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2017/04/07

「共謀罪」は「狂暴罪」

・過激運動者が不穏な行動に出る傾向はますます増加
・取り締まり法規が不十分
・決して曖昧な解釈を許さぬ
・無辜の民にまで及ぼすというごときことのないように十分研究考慮いたしました
・決して思想にまで立ち入って圧迫するとか研究に干渉するということではない

以上は法案審議で政府はこう答弁していた。どんな法案かというと、「治安維持法」だ。言葉は古くさいが、内容はいま審議している「共謀罪」の安倍首相の答弁とウリ二つではないか。
治安維持法は、当初は共産主義を対象にしたものだったが、その後どんどん対象が拡大され、やがて宗教団体や、右翼活動、自由主義等、政府批判はすべて弾圧・粛清の対象となっていった。
その結果、194人が取調べ中の拷問・私刑によって死亡し、更に1503人が獄中で病死したとされている。
こうした法律が怖いのは、いったん成立すると独り歩きし始め、政権の意向や情勢の変化によりいくらでも恣意的に変えられることだ。
為政者は常に「小さく産んで大きく育て」ようとするから、油断ならない。

組織犯罪を計画段階で処罰可能とする「共謀罪」の成立要件を絞った「テロ等準備罪」(以下、ここでは「共謀罪」と表記する)を新設する組織犯罪処罰法改正案が4月6日午後、衆院本会議で審議入りした。
先ず、「テロ(テロリスト、テロリズム)」という言葉の定義がアイマイなのだ。第二次大戦中、ナチス占領下で行われた抵抗運動を私たちはレジスタンスと呼んでいるが、ナチスは彼らをテロリストとしていた。
先日、NHKの特集でシリア・アレッポでの病院への爆撃の様子を放映していたが、シリア政府からすれば反政府勢力の地域にある病院もテロリストだから、攻撃は当然という理屈になる。
しかし、サリンなど化学兵器まで使って市民を殺傷しているシリア政府の方こそテロリストを呼ぶべきだ。
テロという言葉は、どちら側から見るかによって180度変わるものなのだし、時の政権の意向や社会情勢によっていかようにも変えられるものなのだ。

今回政府が提出した法案は、適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪団」と規定。277種類の罪の実行を「2人以上で計画」し、グループの誰かが「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」という「準備行為」を行った場合に、処罰されるという内容だ。

政府は、処罰対象は「組織的犯罪集団」に限ると説明し、その集団は、テロ組織、暴力団、薬物密売組織と例示している。
しかし、国会での質疑で金田勝年法相は「それ以外のものも含まれる場合がある」とした上、なにが「共謀」にあたるか判断するのは捜査機関と述べた。
安倍首相も組織的犯罪集団の「法定上の定義はない」と答えている。
これでは対象が、警察など捜査機関の判断にゆだねれられ事になる。そして、捜査機関が政治的に公正中立でないことはご存知の通りだ。
また金田法相は質疑の中で、共謀罪をめぐる捜査で、電話やメールなどの盗聴を可能にした「通信傍受法」を使うことを将来的に検討すると答えている。
結局、共謀罪の成立は国民を萎縮させ、国民の人権やプライバシーが侵される監視社会への道を開くものだと言える。

安倍首相は盛んにこの法案がオリンピックをテロから守るためという口実を設けているが、過去の事例からすればオリンピックとテロとは直接関係ない。
第一、オリンピックの開催がそれほど国民の命を危険にさらすものだとしたら、なぜ五輪招致の段階でその説明をしなかったのか。
テロ対策という点でいうなら、日本はすでにテロ防止のための13の国際条約を締結し、57の重大犯罪については未遂より前の段階で処罰できる国内法がある。
政府が度々持ち出す国際条約も、麻薬取引やマネーロンダリングなどの国際犯罪を防ぐためのものであり、「テロ対策」が目的ではない。

どのように形を変えようと、名称を変更しようとしても、「内心の自由」を侵すという共謀罪の本質は変わらない。

戦前の「治安維持法」では、日本国内で死刑判決を受けた人は一人もいない(朝鮮では45人に死刑が執行された)。なかには量刑では軽微な者もいた。それでも取り調べ中や獄中で1700人もの人が死亡していたことを忘れてはならない。
時代や法律の中身こそ違え、「共謀罪」は私たちにとっては正に「狂暴罪」である。

【追記】
上の記事をアップしてから、米国トランプ政権がシリア政府軍の基地にミサイル攻撃を行ったとの報道に接した。シリアとロシアは、米国の攻撃を侵略行為として激しく非難している。
いかなる理由があろうとも、国連の決議なしに一方的に他国を攻撃する行為は許されない。
米国の行為はシリアの内戦状態をさらに悪化させるだろうし、米国の攻撃は明らかな誤りだ。


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コメント

アメリカによるテロですね。
事後の共謀日本。

投稿: 佐平次 | 2017/04/09 08:50

佐平次様
アフガン、イラク、そして今回のシリアへの一方的な先制攻撃は、いずれも国際テロです。政権がいう「国際条約」とやらで、共謀の有無を捜査せねばなりませんね。

投稿: ほめ・く | 2017/04/09 09:31

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