安倍の「保守」は紛い物だ
私は、自分自身は「保守」だと思っている。少なくとも保守的な人間だと思っているのだが、ある記事を読んでその思いを深くした。
月刊誌「選択」2017年4月号の巻頭で、元行革担当相の村上誠一郎自民党衆議院議員へのインタビューが掲載されていて、掲題の見出しはその記事に倣ったものだ。
その中からいくつかを抜粋して紹介したい。
―第二次世界大戦を知らない世代が、やれ教育勅語だ、靖国参拝だのといっても、そこには本当の愛国心はない。稲田朋美防衛相が、「祖国のために命を捧げる」と勇ましいことを言うのも、戦争体験のある世代には、実に乱暴な物言いであり、命を軽々に論じているようにしか聞こえない。学徒出陣で肉親を失った人はどう思うだろうか。
―保守の本質は、国民の暮らしと安全を守り、良き伝統、手法を引き継いで常に正義を目指す。それは時代によって変わる。
今の日本にとって、戦後確立した立憲主義、民主主義を守ることも、真の保守政治というものだ。
―明治の思想家、新渡戸稲造は、武士道の研究において、日本人の価値観の中で「義」や「仁」の大切さを説いた。それは国民に誠実に向き合い、慈愛の精神を持つことで、日本人が最も大切にしている価値観だ。
―安倍外交は、米国のトランプ大統領と食事とゴルフを共にしたが、アジアで味方を増やしていない。私も中国の言動を是認するわけではないが、戦争の傷跡は加害者よりも、殴られ、痛い目にあった方が残るものだ。慈愛の心なくして周辺と仲良くできない。
―英国では、メイ首相がトランプ大統領の訪英を求めたのに、約200万人が反対の署名をした。相手が超大国でも、自国の価値観を大事にする。これこそが、立派な保守の国ではないだろうか。
―今の自民党は自由闊達な政党と言えない。政治家には「ノブレス・オブリージェ(高貴な者の義務)」の精神が不可欠で、正義を貫くこと、勇気を持つことが求められる。今の党内には、上に迎合し、選挙やポストで得しようとする風潮が強い。
―民主主義派デリケートなものだ。国民は常に、守り育てなければならない。米国のマッカーシズムのようなポピュリズムに走る危険性は、常にある。
註「マッカーシズム」
1950年代にアメリカ合衆国で発生した反共産主義に基づく社会運動、政治的運動。通称「赤狩り」。共産主義という烙印を押された人たちが迫害を受けた。
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わたしはどちらかというとリベラルだと思いますが、この記事の趣旨には異議ありません。
投稿: 佐平次 | 2017/04/04 09:22
佐平次さんは、折り紙付きのリベラルでしょう。
私の場合は、リベラルを自称するに忸怩たる思いがあります。
投稿: ほめ・く | 2017/04/04 09:55