「僕の東京日記」(2017/3/7)
劇団東演第149回公演『僕の東京日記』
日時:2017年3月7日(火)13時30分
会場:本多劇場
作/永井愛
演出/黒岩亮
< キャスト >
原田満男(大学生)/木野雄大
原田淑子(満男の母)/岸並万里子
小淵敏子(春風荘管理人)/腰越夏水
相良静雄(クリーニング屋店員)/能登剛
青木光江(新劇女優)/古田美奈子
ピータン(共同体ピースゲリラのメンバー)/奥山浩
ゲソ(共同体ピースゲリラのメンバー)/大川綾香
ユッケ(共同体ピースゲリラのメンバー)/三枝玲奈(青年座)
ポッキー(共同体ピースゲリラのメンバー)/中花子
井出哲朗(反戦おでん屋)/清川翔三
上村のり子(井出の恋人)/絈野二紗子
新見良弘(公認会計士を目指す男)/星野真広
土橋郁代(スーパーマーケット定員)/世奈(青年座)
福島睦美(井出の仲間)/東さわ子
須藤則夫(井出の仲間)/原野寛之
鶴岡昭(満男の友人)/小泉隆弘
菊地陽子(満男の友人)/三森伸子
【ストーリー】
1971年の東京は高円寺にある2階建て木造アパートで、賄いつき。
大学生の原田満男は阿佐ヶ谷に実家があるのに、自立したい一心でこの四畳半一間のアパートに下宿し始めた。
満男は学生運動に参加したものの中途半端で投げ出して、自分を見つめ直す中で父母の保護下にいる「お坊ちゃん」生活を脱したかったのだ。新聞配達や皿洗いのアルバイトで自活することを決心する。
一方、満男の母は心配でたまらず、下宿先に来てアパートの住人たちに挨拶をして回る。怒った満男は母親を追い返す。
アパートの住人には猫好きのスーパーの店員や、公認会計士を目指し試験勉強中のサラリーマン。この二人はしょっちゅうもめ事を繰り返す。その女店員に密かに思いを寄せるやくざ風のクリーニング屋店員は、サラリーマンの男と衝突する。この争いに満男も巻き込まれる。
ラブ&ピースのコミューンを目指すヒッピーたちもいて、いずれ宮古島で共同生活を送ることを計画しており、満男にも参加を促す。
もう一組、新左翼の活動家の男女がアパートの近くで「反戦おでん屋」の屋台を出している。井出哲朗と、その同棲相手の上村のり子だ。二人はセクトの活動方針に疑問を感じていて、そうした食い違いからのり子は満男と親しくなってゆく。
そこへセクトの仲間が訪ねてきて、爆弾を所定の場所に届けるよう指示を受ける。任務を遂げればセクトを抜けるのを認めるというのだ。
哲朗は任務の重さや活動への疑問などから急性の胃腸炎を起こす。代りにのり子が持って行くというのを満男が止め、彼自身が届ける羽目になるが、ここは母親が機転を利かし難を逃れる。
自立をを目標にしてきた満男だが、重要な場面では母親の助けを借りねばならなかった。
結局、満男はアパートを引き払い実家に戻る。
芝居の終盤が暗示する登場人物たちの将来だが、満男は会社員になりやがて管理職になってゆく。新左翼の二人はセクトを抜け、政治活動から身を引く。ヒッピーのリーダー格だった男は本職の公務員に戻り、サラリーマンだった男は企業の公認会計士に、女優を目指していた女性はスナックのママに、それぞれが成っていくのだろう。
バリケードとゲバ棒の時代は終わり、セクトもノンポリもヒッピーも各人社会の一員となってゆく。
そんな時代を懐かしく思い出せる舞台は、多数のドアが交互にバタンバタンと開いては閉じ、登場人物たちが入れ替わりながら進行してゆく手法(名称を忘れてしまった)を使ったスラップスティック風な作劇だ。
見ていて面白い。
だが、作者はこの脚本を通して観客に何を訴えたかったのか、最後まで分からなかった。
人物の描き方はさすがだと思ったが、永井愛の作品としては不満の残るものだった。
出演者では下宿の管理人を演じた腰越夏水の演技が光る。
他に猫好きの女性を演じた世奈の怪演が印象に残った。
公演は12日まで。
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土曜日のチケットを取りました。
投稿: 佐平次 | 2017/03/08 10:40
佐平次様
それはそれは。貴兄の劇評を楽しみにしています。
投稿: ほめ・く | 2017/03/08 10:58