「春風亭正太郎・入船亭小辰二人会」(2017/4/19)
新・春に船「春風亭正太郎・入船亭小辰二人会」
日時:2017年4月19日(水)18:45
会場:内幸町ホール
< 番組 >
春風亭正太郎・入船亭小辰『挨拶』
前座・春風亭きいち『桃太郎』
入船亭小辰『代脈』
春風亭正太郎『百川』
~仲入り~
春風亭正太郎『厩火事』
入船亭小辰『井戸の茶碗』
冒頭の挨拶で、この会は昨年5回開き一応終了の予定だったが、今年も継続となったとのこと。中身は変わり、ゲスはト無し。その影響か、後方に空席が目立つ。
現在の二ツ目で一番上手いのは誰か、アタシの知る限りでは春風亭正太郎。それも頭一つ抜けている。
改変や余計なクスグリを入れずに、古典をそのまま演じて面白く聴かせる技術は大したもので、十分に真打クラスの実力を備えている。
入船亭小辰、語りは師匠に似ているが、高座での姿は大師匠・扇橋(柳家さん八)の若い頃を思わせる。
そんな事いうと、年がバレるかな。
きいち『桃太郎』
一之輔がこのネタを演るとこんな感じかなと思って聴いていたら、やはり弟子だった。未だ落語家のしゃべりになっていないが、不思議な可笑しさがある。このネタで久々に笑ってしまった。
有望。
小辰『代脈』
主人公の銀南の描き方として、与太郎風な愚か者として描くやり方と、関心が専ら色欲と食欲に向いた若者として描くやり方があるが、小辰は後者。
ただただお茶菓子の羊羹に異常な関心が向けられ、お嬢さんの診察では下腹部に触れることだけを楽しみしている。
でも良玄先生だって、さして必要があるとは思えない下腹部に触っていたのだから同類かも。
小辰はテンポの良い語りで面白く聴かせていた。
オリジナルでは往診に駕籠で行き、途中で銀南と駕籠かきとの珍妙なヤリトリがあるのだが、最近の高座ではカットすることが多い。小辰もそうだった。
正太郎『百川』
百兵衛の造形が秀逸で、この点に尽きると言っても良い出来だった。ただ純朴だけではない、強かさも感じさせる。クワイの飲み込み方は、今まで見た中でベスト。
各登場人物それぞれの演じ分けも十分で、貫禄さえ感じる高座だった。
正太郎『厩火事』
マクラでフランス映画の『髪結いの亭主』を話題にしていたが、このネタの髪結いのお崎と亭主との間も映画同様、濃密な愛で結ばれていたのではなかろうか。
仲人から別れなさいと言われた時の、お崎の反応の官能的なこと!
彼女は亭主が可愛くて仕方ないし、亭主の方もお崎とは離れられない。
その愛を確かめ合って、目出度し目出度しというストーリーだと思う。
正太郎の高座は、刻々変わるお崎の表情変化が巧み。この人、案外女性修業をつんでいるのかもと思わせる一席。
小辰『井戸の茶碗』
落語には珍しいほどの、登場人物が全員真っ直ぐな人ばかりだ。
いかにも小辰らしい真っ直ぐな高座だが、清兵衛のアクションを少し大きくしてアクセントを付けていた。
小辰さん、「子午線」を知らなくても恥じることはありませんよ。言葉は知ってるが、意味を説明出来る人は少ない筈ですから。
二人とも正に「上り坂の芸」、これからも注目したい。
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正太郎、要注意なんですね。
投稿: 佐平次 | 2017/04/21 09:36
佐平次様
はい、二ツ目の中ではイチオシです。
投稿: ほめ・く | 2017/04/21 11:36
前座 春風亭正太郎 堀之内
粗忽がテーマだが、そこがオチきらない。恐らく師匠から言われてるんだろうが、淡々としすぎ。若いんだから多少ははみ出さないと。
平成21年1月の感想です。
しかし、ご説の通り、そこがよいんでしょうね。
投稿: 福 | 2017/04/22 08:50
福様
正太郎は語り、間、そして人物の掘り下げという基本が出来ていると思います。
まだまだ伸びるでしょう。
投稿: ほめ・く | 2017/04/22 19:00