の危険性にも触れていない。
こうした点にオリバーストーンがどう答えるのかは不明だ。
もう一つ、このインタビューで注目すべき発言がある。それは日本にかかわることだ。
オリバーストーン監督は、米政府による個人情報の大量監視を暴露したCIA元職員エドワード・スノーデン氏を描いた新作映画「スノーデン」を撮るにあたり、彼とは9回会って話を聞いている。その中で日本に関して次の様に述べていた。
・スノーデンが2009年に横田基地内で勤務していた頃、日本国民を監視したがった米国が、日本側に協力を断られたものの監視を実行した。
・スノーデンは又、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ。
ここからは私の見解になるが、現在の日米関係を考えるうえで、在日米軍が今なお日本を監視し、悪意のあるソフトをインフラに仕込むことまでやっているというスノーデンの証言は非常に重要だ。
米軍は日本に多くの基地を置き、それは日本を守るためと思われているが、決してそれだけではない。
太平洋戦争で日本は米国に一方的に敗れたというのが定説になっている様だが、実際には米国も大きな打撃を受けていた。
大戦中に米軍で司令官が戦死したのも、最高位(中将)の軍人が戦死したのも、沖縄戦だけだ。沖縄戦では兵士の3分の1が精神に異常をきたし本国へ送還されたとある。終戦前の武器も装備もない沖縄戦でも米軍はこれだけの犠牲を出していた。
もちろん、沖縄県民の被害は想像を絶するものだったことは言うまでもない。
今でも米国はアジア最強の国は日本だと見ている。だから日本を敵に回すような事は絶対に避けたいのだ。
米軍の日本駐留の目的は、こう考えるべきだろう。
1.日本が二度と米国に敵対することがないよう監視する。
2.中国を封じ込め、東アジア及び東南アジアの共産化を防ぐための橋頭堡にする。
3.太平洋の制海権の確保。
4.安保条約に基づく日本の防衛。
もし、トランプが以上の諸点に興味を失い、日本を単なるビジネスパートナーとするなら、米軍の日本駐留は意味がなくなる。
日本の防衛は日本自身でとか、守って貰いたかったら費用は全額負担せよというトランプの主張は、決して的外れとは言えまい。
戦後70年、日本はいま大きな岐路に立たされている。
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私もオリバー・ストーンと同じような積極評価をしてもいますが、それは何ごとも悪いことばかりじゃない、いいことだって少しはあるさ、みたいな、絶望したくはないゆえの負け惜しみみたいなものです。
エルサレムへの大使館移転や環境問題の無視など、いささかテロリストの気持ちになります。
投稿: 佐平次 | 2017/01/29 10:04
佐平次様
オリバーストーンのインタビューで気になったには、トランプの人権無視や人種差別への言及がなかったことです。
露の新治じゃないですが、人間生まれる国を選ぶことはできませんから、そこを差別されてもどうにもなりません。
投稿: ほめ・く | 2017/01/29 16:45