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2017/04/25

立川志の輔独演会(2017/4/24)

「立川志の輔独演会」
日時:2017年4月24日(月)18時30分
会場:銀座ブロッサム中央会館
<  番組  >
立川志の輔『やかん』
立川志の輔『高瀬舟』
~仲入り~
ダメジャン小出『ジャグリング』
立川志の輔『宿屋の富』

久々の志の輔だ。
この日は前方を使わず、開口一番から本人が出て、色物を挟んで3席演じた。
独演会と称しながら2席で終える噺家が多い中で、こういうサービス精神は是非見習って貰いたい。

志の輔『やかん』
サラだったので、前座噺を選んだのだろう。
マクラで今年は1月、2月、森友、4月だったと。今年の流行語大賞は「忖度」で決まりだろう。最近の閣僚らの失言をとりあげ、あれは思っていたことをポロリと言ってしまったもので、失言とは言えないと。その通りだ。
「キリンの首って、どうしてあんなに長いんです?」
「そりゃ、お前、頭があんなに高い所にあるから、首は長くなるだろう」
そんな問答を繰り返しながら、「水わかし」から「やかん」になった訳を。
1席目は軽く流す。

志の輔『高瀬舟』
ご存知森鴎外の代表作を一席にまとめたもの。ただ、落語化とうよりは原作を若干変えて粗筋を語ったという印象だ。
ストーリーは忘れていたので、改めて紹介する。
徳川時代に京都の罪人が流刑を申し渡されると、高瀬舟にのせられて大阪へ送られる。護送するのは京都町奉行の配下にいる同心で、罪人の親類のうち一人が同船させる事を許された。
同心羽田庄兵衛は豊かな商家から妻を娶ったため、経済的には苦労が絶えなかった。
ある時、弟を殺めたという喜助という罪人の護送を命じられた。他に身内がいないようで同船者はいない。
流刑の罪人というのは通常は泣いたり喚いたりと落ち込む表情を見せるのだが、この喜助という男は珍しく周囲の景色を眺めながらいかにも楽し気に見える。
庄兵衛は不思議に思って身の上話しを訊くと、喜助兄弟は早くから両親を亡くし、二人は同じ所で働き寄り添うように暮らしていた。
処が、弟が大病を患い働けなくなり、喜助一人の稼ぎで食べて行くようになる。弟はこの事でたいそう気を病んでいた。
ある日、喜助が弟のために食べ物を買って家に戻ると、弟は自刃をはかり喉に刃物を刺して状態で苦しんでいた。
医者を呼ぼうとする喜助を弟は止め、それり早く喉に刺さった刃物を抜いてくれと頼まれ、抜いてしまうとそのまま弟は死んでいった。
その姿が近所の人に見つかり、喜助は弟殺しの罪で流罪となったのだ。
喜助は、島流しになっても食べ物と寝る所は頂けるし、流人には御上から200文という金子が与えられる、生まれてから持ったことのない大金で、自分は今とても幸せだと言う。
庄兵衛は我が身を振り返り、喜助の心情に思いを馳せ、掟を無視して喜助の縄目を解いて、二人並んで高瀬舟は黒い水面をすべって行った。   
志の輔は語りの確かさでじっくり聴かせていた。

ダメジャン小出『ジャグリング』
初見。一つ一つの技はさほど高度とは思えないが、見せ方が上手い。

志の輔『宿屋の富』
通常の演じ方といくつか違いがあった。
・宿に泊まった男の自慢話を宿の亭主があまりに信用してしまい、男がせめて「自宅の門から家まで宿場を三つ通る」の所で止めてくれなかったと嘆く。
・男の出身地が鳥取ではなく越前。
・富籤を売りつける際に、100枚売るのに1枚だけ売れ残った。この1枚をかぶると99枚の儲け分が飛んでしまうのでと言って、富籤を無理やり買わせる。
・富籤に当たったら半額を宿の亭主にという約束を、亭主の方から申し出て約束させる。
・富籤を売る段階で、籤の番号「子の1365番」を言わずに売る。
・一番富が当たった時に、賞金は富籤の所有者と売った人間が揃わないと受け取れないからと、男はいったん宿に戻る。
志の輔の高座はいくつか細部の変更はあったが、大筋やサゲはオリジナル通り。
見せ場の、師匠譲りの2番富が当たると信じた男の妄想や、一番富が当たった時のリアクションを中心に熱演。
彩の異なる3席で、志の輔ファンは満足したと思う。

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コメント

鷗外の作品で落語化できそうなのは『寒山拾得』だと思っていました。
あの独特の乾いた世界。
『高瀬舟』だと、客席は静まり返っていたのではないでしょうか。
小朝が菊池寛を紹介しているように、志の輔にはさらなる拡大を期待します。

福様
鴎外の作品では、映画や芝居になった物は多いですが、落語となると過去に無かったと思います。
志の輔は、恐らく滑稽噺の間に挟むネタとして演じたのでしょう。確かに会場は静まり返っておりました。

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