「納骨堂」が「幽霊ビル」に?
いま都心部で雨後のタケノコのごとく「納骨堂ビル」や「ビル型墓地」とよばれる建物がたてられているのをご存知だろうか。
その数は2000年には287棟だったのが2004年には387棟と急増しており、その大半は都心に建てられた。
理由は、次のようだ。
1.都内の墓地が高価格で、都立霊園で200万円、それも抽選では数倍の競争率だ。民間だと300万円以上する。とても庶民が簡単に手を出せる金額ではない。
2.少子高齢化により、墓の守り手がいなくなる。
そこで、10万円程度から高くとも150万円で永代供養してくれる納骨堂に人気が集まっている。
近い、安い、お手軽、を謳い文句に急成長しているのだ。
しかし、大きな問題がある。
多くの納骨堂では年間使用料が1基あたり数千円から1万円程度で、なかには最初の購入費のみで永代使用料がゼロというケースもある。
これでは建物やエレベーターなど機器のメンテナンス費用は到底まかなえないのだ。
ビルが老朽化し劣化が激しくなっても改修の費用はままならず、まして建て替え(ビルなので一定期間が過ぎれば建て替えが必要になる)など、不可能といってよい。
納骨堂を運営する宗教法人は永代供養を約束していても、将来にわたって誰が保証してくれるのだろうか。
月刊誌「選択」2017年3月号によれば、納骨堂ビルは宗教施設というより商業施設としての色合いが濃いようだ。
典型的な例として、デベロッパーやコンサル会社が寺と組んで、寺有地やワケアリの土地に納骨堂ビルを建て、十数億円単位で売りさばく。およそ3分の1が寺の取り分で、後はデベロッパーとコンサルの懐に入る。もちろん、建設を手掛けたゼネコンも利益があがる。
つまり全員がハッピーなのだ。
大金が転がり込んできた寺の住職は高級車を乗り回すなど贅沢三昧。しかし、寺には老朽化するビルと激減する収入という未来が待ち受けていて、まさに地獄に向かうわけだ。
そんな状況を見て、遂に東京都が動き出した。赤坂浄苑に対して固定資産税の納入を求めたのだ。寺側は宗教施設として非課税を主張し裁判になったが、東京地裁は「宗教団体として主たる目的のために使用しているとは認められない」として寺側の請求を棄却した。
当然の判決だ。
これからのビル型墓地の建設には、課税というリスクが加わることになる。
それもこれも、仏陀の教えに反して目先の金に目がくらみ拝金主義に陥った寺の住職らの罪である。
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私の住む荒川区町屋の町内で今まさに2棟目の巨大納骨堂が竣工間近です。町内に平然と2棟目を建てている光明寺は、苦情をどこ吹く風と10年以上散々住民を苦しめた危険な葬儀会館でした。今回も前回同様住民からの要望は全て何一つ検討すらされていないであろう建物となりました。
一棟目の納骨堂ビルは有名女優を起用してのTV宣伝のかいあって、あっさりと完売してしいました。8年前のその件が、各地域の一等地である場所での事業型霊園のビジネスモデルとなっていると思います。金額は十数億ではなく、数十億です、笑いが止まらないでしょう。課税されるのが遅すぎました。建てる側もいずれ条例が厳しくなることは分かっていて、10年が勝負と見ています。住民として責任を感じています。納骨堂ビルを建てている寺は殆どはそもそも宗教をビジネスとしか考えていませんし、そんな寺を安くて、楽で、近いからと安易に選ぶ消費者にも問題があると思います。
投稿: 有名納骨堂近隣 | 2017/07/06 22:28
有名納骨堂近隣様
事態の深刻さは文面からも拝察できます。さぞお困りでしょうが、現状では規制する法律がありません。東京都が始めた課税というのも一つの手ですが、彼らとすればその分を消費者に転嫁してくるでしょう。
根本的には葬儀や納骨に対する消費者の意識が変わる事しか方策が無いと思います。
投稿: ほめ・く | 2017/07/07 02:30