「子どもの貧困問題」の解決こそ喫緊の課題だ
年賀状に近況が書かれていると読むのが楽しくなる。今年頂いた年賀状では、かつての会社の上司が「子どもの貧困問題」に取り組んでいるとのこと。私より5歳年上なのにと、わが身を振り返り恥ずかしくなった。
いま取り組まねばならない課題が多々あるが、なかでも「子どもの貧困問題」の解決は最優先課題といって良い。
この件に関して駒崎弘樹氏(認定NPOフローレンス代表理事/全国小規模保育協議会理事長 )が「2017年にはぶっ壊したい、こどもの貧困を生みだす日本の5つの仕組みとは」という記事で書いている。
極めて実践的な内容と思われるので、内容の一部を紹介したい。
1、生活保護家庭の子どもは大学に行っちゃダメ
「生活保護家庭の子どもたちは、大学進学できない」というのだ。
これは大学進学が贅沢という考えからだそうだ。
しかし、駒崎氏が指摘しいるように「安定した仕事につき、貧困の連鎖から抜け出すためには、大学進学という道は非常に有効です」。
但し、抜け道があって「生活保護を受けていても、”世帯分離”と言って、進学する子どもだけ世帯から外してしまうことで、その子は大学に進学することはできます」。しかし「世帯分離した分だけ、生活保護費は数万円減ります」ということになるのだ。
今の時代、大学に進学することは贅沢でもなんでもないのであって、貧困の再生産とう負のサイクルを止めるためにも、直ちに見直しが必要だ。
2、妊娠したら高校退学させられる
「全国の高校では、妊娠した場合、退学させるというルールになっている」というのだ。例えば「岩手県教育委員会の制定する『岩手県立高等学校の管理運営に関する規則』の中には懲戒規定があり、性的暴行(レイプ)と並んで妊娠を退学処分としている」という
レイプと妊娠を同列におくというのもムチャな話だが、妊娠を「させた方」には何もお咎めがなく、「させられた方」だけが処分の対象になっている。
駒崎氏はこう続けている。
「ほぼ99%、妊娠させた方の男はバックれます。女の子はシングルマザーとして、働きながら子どもを育てていきますが、高校中退で安定した仕事につける確率は相当低くなります。 当然貧困化するリスクが上がり、子どもに教育投資できず、子どももまた貧困化していく可能性が高まります。
学校が貧困を生み出しているじゃないか!」
3、低所得のひとり親に出される給付金支給が4ヶ月に1回
「低所得のひとり親には、児童扶養手当という給付金が支給されます。 月最大で4万2000円、子ども2人目は1万円というわずかなものですが、これがひとり親家庭のライフラインになっています。
さて、この児童扶養手当、役所から振り込まれるのが、4ヶ月に1回なんです」。
役所は4ヶ月計画的に使えば良いと言うが、カツカツの生活をしていると3ヶ月の終わり頃にはお金がなくなり、消費者金融や闇金から借金し、最後は生活が破綻するケースが出てくる。
「そうやってにっちもさっちも行かずに、県営団地を立ち退きさせられるその日に、中1の娘を運動会のハチマキで母親が首を絞めて殺した事件が銚子市でありました」。
駒崎氏はこう呼びかける。「厚労省さん、年金が2ヶ月に1回、生活保護は毎月支給なんだから、児童扶養手当も毎月支給にしてください」。
4、義務教育でも金がかかりすぎ
私事であるが、孫娘が昨年中学に進学した。公立中学だが、制服代だけでセットで数万円、他にも諸々の教材費がかかる。部活でバスケット部に入ったが、このユニフォームやらシューズやらひと揃えで10万円近くかかったそうだ。娘は「これだけの費用、他のご家庭ではどうしてるのかしら?」と言っていた。
義務教育は無償の筈だが、実際にはかなりの金がかかる。
金額は一定なので、当然、貧困家庭への負担は大きい。
駒崎氏は言う。
「何ですか、この”学校指定”って。何で学校指定の文房具屋で買わないとダメなんですか?これって、地元の文房具屋への、制服だったら洋品店への公共事業ですよね?その公共事業を、なんで子育て世帯の財布から出さないといけないんですかね?」
制服代だって高すぎだ。イギリスでは500円程度の学校もあるそうで、官民あげて義務教育にかかる費用を抑える工夫が必要だ。
5、医療的ケア児は普通に学校に行けない
この件では駒崎氏は次のように記している。
「鼻からチューブを入れたり、気管切開をしている『医療的ケア児』。こうした障害のある子達が特別支援学校に行こうとすると、『親が同伴で付いてきてくれたら、通学できますよ』と言われます。
親は学校で教育を受けさせたいと思うので、仕方なく一緒に通学します。そして教室の端っこで、6時間座って待っています。待機児童ならぬ待機親です。
当然仕事は辞めざるを得ません。だいたいの場合、母親が辞めます。共働き家庭は、片働きになり、収入は激減します。医療的ケア児家庭は、公共交通機関での移動がしづらいため、車を持たなくてはなりません。そうした費用も家計を圧迫します。
ひとり親だったら、生活保護しか道はありません。医療的ケア児の介護に心身ともに負担がかかるのに、我々の社会は更に経済的にも追い打ちをかけているのです」。
駒崎氏によればこの問題は、学校に訪問看護師が行けるようにして、親の代わりに医療的ケアをしてあげればある程度解決する、と言うのだ。
だが、訪問看護は健康保険法で「居宅(家)だけ」に限られている。それなら法律を変えれば良いわけだ。
以上の諸課題は、いずれも僅かな制度改正で実現できることであり、子どもの貧困と貧困の再生産の克服に効果を発揮するものと思われる。
「子どもの貧困問題」の解決には他にも重要な課題があると思うが、とにかく早急に対策を講じることが大切だ。
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